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PPP的関心【シティプロモーションの目的はどこに?】

先週発信したPPP的関心の記事で「都市経営における「ビジョン」の共有、共感創造の必要性」について書きました。

今回も「都市経営ビジョン」に関連すると思われる記事を偶然見つけましたので、引き続き考えてみたいと思います。
*写真はエストニアのデジタル施策のプロモーションのための施設(ショールーム)e-Estoniaの外観(2018年訪問時に撮影)

全国シティプロモーション実態調査とその結果

今回、偶然目に入った記事は以下の記事です。
記事は ”「シティプロモーション」という言葉が使われ始めてから20年以上がたち、この言葉はすっかり定着した。だが多くの自治体がプロモーションに取り組み始めた結果、横並びの施策が目立つようになり、その効果は出にくくなっている。" という問題提起から始まっています。

#日経COMEMO   #NIKKEI

ちなみに、記事の元となった内容については、2022年3月に調査主体からも調査結果がリリースされていました(以下リンク参照)。
「シティプロモーション自治体等連絡協議会全国シティプロモーション実態調査結果報告(2022.03,シティプロモーション自治体等連絡協議会)」

調査結果とその読み解きを含め、記事の冒頭にコメントされている「横並びの施策が目立つようになり、その効果は出にくくなっている」という指摘とともに、指摘につながる以下のような具体例が示されています。

■SNSに関しても定期的な更新を請け負う企業がある。<中略>だが「請け負った企業が斬新な企画を提案しても、役所内部の議論を通じて無難で面白みのないコンテンツに変貌することが多い」
■総合計画や総合戦略の中にシティプロモーションが明記されている自治体が62%あった。また首長が所信表明や施政方針でシティプロモーションに言及したことがある自治体は54%、過去3年間にシティプロモーションに関する議会質問や答弁などが行われた自治体は61%だ。人口減少時代にあって、交流人口増加や移住促進、企業誘致につながる可能性のあるシティプロモーションへの関心の高さを示している
■総合計画や総合戦略で定めた方針を実現するために、具体的な施策を盛り込む行政計画を策定しているところは37%にすぎない。シティプロモーション推進を標榜しているものの、体系的な施策を展開している自治体は少ないと推測できる

日本経済新聞 記事より

そもそもプロモーションって

当たり前に分解すればシティプロモーションは「シティ」+「プロモーション」であり、シティ=訴求したい地域について、プロモーション=その特性などを広く認識させることで当地への進出、移住や訪問あるいは特産品の購買などにつなげるための全般的な活動を指すと考えられます。

ちなみに「プロモーション」とは

広義の販売促進の定義にあたるマーケティングの戦略分野を包括するもので、主な内容は、広告、PR、販売員による販売、それらを補足し調整し、より効果的にする一連の活動として狭義の販売促進の諸方法を含めたすべてから成り立っている。
販売業者に働きかけるディーラー・プロモーションと、消費者に働きかけるコンシューマー・プロモーションに大別される。前者は、販売効率を高め売上の増大を目的とする。後者は、商品に関心を抱かせ必要だとする気持ちにまで高め購入を決意させることを目的としている

流通用語辞典 より)

ということであり、引用にある「広告宣伝」「PR」「人的販売」とは、それぞれ広告やCMなど認知度を上げるための行動(最近ではSNSでの発信を含む)、顧客とよい関係を築くための行動、人が関わることで効果を促進する取り組み、行動を指します。

プロモーションはマーケティング(売れる仕組みづくり)の一環。そこだけ切り出した(ような)活動の意味は?

経営学者フィリップ・コトラーによれば、マーケティングとは「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生みだし、顧客にとどけ、そこから利益を上げること」です。まずは顧客をよく知りその把握した上で、ニーズに対応した価値を提供することで製品、サービスがひとりでに売れてゆくような状態を目指す活動と言えます。

ところで、マーケティング活動では「マーケティングの4P」とされる4つの「戦略」があります。4つのPで表される戦略は「Product:商品戦略」「Price:価格戦略」「Place:流通戦略」「Promotion:販促戦略」で、実はプロモーションはマーケティング戦略のうちの一つというわけです。
この時点で「プロモーション」にだけフォーカスするかのような発信活動はその手前の商品戦略(=市民や来街者にとっての価値、魅力とは何か?の明確化)抜きでは意味がなさそうに思います。
また、4つの戦略には「一貫性」が求められるということも重要です。例えば、「希少性」を地域の特産品を高級食材として高額な値段で販売したいのに安価を売り物にする量販店を販路に選ぶような施策は意味がないということです。記事にあったように「内部の議論を通じて無難で面白みのないコンテンツに変貌する」、「シティプロモーション推進を標榜しているものの、体系的な施策を展開している自治体は少ないと推測」される状況では、訴求したい事は何なのか、誰に訴求したいのか、何をしてほしいのか…などの自治体としての意図や思惑と発信施策に一貫性を欠く可能性があるのでは?という感想を持ちます。

また、4Pは「売り手」の理屈ですが4Cといって「買い手」の目線からマーケティングを考えることもできます。それぞれ「 Customer Value:顧客価値」「Costコスト」「 Convenience:利便性」「 Communication:コミュニケーション」のことですが、シティプロモーションとしてプロモーションを有効な手段として掲げるのであれば、プロモーションと対をなすコミュニケーションも重視するべきであり、つまり「発信」=仕事完了という一方通行で終わるのではなく、情報に対する納得や共感を得るところまでを目指す活動や取り組みが重要になってくるはずです。
こう考えるとシティプロモーションを担当する部署は非常に重要な役割を負うことになるはず(べき)です。少なくとも首長を始め「シティ」としての方針やビジョンに沿った共有・共感創造活動をするのであれば上層部に直結していることが求めされるのではないでしょうか。調査報告には「62.7%の自治体が主に係相当以下でシテ ィプロモーションを実施」という報告があります。「係」という階層(役割)の位置付けは自治体によってもその重みは違うのかもしれませんが、自治体の「シティ」としてのビジョンを主体性をもって発信、受信、コミュニケーションできる組織的な実態はあるのでしょうか。

ビジョン(ありたい姿)とその実現への主体性

現在のシティプロモーションが、都市経営ビジョンを起点としたもので活動に一貫性が確保されているか?が気になったわけですが、それに加えて冒頭の調査報告を見てさらに気になったことは、そもそも調査対象の自治体に対しプロモーション活動の先にある「得たいゴール」の確認というか「そもそも何を目指して」プロモーション活動を開始したのかを確認するような質問がなかったことです。もちろん、そんなことは「あって当たり前」だからということで省かれているのかもしれませんが…。
しかし、記事にあった「人口減少時代にあって、交流人口増加や移住促進、企業誘致につながる可能性のあるシティプロモーションへの関心の高さ」というコメントからも、「とにかく、まずは発信して知ってさえもらえれば何かが起こる」的なゴールなき手段の実行がなされている可能性を感じずにはいられませんでした(もちろん、そんなことはない!と信じたいです)。

「横並びの施策が目立つようになり、その効果は出にくくなっている」のは、その背景に庁内、市民、あるいは未来の市民に対して共有・共感創造すべき「目指すもの=ありたい未来の姿」が曖昧なまま、しかも形式的な取組みになっていることがあるのではないか?もしそうであれば「都市経営ビジョン」を基点とした観点でシティプロモーションが見直される必要があるのではないか?…そんなことを考えさられた調査報告を扱った記事でした。


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