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PPP的関心2023#08【志を集めたスポーツ・子育て環境整備。熊本フットボールセンターの記事を読んで】

気持ちが沈んでしまう出来事があって今週はあまり筆が進まなかったのですが、知人がプロジェクト全体のプロデュースに携わったと聞いていた熊本フットボールセンターの記事を見かけて、なんだか元気をもらいました。
ということで、「(個人的にw)元気が出る」プロジェクトを紹介したいと思います。
写真は本文とは全く関係がないけど、熊本の話なので以前に熊本駅の駅舎を撮影した写真を使ってみました。

「民設民営」で開業した熊本フットボールセンター

以下のリンクが2022年11月にオープンした熊本フットボールセンターのHPです。なかなか(というかかなり)素敵なグランドや周辺施設です。

僕が細々と紹介するよりも、熊本フットボールセンターはどんな場所なのかはホームページ冒頭にあるコピーが本当に素敵でこの場所をよく表していると思います(個人的には太字にしたあたりが本当に素敵だと思います)。

熊本県サッカーの強化・育成・普及の拠点としてはもちろん、スポーツや外遊びによる新たな日常と文化を生み出すために生まれました。人とまちの可能性を育てる場。 そんな願いを込めました。
COSMOSは新しい複合型の公園。広場でのんびり散歩したり、家族とフリスビーで遊んだり、カフェで友だちとくつろいだり、ランドリーで洗濯したり。保育園もあります。この場所を使いこなす人たちのための活動交流拠点となるワークスペースもあります。
そして、コスモスは嘉島町の花であり、誇るべきアイデンティティ。誇れる場として多くの人とともに育てていきます。

フットボールセンター整備の背景や経緯

フットボールセンター整備の背景や経緯はリンクの記事が参考になります。

2022年11月、熊本県上益城郡嘉島町に熊本県フットボールセンター「COSMOS」がオープンした。サッカーフィールド2面に加え、カフェやランドリー、保育所を併設したユニークな施設だ。嘉島町の運動公園という位置付けで、熊本県サッカー協会(KFA)が整備し、その子会社・熊本フットボールセンター(KFC)と運営する。銀行融資・補助金・自己資金に加え、「応援ファンド」で出資を募り完成させたことも注目される。サッカー利用だけで年間延べ10万人の来場を見込み、競技振興に留まらない「スポーツを通じたまちづくり」を目指す。

記事より引用

敷地を自治体が用意し、施設整備を民間が行うPPP

上記の記事中には詳細に書かれていませんでしたが、以下の事業スキーム図は熊本県サッカー協会が行った「情報交換会」で発信されたもの(第一回)を引用しています。情報交換会の第1回テーマは「官民連携のスキームと社会的投資ファンド等資金調達」だったそうです。

スキーム図からも分かるように施設の整備は、用地を嘉島町が準備(元々は農地だった場所を嘉島町が取得し都市公園整備事業として土地の造成、擁壁の整備を町の負担で実施)し、フィールドや建物の設計、施工は民間団体である熊本県サッカー協会が資金調達して実施(記事参照)、さらに同協会がフィールドと芝生広場及び駐車場・駐輪場とHouse-W(トイレと倉庫に充てられる建物)を完成させたのち、それらの施設を嘉島町に無償で譲渡した。
このように嘉島町にとって初めての官民連携事業による都市公園整備が進みました。
ちなみに当該の農地が対象地として選定されたのは、隣接の嘉島町総合運動公園にあるサッカー場の需要超過状況を解消すること、さらにサッカー施設を充実させ嘉島町へのサッカー競技人口の集客増を狙っての取り組みだったそうです。この辺りは後でも触れる民間事業者のパッションに関わるところかなと思います。

民間主導のPPP「事業」

資金調達と資金回収。調達

嘉島町の用地取得と整備工事は公共事業ですが、施設整備は民間団体による民間事業です。資金調達も熊本県サッカー協会が自ら行っています。協会の自己資金と各種補助金や助成金(*詳細は記事で。日本サッカー協会(JFA)の補助金、国際サッカー連盟(FIFA)の支援金、保育園整備の助成金、そのほか寄附金)に加え銀行融資(*参照。地元金融機関のリリースでは「熊本県フットボールセンター(仮称)」整備事業(PPP事業) に対する融資組成について というリリースも出ています)で調達したそうです。
本来であればこの座組みで調達も完了させることができそうですが、今回のプロジェクトでは(筆者が想像するに「あえて」)クラウドファンディングによる「志(こころざし)資金」を資金構成に加えることで、自分の場所、自分たちの場所であるという意識を醸成させる仕掛けています。
「事業(行政用語の事業ではなく)」を行う上で、昨今のマーケティングでは「共感」を呼ぶ事業であるか?は重要な要素と言われています。もちろん不必要な資金を無理に調達する必要はないと思いますが、共感を呼ぶ仕掛けを挿入したことで事業を加速させた好例ではないかと思います。

資金調達と資金回収。回収

公園施設が完成したのち、協会が運営をするために立ち上げた別法人「熊本フットボールセンター」が指定管理者制度により管理運営を担うことになりました。指定管理期間5年、指定管理料0円での受託と記事にありましたが、指定管理料ゼロでよいということは言い換えれば「民間事業」で自組織体制を賄いさらに返済原資を稼ぐという意思表示とも言えます。
元々総合運動公園があった隣地とはいえ近隣に目立った集客施設や商業集積がある場所ではない(元々は農地ですし)わけで、つまりは自分たちの才覚ひとつでひとを集めてそこで稼ぐという決意です。もちろん資金を提供した金融機関が精査した上でのGOサインだったと思いますから綿密な事業計画が立てられていたとは思いますが、これはすごいことだと思います。

熊本フットボールセンターが収益を得る自主事業を行う場(装置)は、フィールド利用に関わる利用料に加え、町に譲渡した施設と一緒に「公園施設設置管理許可」を受けた建物として整備したHouse-N(受付やカフェ、ランドリー、オフィススペースなど)での商業運営、都市公園内占用許可を受けた「こすもす保育園」の運営があります。House-Nの利活用についてはさらにコワーキングスペース化するなど用途が広がる予定だそうです。これらの場で獲得する収益が運営と返済の原資となるそうです。

ちなみに。記事の中で目に留まったのは、嘉島町や民間団体がこのPPP事業をPark-PFI(公募設置管理許可制度)で考えていたが結果的に設置管理許可制度に落ち着いたという件(くだり)です。*詳しくは記事の1Pめの下部
なんだか杓子定規な感じもするが、(以下、想像。事業を受託できる能力を有する競合が実質的にいないから公募に馴染まないことを逆手に取り、設置管理許可の期間が短くても競合がいないのであれば「再選」も得やすいから同じだと考えたかどうかはわかりませんが…)当初の計画がPark-PFIだからPark-PFIじゃなきゃダメ!といったこだわりのせいでスタックさせないことに今回のプロジェクトの当事者の柔軟性を感じたエピソードでもあります。

PPP事業の推進にはビジョンとパッションとスキル

以前のPPP的関心にも書きましたが、PPP事業の推進にはビジョンとパッションとスキルが揃うこと(何も一人が全て持ち合わせるということではなくそういうものを持ち寄った集団が形成されるということも含めて)が重要だと思います。
その意味で熊本フットボールセンタープロジェクトにおいてはより上位概念としてサッカー協会(JFA、KFA)の「サッカーを通じて人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献」するという理念(ビジョン)を明確な立ち位置にし、「熊本から強いサッカーチーム(人材)を」という目標を掲げ、それを「地域と共に」「震災復興のシンボル」として進める地域のパッションが加わり、さらに共感を呼ぶ資金調達や自治体・地元金融機関との連携協定など当事者がそれぞれ持つ得意なスキルを重ね合わせやすくした体制が組み上げられたことの結実だと思いました。

熊本フットボールセンター。ぜひ機会を作って視察に行きたい場所です。


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