PPP的関心2023#16【廃校・廃止施設の利活用は、単体の構想ではなく地域の将来構想という視点】
先日家族と近所に出かけた際に統廃合された「交番」がカフェとしてオープンしたと教えてもらいました(廃止された段階で一旦民間に払い下げられ、その後にカフェとして開業という経緯だそうです)。私はまだ訪問したことがありませんが、どうやら注目を集めている場所のようです。
このように元々重要・必要な施設であったものがその用を終えた後に空間に新しい機能や役割を挿入して使い直すことは、循環型社会におけるストックアンドリノベーションという観点でも注目されるべき取組だと思います。
さて。最近、知人と話をしていた時に、地元であり人口370万人強の横浜市でも「学校」の統廃合と跡地利用が行政課題となっていることが話題になりました。
ということで今回は「学校」の廃校、跡地利用について書こうと思います。
*写真は以前、岩手県で廃校後利活用案の住民向け説明会の視察時。対象の学校の一つの様子。
公立学校の廃校発生状況
「令和3年度公立小中学校等における廃校施設及び余裕教室の活用状況について」という文部科学省の発信のよれば、全国の廃校数は以下のような状況となっているそうです。
また、廃校後の「跡地利用」状況は以下の表のようになっているそうです。取り壊し予定はわずか3%弱、活用されている+活用用途が決まっているを合わせると実に77%強が「活用する」という選択をしていることになります。
ちなみに、内訳をみるとほぼ小学校に見えるけど、元々中学校は小学校区数校で一学区だから、その比率に相応なペースで中学校も減っている、つまり中学校単位で縮退しているということのようです。
8割近くが「廃校」=「利活用」。勝算はあるか?
地域によってはなかなか「利活用」の計画を策定しにくいところもありそうですが、廃校=利活用が「当たり前」みたいな感じになっているようです。その背景には「公立学校施設整備費補助金」に関わる返納を避けるための廃校施設や余裕教室の有効活用ということがあるようです。
(あくまでも一般論ですが)顧客を想定し、顧客のニーズを探りニーズに応える商品・サービスを創り上げて対価を得るような「事業の構築」を進めることは自治体の方々にとってはあまり得意な領域とはいえなさそうです。
そうした中で事業計画を練り、事業を立ち上げてゆくにあたって文部科学省もいろいろ情報を集めているようです。↓
またメディアでも各地の事例が多く見られるようになってきました。
PPP視点で公共施設の再編・利活用を考える
私が客員として所属している東洋大学PPPスクールでは専攻長の根本先生によって、学校統の廃合は「単体の施設」をどうするかということだけでなくそもそも統廃合後の場所選定は「地域内において集中投資する地区、つまりどこを未来の拠点にするのかを決めること」でもある、という前提に立った研究(統廃合シミュレーション)がなされています。
学校統廃合の問題、廃校の利活用の問題は建物単体の構想を議論するものではなく、地域の未来を議論することであるという指摘を踏まえて、以前にもこのPPP的関心で学校施設の統廃合や廃校後の利活用について書いたことがあります。
記事の中で町職員のインタビュー回答を書きましたが、それを再掲すると
同じ公共施設再編や利活用構想の話題ですが、建物単体の利活用構想に焦点をあてた議論と、施設再編後に地域全体をどのような地区にするために既存建物をどう使うかという議論は別物だということです。
すでに行われている廃校利活用の是非や要不要について論じることは目的ではありませんが、どのような立ち位置に立って個別公共施設の再編や利活用を論じるかをわきまえておくことは大切なことだと思います。
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