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PPP的関心【都市経営ビジョンの必要性。秋田市のコンパクトシティ関連の記事を読んで】

今回は既にtwitterでもコメントをしました秋田市のコンパクトシティーの方針、取り組みにおける「整合性」問答について書いてみます。
*写真は2018年に訪問したストックホルム市立図書館。記事を読んで官民が並んで知恵を集積する必要を想像して使ってみました。

秋田市のコンパクトシティー

#日経COMEMO   #NIKKEI

記事によれば「経済界や民間企業と連携して取り組む中心市街地活性化基本計画」によって「中心部や人口が一定程度ある周辺地域に都市機能を集約、交通網で結ぶ「多核集約型コンパクトシティー」を掲げ」られているそうです。具体的な動きとして

■秋田駅近くに20年10月完成した秋田版CCRC(生涯活躍のまち)の拠点施設「クロッセ秋田」だ。(中略)4階までの低層階にクリニックや終活支援センターなどが入る。5階以上は全60戸の分譲マンション
■市の中心市街地活性化基本計画の核になる「あきた芸術劇場」が6月に開館予定
■マンション新設計画も相次ぐ(中略)市中心部ではこれらを含め5棟(約520戸)のマンション新設計画
日本経済新聞記事より抜粋

「整合性は取れるのか」というやりとりをするタイミングは今か?

郊外でも再開発、構想に賛否両論
郊外に商業施設が拡散し、街の顔である中心市街地の空洞化が進む。(中略)そうした中、気がかりな再開発構想が郊外の外旭川地区で進む。市と連携して街づくりを担う民間事業者が内定した。卸売市場建て替えに合わせ、周辺にサッカースタジアムや先端技術を活用し両施設と相乗効果を期待できる民間施設を整備する計画だ。
この構想は市民の間に賛否両論ある。穂積志市長は市のコンパクトシティーの方針との整合性を問われ「私はとれると思っている」と語る。街の重心が反転し、再び外に向かい始めないか懸念を拭えない。
日本経済新聞記事より抜粋

自分が特に気になったのは記事の最後にある、街中のマンションや都市的施設を中心とした再開発と郊外地区の卸売市場施設の建て替えプラス"スタジアム"の建設の「整合性」について問われた際の問答です。

都心部のスクラップアンドビルドや郊外の再開発のどちらも「誰のため何のためのものでその結果どんな未来を実現するために一定期間をかけて事を進める」のか、いわば都市経営におけるビジョンのようなものが取組みが始まる前から十分に共有、共感されていたのだろうかという疑問が問答から湧いてきます。

都市経営ビジョンの提示として秋田市の総合戦略をみる。

秋田市まち・ひと・しごと創生総合戦略 ~ストップ人口減少 元気と豊かさを次世代に~( 平成28年3月策定 令和2年3月改訂)

秋田市まち・ひと・しごと創生総合戦略より

この5つの基本目標をもとにして、さらに重点プロジェクトとして「子育ての希望をかなえられる環境づくり、雇用の質の向上や新しい仕事づくり、地域資源を活用した人をひきつけるまちづくり、誰もが安心して暮らせる健康長寿社会の形成、暮らし・産業・自然が調和したコンパクトシティの推進など」と示されています。

優先順位と対応した施策の「整合性」は共感されているか

冒頭の記事はいわゆる「ハコモノ」に関することしか取り上げられていないので、記事を読んだ人に与えられる印象は重点プロジェクトの5番目に掲げられている中心市街地活性化基本計画推進と立地適正化計画策定に取り組みが偏っている?と勘違いしそうです。
では、おそらく順位付されていると考えられる(先ほど画像を切り抜いた基本目標には「一番目に」と明記されていますし)1〜4番目の基本目標に対応した重点プロジェクトに示されている取り組み(例えば、保育料の無償化や小さな子どもの医療費給付、高齢者コインバス事業…などなど)の経過進捗と並べて比較ではどうでしょうか。

第2期 秋田市まち・ひと・しごと創生 総合戦略 〜元気と豊かさを次世代に 人口減少を乗り越えて〜(令和3年6月)

これによると第1期の振り返り(数値目標の達成程度)は以下のようです。

第2期 秋田市まち・ひと・しごと創生 総合戦略より
基本目標① 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
基本目標② 安定した雇用を創出する
基本目標③ 秋田市への新しいひとの流れをつくる
基本目標④ 高齢者が健康でいきいきと暮らせるまちづくりを進める
基本目標⑤ 持続可能な地域をつくり、安全安心なくらしを守る

そもそも数値目標(KPI)の設定の合理性は?という問題もありそうですがそれはそれとして、目に見える形で進行する「ハコモノ」整備の先行具合と取り組みによる施策の実現程度(自己評価)から受ける印象は若干ちぐはぐな印象もありそうです。

「ビジョン」とその「共感」が問われる

あらかじめ断っておきますが、以降の記述は記事を通じて題材となった秋田市の現状を特定して述べるものではありません。

「まち・ひと・しごと創生 総合戦略」の自治体計画でよく見る内容は、雛型に沿った目標設定です。そのこと自体、現状がそうであれば問題ないのかもしれませんし、もちろん策定の努力が否定されるものでもありません。
しかし、当然全国各地の自治体では人口規模・構造も都市範囲がスプロールした市域の大きさも、過去の蓄積(インフラ、施設、文化など)も違うはずです。そう考えれば「基本目標」に同じ優先順位がつくことは考えにくいと思いますし、仮に「基本目標」の優先度が同じであっても、その達成に向けた具体な施策やその施策の達成度を測る数値目標設計には個別で独自の視点が示されるのがよいのではないでしょうか。

同じで良いのか?という問いは、言い換えれば我が街の都市計画的な在り方や運営の仕組み、場の使われ方などを「誰のため、何のため」のものとするのか、その結果「どのような場所にするのか」をわかりやすい言葉で伝えて共感を生むことが必要だということです。
若干理想的な物語を語るようですが、理解と共感を生むために必要なスキルは「対話する力」だと思います。会話を通じ合意を形成する能力をもって、「話す」「聞く」の両方の力を駆使することが求められます。

本来的にはビジョンメイクは政治(首長や自治体議会議員)の役割かもしれませんが、地方自治体の実態においては行政もビジョン策定に大きく関わることは決して少なくないのではないかと思います。だからこそ、自治体職員自らも「我が街をどう使いこなしたいのか」を市民の言葉や目線、価値観に直接触れながら考え、自らの言葉にして発信するべきだと思うのです。役所内の上意下達の「枠」に従って、さながらテストの解答に答えるような目標や指標では人は動かないということだと思います。

都市経営ビジョンの策定と発信、共感の創造は役所の仕事です。民間は過程に協働はできますが、最後は政治と役所の仕事です。
一方で、民間は創造された共感をもとに民間ができること、すなわち地域にヒト・モノ・カネの循環、経済を回すことが仕事です。
お互いの役割を認識し、尊敬し合う中でいかに常なる対話ができるか、これからの都市経営、自治体経営に求められる行動の一つだと思います。

「整合性は取れるのか?」を途中で問われるようなやり方をする前に、都市経営ビジョンの策定、共有、共感創造がいかに重要かを改めて認識させられる、そんな記事でありました。


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