制作について2 思いを形にうつすまで
前回に続き、10月に発表した空き家おくりびとを例に、私の創作の流れを紹介します。今回で2回目で「思いを形にうつすまで」です(このペースで何回になるのかなあ??)
空き家で、下記2つをテーマにするぞ!までは決まりました。
1)小さなことをないがしろにしない
空き家所有者のにはなんらかの心の負い目があり、空き家問題について言及される時、そういう細かい部分はないがしろにされがち(相続とか不動産とか大きな問題にフォーカスされる)。なので、作品ではそこを扱いたい
2)お人形を旅させたい
1)の問題は、2を行うこと+今後言及する「森川器店」で昇華できそうと感じました。
ないがしろにされがちなものを扱うぞ のイメージ画。こぼれ落ちたものを見つめる、下のおチビ達みたいな存在になりたいと思った。
で、どうやって旅させよう、どんな形にしようか考えるのが次の段階です。
夏に強い海の街・逗子の観光と連動してSUP(スタンドアップパドル)やタクシー、バスにのせてあげるというものを当初考えていました。ちょいモビっていうのは確か色々なところに駐められるレンタサイクル。
でも、2020といえば切っても切り離せないのが新型ウイルス。
私もやっとの思いでつかんだいくつかの展示が流れてしまいました。
そんな中、ZAFはやれるかどうかわからない。
でもやれそうな場合はやるぞのスタンスで話が進んでいました。
やるにしても観光と連動というのは難しそう、というのはすぐにわかりました。
展示もなくなって、オンライン作品発表なんてよくわからないし、収入どうなるのかな。
ZAFはお金にはならないけど、やるのかなあ。
なにもかもがどうなっちゃうんだろう。
モチベーションが下がったり、不安になることもありましたが、
空き家にある大量の器を黙々と洗い続けていると、不思議と心が楽になりました。
私にとって、森川邸での洗浄・片付け・掃除を重ねることは現実逃避だったのかもしれません。
特になにか作品を生み出さないでお皿を洗浄し続ける、手を動かし続けるという行為に没頭していくうちに、
「できないことをあーだこーだいうのはどうなのか」
「なにか手を動かして形にできないかな」
「交通機関に載せなきゃだめなのかな」
「私がみんなを旅させればいいんじゃないかな」と、徐々に思考が変化していきました。
この作品まで限らず、ここらへんまでくると自分の中で2つの人物が現れ、脳内会議がはじまります。
いい加減なYABESOY(やあべそい)という人と、
現実的で冷めた磯部綾(いそべあや)という人。
磯部綾という人はお金のこととか、締め切りとか、身体を保つために夕何食べなさいとかそういうのが担当です。別に本名を隠したいわけでもないのですが物事を切り分けて考えるのに人格を分けることが私にとっては欠かせなくて。ちなみに磯部っていうのは旧姓なので、戸籍的にはそんな人いないのだけれど、主人とも名字で呼び合っているのでやっぱり名前や呼び方なんてものは適当で、でも大切で、不思議なものだね。
ただの妄想でしかないのだけど、昔っから対話でものを考えがち。
ノートを見る限り、空き家おくりびとも下記のようなかんじだったと思われる。
Y:旅させるなら、車かな?かわいいミニカーやタイのトゥクトゥクみたいなやつ!
磯:逗子は細かい道が多いから却下!展示も流れてご飯と税金と奨学金払うのでいっぱいいっぱいの今、車買うお金がどこにあるのか。
Y:じゃあ自転車。「世界まる見え」とかでみかける「荷物積みすぎたアジアのチャリ」みたいにして!
磯:妊婦なんだから自転車は危ない、だめだよ(当時、妊娠超初期でした)
Y:え〜。じゃあリヤカーは〜?
磯:う〜ん。(パソコンで値段を調べながら)リヤカーならまあ、お金的には可とする
Y:わ〜い、リヤカー!逗子小学校の裏庭に超ボロいのがあってレトロだなあって思いながら毎日見てるよ。かわいい!ばんざい!
となるわけである。
日をまたいで、引き続き、脳内会議は行われる。
磯:リヤカーを引くという行為が伴うから、引手も一種の作品世界に入るわけ。どうするの?
Y:じゃあ私も登場人物になるね。空き家にあった古い服を身にまとって、時間の流れとかを感じさせたいな。タイムトラベルしてしまうの。
磯:やだ、私裁縫苦手なんだけど。
Y:実家の父に手伝わせればよくない?ほら、ドレスだとかの裁縫する工場(こうば)だったからそういうの得意でしょうよ。
磯:まあ、実家くらいならよいであろう。そうしましょう。
Y:リヤカーはボロいのがいいなあ。
磯:オークションにたくさんあるけど、実際に旅に出るならきちんと走行できないと。あと作品も展示しておしまいじゃなくてほかの会場にもっていったりするからコンパクトにならないかなあ。
Y:新品なら組み立て式・ノーパンクタイヤとかあるけど、これすごくアルミってかんじの色とつるつる具合でコンセプトに合わない!第一リヤカーって鉄じゃないの?
磯:鉄は重いから妊婦には無理だよ。
磯:サビを吹き付けたり、色を塗ってはどう?
Y:う〜ん。古さそのものじゃないけど。でもエイジングペイント好きだし、やりたくなってきちゃったからそうしよう。
磯:じゃあ、新品アルミのやつね(ほっ)
こんなかんじで決まっていくわけであります。
すべて、頭の中で繰り出される独り言なんだなぁ!