PPP的関心2023#19【ふるさと納税。税と行政サービスの関係にもっと関心を】
「ふるさと納税、大都市で明暗」という記事が目に入ったので、今回はふるさと納税について書いてみます。
ちなみに。個人的には、自分が「いま住んでいる」横浜市へのふるさと納税はしたことがありますがそれ以外にはしたことはありません。それは寄付対象として示された政策(取り組み)に賛同したことが大きいですが、加えて自分が受け取る行政サービスの原資である税が市外に流出することでサービス提供の継続性や品質に疑問が生じるのでは?という懸念を持っているからです。
目についた記事でも同様の懸念が表面化している様子が伺えます。
目についた記事。「東京23区、ふるさと納税拡充 大幅税収減耐えきれず」
ふるさと納税の意義(総務省ふるさと納税ポータルサイトから)
しくみや意義、理念を読むと「なるほど」という考え方、気持ちにもになりますし、自分に所縁のある自治体や政策・施策を応援したいという自治体を自分で選んで選んだ先に寄付を行うのは「自分で決める」感が高まることにもつながりそうだなと思います。
しかし現実に起こっている納税(寄付)では、寄付先との所縁の有無は関係なさそうです。自治体側からの寄附金を集める目的や使途の明記にの発信にばらつきがありそうで地域がアピールする(具体な)取り組みを応援したいという志(寄付)を集めるという趣旨が反映されていない場合や、寄付者の側から見ても節税効果狙いや返礼品という名目のショッピング機会といったほどの捉え方もあるのではないでしょうか。
冒頭の記事はそのような一面を表しているのではないかと思います。
記事には、「東京都はふるさと納税について「高所得者の事実上の節税対策になっている」「受益と負担の関係をゆがめる制度だ」などと抜本的な見直しを求めてきた。」「各区の見解も都と同様だ。当初はふるさと納税に積極的に参加する区はなかった。近年になって変化が起きているのは、税収流出が見過ごせない規模にまで膨らんだからだ。」といった記述があります。
もちろん、記事の記述は税が「流出してゆく側」の見方でもあり実際に新たな税を得ることで停滞していた施策を推進ができたり地元産品の新たな販売ルートの確立を通じて地元産業が活性化したりという利益を得た「受け取る側」の自治体もあるとは思いますから、「再分配」機能としての制度の要・不要については意見がまとまりにくいと思います。
ただし、創設目的を実現するのに十分な設計となっているかについては不明な点もありそうだ…といったところだと思います。
大都市で明暗。反対しながらも制度に乗らざるを得ないという現実
また別の記事によると、「2022年度のふるさと納税は、苦戦の続く大都市で明暗が分かれる内容となりそうだ。「日経グローカル」が実施した全国815市区予算調査で寄付受け入れ額の見込みを聞いたところ、全体では前年度比で21%増えた。京都市は47%増の92億円と過去最高となり、ふるさと納税による流出額を初めて上回った。一方で川崎市など流出が拡大した自治体も目立ち、制度への不満が高まっている。」という話もあるようです。
税と行政サービスの関係を考えるきっかけ
この記事を読んで、自分自身も含めて税と行政サービスの関係を改めて考えてみよう、大袈裟ですがそんな契機にすべきではないかと考えました。
そもそも税とは何か。
つまり、自身が住み暮らす地域で必要な公的サービスを享受するための共助的な費用分担ということで、だとすれば「自分の暮らしに必要なサービス」の供給に必要な原資を域外に流出させるような制度は、本来的な税の役割を果たしていない気もします。
先ほど紹介したふるさと納税の理念、意義の3つ目、「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。」をその通りに解すれば、自治体は税収を増やすこと自体を目的とせず、何を目指すのかを明確にしその実現のために必要な手当としての志ある寄付(税)を求めるのだと示さなければ「選んでもらうに相応しい」地域にはなれないと思います。さらに広げて考えれば、都市圏の自治体も現在の市民が地域外に寄付をしてしまうような状況を作っているという立場に立って地域経営を考えるきっかけでもあるような気がします。
…もちろん自治体さんしっかりして!というだけではなく、納税(寄付)者も物品が欲しいだけで「貢献したいという志は二の次」…というなら、ふるさと納税の寄付制度ではなく普通にECサイトなどを利用して物品を買い求めそれを通じて各地の経済成長に貢献すれば良いのでは?という指摘は言うまでもないことです。
流出する側、享受する側、双方ともにとっても「考える」きっかけだと思いました。