PPP的関心2023#27【まちづくり分野のPFS導入支援の記事を読んで】
最近のPPP的関心は視察に行った現地のことや読んだ本のことを書くことが多くなっていましたが、久しぶりにニュース記事で目にした話題をもとにして書きます。今回、注目した記事は「まちづくり分野でのPFSの導入支援」という記事です。
写真は、SIBの取り組み事例の視察(2018)でいったシドニーの風景
まちづくり分野でのPFS、国交省が導入支援
記事には「国土交通省は、まちづくり分野における成果連動型民間委託契約方式(PFS)やソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の導入を検討する自治体の公募を2023年6月20日に始めた。選ばれた自治体は2023年度に、専門的な知見や経験を持つ専門家から助言などを受ける」とあります。
委託契約の対象を「まちづくり分野」としている(詳細を読んでみると結構「幅広な」対象となる)点、そして「成果連動型」の民間活用の取り組みを拡大させようとすること自体はとても良いと思う。
個人的にも、まちづくりと成果連動は以前から関心を持っているテーマでもあり(以前(2021年11月)のPPP的関心)、目についた記事です。
今回の「支援」事業で気になる点
良い取り組みだと言っておきながらケチをつけるわけではないですが、記事を読んでいる中で気になったことがあります。それは「成果連動型」の行政手法・取り組みを拡大させる際の「段階」についてです。
今回の記事によれば最終的に1つの自治体が採択され、その自治体に専門家(非公開ということでどのような分野・専門性の方か分かりません)とされる方々が成果や成果につながる指標の策定などの支援を行うとあります。
踏んでゆく「段階」としては、従来型の中央官庁によるベンチマーク事例の創出・抽出を行い、(おそらく)その事例をもとに「ヨコテンカイ」するといったステップが想定されているようです。
こうした段階を踏んでゆく手法に対して、個人的には「まずはやってみる」ことを促すほうが良いのではないか、出来るだけ多くの地域・多くの課題を対象とする取り組みを経た上で「経験」を積み重ねるような手法を優先させる方が良いのではないかと考えます。
そ右考えるのは、自分が過去に海外で取材してきたSIB事例などで対象にしていた施策や目指すアウトカム(成果)は、投資規模や対象範囲、対象者数等において比較的大規模でなくかつ複雑でない事柄が多い印象を持っていて、変な言い方ですが「(リターンが期待よりも小さくなる等)失敗が許容されうる」ような事柄から取り組むのが良さそう…という理解があるからです。
加えて、近い未来に「ヨコテンカイ」したいのであれば、それこそ「多くのチャレンジ」から発掘するような進め方でも良かったのではないかと思いました。
成果連動型の課題
先ほどのPPP的関心のさらに前(2021年9月)には、以下のようなことも書いています。
参考までに。
2018年、SIBについて先進事例として豪州の地域政府に、東洋大学PPPスクールのメンバーと一緒に取材訪問しました時に伺った事例は
ネグレクトにより未就学児童が発生する地区(対象は確か数百名規模だったと思います)で、未就学児童を減らすという案件でした。原因分析から指標設計の段階で、未就学につながる子育て放棄をする親はスキルアンマッチにより就業機会がないことが共通項として発掘され、未就学児の就学率ではなく、親への職業訓練の実施と就業率を成果指標にして取り組んだというものでした。地域課題の「因果」の理解を徹底することで、結果指標ではなくプロセス指標を立てたということです。
「小さいけど将来に有益」な課題を「因果を明確に捉え」て課題解決の設計ができるか
新しい取り組み、しかも地域のローカル&スモール課題にいかに対処するかを考えるのであれば、ベンチマークを一つ作りその結果を「ヨコテンカイ」させるよりも、どんな目線で何を考えどう判断するか…といった取り組み方そのものや考え方自体を広めることで、将来、ローカル&スモールでの施策実現を速やかに行う体制を作り出す学習機会とすべきだと思います。
さらに細かいことを言うと、公募要領に記されている内容を見ると、地域の将来像・ビジョンのところは「すでにある」前提となっているようにも受け取れます。ですが、個人的には各地の自治体に自ら策定・明確化する時間を持ってもらうことにこそ時間をかけるべきではないかと思うのです。
と・・・ここまで威勢よく書きましたが、何がなんでも反対というわけでもないですし、従来型の「ベンチマーク創出・抽出&ヨコテンカイ」ステップであってもまちづくり分野の成果連動型の取り組みを普及させるための先鞭をつけること自体はとても重要なことだとは思います。
どんなエントリーがあるか、どんなどんな成果連動施策が生まれるのか…
公募には注目したいところです。
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