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PPP的関心2023#24【新・建設業地方創生研究会とR5年度版PPP/PFI推進アクションプラン】

先日、一般社団法人化して新たなスタートを切った「新・建設業 地方創生研究会」の部会(勉強会)が開催されました。
この研究会についてはPPP的関心においてこれまでも度々その活動について紹介をしてきました。

今回は、研究会主催の部会(勉強会)でご登壇いただいたゲストのお話から内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)によるPPP/PFI推進アクションプランの令和5年度改定のポイントについての解説(本年6月2日に公開されて以降、初めての民間団体向けの解説の機会だったそうです)からトピック・キーワードをメモ的に記録したいと思います。

写真は本文とはまったく関係ないですが(笑)、6月某日に散策をしてきた皇居東御苑の菖蒲田の風景です。忙中閑あり…癒されました。

PPP/PFI推進アクションプランとは

PPP的関心でも「PPP/PFI推進アクションプラン」については年度ごとの改訂を機に紹介してきました。
そもそもPPP/PFIによる施設整備や公的サービス提供は公的負担の抑制だけでなく良好なサービスの実現や新たなビジネス機会の創出につながる取り組みを加速させるために、事業分野や対象事業(分野)、その規模を決定、開示することで施策の加速を誘発するための指針(計画)です。

令和5年度改訂におけるキーワード

第19回民間資金等活用事業推進会議(令和5年6月2日)において、令和4年度からの10年間で30兆円の事業規模目標の達成に向け、PPP/PFIの質と量の両面からの充実を図るため、PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)」が決定されました。
ポイントは以下のとおりです。
1.事業件数10年ターゲットの設定
・重点分野において10年間で取組む合計575件の事業件数ターゲットを設定
・「ウォーターPPP」等多様な官民連携方式の導入
2.新分野の開拓
・ハイブリットダムにおける水力発電、空き家等の既存ストックを活用する「スモールコンセッション」、自衛隊施設等、PPP/PFIの活用領域を拡大
3.PPP/PFI手法の進化・多様化
・地域経済社会に多くのメリットをもたらす「ローカルPFI」の推進
・施設・分野を横断した地域全体の経営視点を持った新たな官民連携手法の推進

内閣府HPより

ウォーターPPP

すでに一部の「水関係」で採用されているコンセッション方式ですが、 コンセッション方式(運営権設定や民間企業による利用料金の収受など)までは踏み切らない(あるいは必要としない)ものの、コンセッション方式に移行してゆくまでの官民連携方式として長期契約に基づいて一体的な施設・設備管理と更新のマネジメントを民間事業者に委ねるケースをウォーターPPPと示されています。

「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)の概要」 より

スモールコンセッションをはじめとする「新分野」

「新分野」には、これまで対象として上がってこなかった分野や対象施設に関して具体な例示がされています。

「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)の概要」 より

自衛隊の駐屯地や基地の施設集約化といった内容が対象として示されているのには驚きました。また道路や港湾、河川敷地、漁港などがPPP/PFI事業の検討対象施設となっていること、あるいは(受け取りたくない自治体も多いでしょうから爆発的に増えることはないと思いますが…)自治体が保有する空き家などの利活用に関する(料金徴収を可能にする)事業化を想定した「スモールコンセッション」という言葉が示されています。

「スモールコンセッション」については、偶然、前回のPPP的関心の記事でも扱ったばかりでしたが改めて注目のキーワードになりそうです。

ローカルPFI

「ローカルPFI」については以下のように示されています。

PFIを通じた地域経済社会の活性化に向けては、地域における多様な主体の参画と連携が効果的。
◆幅広い地方公共団体での普及に向けて、地域経済社会に多くのメリットをもたらす「ローカルPFI」の推進を図る。
<ローカルPFIの主な特長>
①地域企業の参画・取引拡大・雇用機会創出
②地域産材の活用(資材、食材等)
③地域人材の育成

「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)の概要」 より

つまり地域資源(企業や人材の経験や知見、ネットワーク、そのほか資源)を優先的に活用してゆくことで地域経済や地域社会に恩恵をもらたすことを指し示しています。

このような考え方・方針は、(かなり手前味噌ですが…)まさに新・建設業 地方創生研究会の「地域の課題解決や地域の持続可能性を高めるための取組みを率先して担う企画提案型企業への進化」を目指す会員企業にとって追い風といえる環境変化だと考えます。
大手企業主導によるローカル各地でのPPP/PFI事業の推進を全く否定するものではないですが、「地域のことは地域で解決できる」状態を作り上げることこそ地方創生の基盤だと思います。

私見。ローカルPFIを推し進める発想の転換

繰り返しますが、「地域のことは地域で解決できる」状態を作り上げることで地方創生の基盤を強化するきっかけ」を示した今回の令和5年度改定ですが、各地の行政がスモールコンセッション、ローカルPFIに関わる施策を進めてゆけるか?について個人的に注視しておきたいことがあります。

コーゼーションからエフェクチュエーションという視点

今回の改訂では令和4年以降の10年間という事業期間に、事業目標や事業件数というターゲット(目標)が先に示され、そこに向けて進めてゆこう!という、いわば従来的な目標誘導型の方針発表となっています。
これについてマス・マクロな発想と誘導が無意味とか的外れだということを言うつもりは毛頭ありませんが、ローカルPFIとかスモールコンセッションを考える際に「エフェクチュエーション」というキーワードがあることを念頭に置くべきではないかと思っています。

大企業を中心に取り入れられてきたのは「年間売上20億円」「事業拡大」など、はじめに目標を設定し、それを達成するために最適な手段を後から検討していく方法であった。このような目標設定型の逆算的アプローチは「コーゼーション(Causation)」と呼ばれ、将来をできるだけ予測して目標達成のための手段を考え、行動を進めていくのだ。
しかし、コーゼーションはある程度将来が予測できる場合においては有効であるが、不確実で将来の予測がまったくできないVUCA時代では、通用しないと言われている。そうしたなかで、不確実な状況下でも新たなビジネスを創造していく起業家の共通思考が注目され、コーゼーションとは対極の考え方の、手持ちの手段から新しいゴールを発見していく問題解決型アプローチであるエフェクチュエーションが求められるようになった

<エフェクチュエーションのための3つの資源>
1. 自分が誰であるのか?(who they are?)特質、能力、属性
2. 何を知っているのか?(who they know?)教育、専門性、経験
3. 誰を知っているのか?(whom they know?)」社会的ネットワーク

サイト「Market TRUNK」 から引用

ローカルエリア、スモールエリアで新分野への挑戦を進める際に、これからの不確実性の高い社会においてこのエフェクチュエーションが求められるという意識を持つことが必要になるのではないだろうか?ということです。
そもそも、地域には人材資源や高い専門性や経験値が多くはないと言われている中で、地域課題の解消に向けて地域資源を活用して事業推進をするには地域社会のプレイヤー(官民問わず)がそれぞれ持てる資源(能力・経験・繋がり)を活かした連携による取り組みが求められるわけです。
この点にこそ「今後の地域社会の課題解決に向け地域で興す事業は公民連携発想で」という考え方の必然や本質があると私は思っています。


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