PPP的関心2024【視察メモ@廿日市市・広島、山陽小野田・山口③「注目のLABV方式」先行事業例】
東洋大学PPPスクールの先生、メンバーと一緒に行った「視察メモ@廿日市市・広島、山陽小野田・山口」のその①、その②(以下のリンク)
に続く第三弾。2日目に訪問した山陽小野田市のLABVプロジェクトについての記録メモです。
山陽小野田市LABVプロジェクトとは
LABV方式については過去(H26のレポート)の内閣府のHPにも「英国における定義」などについて示されています。そこには「一般的に公共が不動産、民間が資金を出資して、議決権 50:50(*矢部注:事業体形式によって議決権と出資比率は同じは限らないケースもある) の官民共同事業体を設立し、共同で開発事業を実施するスキーム」と報告されています。
つまり、自治体が現物を供出(出資)し民間が資金と経営遂行力を提供することで持てる力を合わせながら、地域課題を解決するための事業を組成する仕組みとして捉えることができます。
LAVB方式を見る視点を「ずらす」
複数の公有地の「連鎖的」活用と地域への波及効果(活性化)
当日の視察で私なりの視点で捉えた「難しさ」は、小見出しにも書いた連鎖を生み出す「価値創造」力と周辺地域への波及効果の「設計」です。
連鎖を生み出す「価値創造」とは、図に示したように超・狭域内で真に地域市民や来街者の欲しいものを見出しサービス提供する「マーケティング」であると置き換えられます。山陽小野田市の場合、第一プロジェクトの大半が実質的にサービス購入型PPPとして行政機関(もしくはそれに類する組織)のサービス購入(家賃支払など)で投資回収原資が設計されているわけですが、第二プロジェクト以降ではサービス提供の利用対価を回収原資と見立てて計画を立案実行する必要があり難しさが増すようです。
どのような地域課題を見出し、その提供をどんな体制で実現するか、まさにマーケティング力が問われるフェーズに入ります。
また連鎖的プロジェクトが有機的に目論んだ効果を発揮することで周辺地域の「活性化」を実現する、という方針も発信されています。
この地域への波及効果とは何を指すのか(例えば過去の状況・環境と比べて何を取り戻したいのか、維持したいのか、変えたいのか、あるいはどのような新たな状況・環境を生み出したいのか)、そしてそれらはどのような因果を以て街の変化として顕れるのか、変化の結果をどのような指標で計測し、どんな価値基準で良しとするのかを明確にすることが大事だと思います。
まだ第一プロジェクトが仕掛り中という状況でそのような価値議論、効果の定義議論は「これから」ということだと理解できましたが、価値議論、効果の定義議論をどう考え、言葉にして、それをどう発信するか。まさに地域の将来シーンのデザインそのものでもあり、これこそが官民の区別なく地域に関わる当事者が連携をして考えるべきポイントだと思います。
LABV方式は事業主体組成の方法論とだけ捉えず、連鎖的・持続可能な地域経営の主体である
今回の視察はLAVB方式を見る視点を見直す機会になりました。
具体的にはLABV方式は単に事業組成の仕組みとしてだけ捉えるのではなく、「アンノウン」な事象への適応、あるいはマーケティング発想で地域の変化とニーズを反映した持続可能な経営を可能にする組織を作る仕組みであると捉えることができる、という気づきです。
リスクという言葉が「予知可能な不都合な事柄が生じる確率」を指すと考えると、それらは事前の契約で対処することが可能(もちろん完璧ではない)だが、アンノウンなことには準備のしようもない。
しかしアンノウンなこと(コロナパンデミックなどのような事例)は実際に起こるわけで、むしろそのようなことが生じた時に誰が何をどのようにするのか、「どうやって」臨機応変に行うのか…を明確にする意味で事業当事者の役割分担や権限範囲(意思決定範囲)を明確にすることはできる。
従来の行政サービスの硬直性(ルールを変えてからでないと変えられない、一度始めると撤退の検討がしにくいなど)を脱して、必要な行政サービスや地域課題の解決策としてのサービスを必要な時期に必要なだけ、しかも機をとらえて臨機応変に提供することを可能にする体制作りである、という見方もできるのではないかと感じました。
今回の連携協定の一環で単に現物出資で云々という視点に加えこの先の地域経営の運営体制としてアンノウンな事象への対処をいかに行うか、などの点でLABV方式は「運営期間に入ったのちの持続性とサービスの効果の高さ」を発揮する運営主体として研究対象にすべきだと思いました。