PPP的関心2023#34【リサイクル率日本一、サーキュラーヴィレッジ・大崎町を訪問】
酷暑が続いた8月の終わり、熊本でいただいた仕事の機会に合わせて、サーキュラーヴィレッジ・鹿児島県大崎町を訪問するツアーにもお誘いいただきました。今回は大崎町で見聞したことのメモです。
きっかけは焼却炉を持たない町のごみ処理問題
人や建物が集積して暮らしが起これば、少なから動脈としてのエネルギーや食糧の取り込み(自給も含め)をどうするか、静脈として廃棄物の排出をどうするかという都市的問題が生じるわけですが、今回視察した取組は大崎町で25年前に顕在化した都市の静脈問題がきっかけでした。
ごみの減量におけるPPP
逼迫した都市の静脈問題に対する大崎町の対応について、今回の視察で伺ったお話しから自分の関心分野に準えると、ある意味で公民連携的な解決策とも言えると思いました。
ごみ処理という公的サービスの継続を検討するにあたって、ゴミ出し方法を変えずに税金を投入して焼却炉新設で処理方法を変えるか、市民や企業との新たな協働でゴミ出し方法を変えて同じ処理方法(埋立)の効率を向上させるか、という選択から取り組み方を変えることを選んだといえます。
こうした決定をするには、地域の将来人口の行方や想定可能な税収見込みや公共サービス実施負担の関係などを踏まえた、小規模自治体にとっての最適を考えた上での決定だったと思います。
一方で、「市民や企業との新たな協働でゴミ出し方法を変えて」という対処の実現は決して簡単ではなかったとも聞きました。450回以上に及ぶ住民対話を経て理解と共感を醸成しながら取り組みが始まったそうです。これも公民連携的な取り組みを象徴するものだと思いました。
取り組みの効果と付加価値
25年間にわたる取組の成果は、大きく見て「ごみの総量の大幅削減」と「圧倒的なリサイクル率*による利益」の実現でした。
ごみの総量では「平成10年と比較し、平成29年度には約84パーセントの埋め立てごみを削減(引用)」という「大幅に」といってよい水準で実現され、「数年で満杯になると言われていた埋立処分場は、今後も約40年間、継続して使うことができる(引用)」状態になっています。
リサイクル率についても、環境省による一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和3年度) によれば全国の水準で20%程度(R3年=19.9%)のところ、大崎町では「83.1%を再資源化、12年連続を含む14回目の資源リサイクル率日本一を達成(引用)」しています。
資源ごみリサイクルでは大崎町で出るごみの60%以上を占める生ごみや草木などの有機物を堆肥化、完熟堆肥「おかえり環ちゃん」として販売する取組や再生可能な資源として業者に売却することで年間数百万円(これまでの実績平均では725万円)の売却益金も得ています。
結果として、町のごみ処理事業経費も低減しているそうで、一人当たりのごみ処理事業の全国平均が16,400円(2021年3月30日環境省発表)のところ、大崎町は9,364円とおよそ2/3の額で済んでいる(環境省策定一般廃棄物会計基準に基づき大崎町が算出した2021年3月31日時点の数値)そうです。
OSAKINIプロジェクトによる他地域への展開
見聞させてもらった大崎町の取り組みは、次の展開に移りつつあります。「OSAKINI プロジェクト」です。
プロジェクトは大崎町地域再生計画に基づき、寄付(企業版ふるさと納税)を活動原資として成り立っています。この取り組みはサーキュラーヴィレッジ・大崎町の実現と大崎町で構築された循環型の仕組を他地域へ展開する事業に活用されるそうです。
参考)サーキュラービレッジの「サーキュラー」
諸外国のごみ処理に比べ日本では焼却処理が多く採用されているそうです。その結果の一つの影響として、ごみとは無縁ではいられない暮らしを送っていながら「処分」の方法にまで関心を持ちにくくなっている気がします。
今回は偶然の機会ではありましたが、ごみ処理から遡って都市的な静脈問題を改めて考える機会を得たことは良い機会でした。
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