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そんなに面白い? 『L.A.コンフィデンシャル』『ムトゥ~踊るマハラジャ』『TAXI』 1998.09.30 矢部明洋

 私事でいろいろ多忙だったため、書くのをさぼってました。久しぶりなので、みんなが面白いオモシロイおもしろい、と言ってる世評高い3本にイチャモンをつけることにします。
 まず、『L.A.コンフィデンシャル』。始まって3分の2辺りまでは、男たちのジェラシーが激突する、高村薫の警察小説ばりの展開でしびれた。話はそれるが、高村小説の魅力は、女のそれより激しいとされる男の嫉妬の描写。彼女の作品に登場する男たちが、実に人間臭いのは、組織の中での男の嫉妬と打算、それに伴う鬱屈を丹念に描いているせいだ。この映画も主人公の男2人の憎悪を反発が、物語にシビレるような緊迫感をもたらしている。見所はその一点。それゆえに、最後の3分の1位はつまらなくなってしまうわけです。見た人は分かりますね。後、オスカーを獲ったというのにキム・ベイシンガーまったくもって期待はずれ。この役を一ひねりしていれば最後は締まったんじゃないか。『タイタニック』や『恋愛小説家』にオスカー賞レースで遅れをとったのは順当だった。
 さて、『ムトゥ~踊るマハラジャ』だ。館内が明るくなって、席を立つお客さんの顔にご注目。みんな苦笑を浮かべながら出口に向かって歩いてるはずだ。ここまで徹底的にバカをやってしまうのも芸だが、これより数段、完成度の高いオバカ映画を20年ほど前の東映は大量生産していたということを映画ファンの皆さん知ってやってください。石井輝男監督の再評価が流行りだが、鈴木則文監督もイイゾ。私の場合、多感な時期に東映プログラムピクチャーに馴染んだせいで、2本立て用90分という長さが体質に染み付いており、ムトゥは長すぎて、途中で帰ろうかな、と思いました。
 『TAXI』はもう、一言で言って、アクションとギャグの冴えないジャッキー・チェン映画みたい。リュック・ベッソンだからといって、この程度のギャグやカーアクションに喜んでいていいのか、身銭を切ったお客さんたち。

 

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