悪口特集 2000年1月~3月 2000.04.09 矢部明洋
「映画愛」(タカクラ注「映画愛」のコーナーは新聞に掲載していたものなので、『平成ロードショー』に収録されています)なる偽善に満ちたタイトルで別コーナーを設けたため、「映画鞭」はとんとごぶさたしていたが、まとめて悪口を吐き出します。
「映画愛」で取り上げる映画は、私がまとまった文章を書けるだけの水準に達しているものばかりです。しかし、封切られる映画がすべて、その水準に達しているわけではないのです。したがってほぼ毎週、「映画愛」を書くにあたっては、かなりの本数を見る破目になるのです。新聞紙上で始まって5カ月。駄作も山ほど見ました。今回は、それらの悪口特集です。
●『釣りバカ日誌イレブン』
監督が変わってマンネリズムが発展的に解消されるかと思いきや、マンネリのレベルにすら達することができなかった。西田&連太郎の漫才的絡みを劇の軸にせざるを得ない話なんだから、そこをはずして新味を出そうとしても、パワーダウンするのがおち、ということが分かったので、それを教訓に次回作を作ってください。あと浅田美代子を変えてくれ。
●『シュリ』
ちょっと世間がほめ過ぎ。ストーリー自体、破たんしている。けど、それを勢いで押しきってしまうパワーは確かにあるが。見てる途中ちょっとでも「おかしいぞ」と思った人はついていけなくなる。主人公ちょっとマヌケ過ぎ。韓国にはもっと面白い映画はあるので、これが韓国のトップレベルとの誤解が広まらないことを祈る。
●『アンナと王様』
演出、下手くそすぎ。またジョディー・フォスターにスターとしての華がないこともはっきりした。ミスキャストであると同時に、彼女の映画俳優としての限界も見えた。一方、チョウ・ユンファは健闘した。
●『マグノリア』
作り手の狙いと野心は痛いほど分かるが、英語がわからない客を楽しませるまでの芸にはなっていない。この映画、全編を対話のシーンが占め、みんなよくしゃべる。冗長なほどしゃべる。無駄と思われる会話の部分が登場人物のキャラクターを匂わせるのだろうが、言葉使いやなまりを理解できない、英語以外が母国語の観客には堪能できないのではないか。結末も圧巻ではあるが、心にストンと落ちてはこない。
●『スリーピー・ホロウ』
ティム・バートンは独自の色がはっきりしていて、いい監督なのだが、ここまで自分の世界に行っちゃってしまわれると、最大公約数の観客をつかまえるのは難しいだろう。現代劇を撮った方が、多くの観客との接点が増え、なおかつ彼の異能が際だっていいと思う。今回の作品はコアなバートンファンだけが見ればよい。
●『007ワールド・イズ・ノット・イナッフ』
おもしろくなさすぎ。中途退席。