PPP的関心【「住民が担い手」となる交通体系という記事から「公的サービス」提供の役割分担を考える】
今更ですが、PPP的関心の「PPP」って。
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)の定義
もしかすると、PPPと聞くと「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(いわゆるPFI法)」で規定される施設整備における民間資金・活力の導入を規定するPFIやコンセッション、改正・地方自治法により公共施設を運営ノウハウを持つ民間事業者に施設の運営・管理をしてもらう指定管理制度を想起することから、PPPというのは建設・不動産業や再開発に携わる事業者には関係あるけど、日常の身近な事柄にはあまり関係がないと思われている人も多いかもしれません。
PPPの意味は、PFIや指定管理のように法律で定義されていないこともあって分かりにくいのですが、官、民、市民が役割分担をして事業を実施する手法を示す包括的な概念を指します。東洋大学PPP研究センターでは以下のように定義をしています (東洋大学大学院 経済学研究科 公民連携専攻 概要)。
つまり、建設・不動産業や再開発に携わる事業者といった一部の人々だけに関係あることではなく、公的なサービス提供に広く関わる考え方なのです。
ニュースから。
需給の構造変化に柔軟な対応をした結果、「住民が担い手」となる交通体系を導入
富山県朝日町では10月、住民の自家用車を使うサービスが本格運行に入る。石川県珠洲市は2022年3月から、運転手が営業用免許を持たなくていい無料バスを走らせる。両自治体とも人口に占める65歳以上の比率が高く、担い手不足と需要の減少に直面している。柔軟な運営で持続性を高める。
公共交通の利用者も減り(需要の縮小)、運転手に担い手不足(供給体制の崩壊)が顕在化する地域において、それでも地域の暮らしを支える公共交通をいかに持続するかを考えたときに、サービスサプライヤーは行政や行政が従来のルールに従って許認可を与えたものという発想から、まさに「柔軟」に役割分担や費用分担を組み替え、入れ替えてサービスを持続させるという発想による取り組みです。
記事では、サービス提供の持続可能性を高める規模にもなっておらず、まだまだ難しい運営が強いられるという記述もありますが、(担税力の高い市民の減少や扶助費の増大などによる)地方自治体の自主財源の厳しい見通しを考えると、行政が自らサプライヤーとなって市民向けにサービスを提供することが難しくなる地域が増えてくるはずです。そう考えると、この記事の取組のように「必要だと思うものは、先んじて自らの手で創っていく」という考え方、行動の必要性、重要性は高まっていくはずです。
「公共サービス」から「公的サービス」へ
行動は地域の暮らしに必要だと思うサービスは、行政にサービス提供を期待する(≒公共サービスの拡充だけを一方的に期待する)のではなく、多様な主体が連携して、或いは時には自ら、地域の暮らしに必要だと思うサービス(≒公的サービス)を自らの手で創っていく流れは不可逆的な流れだと思います。その際、冒頭で示したPPPの定義に準えると、公的サービスの提供においては、誰がやるともっとも効果的でかつ効率的か、を考える視点が求められるべきです。
住民サービスの提供体制を公共サービス依存から官民連携を含めた自発的な提供体制に転換する上で大事なポイントは、目的の明確化と成果指標の設計とモニタリングです。冒頭の東洋大学PPP研究センターの定義でも示したように、PPP(的な)取り組みを進める上で大事なことは、「目的」を持つことと明確化されること、社会的費用対効果が継続される(=成果指標が設計されモニタリングされる)ことです。特に目的が不明確、あるいは共有・共感されないままに物事が進んでしまうと、実施(=手段)自体が目的化し、結果的に成果が出ていないのに継続とか、成果は出ているけれど費用効率は悪化した、等の本末転倒な事態も生じかねません。
PPP(的取り組み)の広がりが見込まれる今、
主体・目的・成果の明確化と共感醸成はますます重要
PPP/PFIの取り組みを推進するため、毎年改定されるPPP/PFI推進アクションプランの最新版、「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)概要」では、ますますPPP的な取り組みの「対象自治体の広がり」「目的・成果指標設計の重要性」が読み取れます。特に大きなものは、これまで人口20万人以上の地方公共団体に求められていたPPP/PFI導入施策の優先検討規定策定が、10万人以上20万人未満の地方公共団体に対しても2023(令和5)年度までに優先的検討規程策定を促すこと、公的不動産における官民連携の推進が明記されたこと、「指標連動方式を促進」という表現でSIB、PFSの導入分野が示されていることあたりは注目です。
PPP(的取り組み)の広がりが見込まれる状況で、民間・行政・官民の連携の如何を問わず、地域の暮らしに必要なサービスの提供に際して、民間・行政双方の柔軟さと主体性がますます求められることになるはずです。