あなたはお医者?(日常診療)
「風邪だと思うんですけど・・」などと受診した患者さんに「あなたは医者か。知ったようなことを言うな」などと横柄な対応をとるような医師は、所詮、人の話を落ち着いて聞く度量がない情けない人間なのだと思う。反省しようね。
ところが、患者さんの中には医師の言うことはさっぱり聞かないくせに、隣近所、はたまた知り合いの人達の言うことは固く信じて疑わない方がいる。
腰が痛いとご近所の人に言ったところ、「それは腎臓が悪いからだ」と言われて診療所に飛び込んでくる。
聞くと、何日か前に結構ハードな仕事をしており、診察すると背中の筋肉に沿って痛みが出ている。検尿や超音波でも何ら異状が無く、これは明らかに腎臓が原因の痛みとは違うことがわかる。
それでも「大丈夫ですよ。腎臓はなんともありませんから」と言っても、なかなか簡単に引き下がろうとはしない。
「何がそんなに心配なんですか?」と聞いても「背中が痛いのは腎臓が悪いからって聞いた」の一点張り。
私の言葉なんてちっとも信用されてはいないのである。
「これくらいでレントゲンを浴びる方が身体に悪いから」と言っても「もっとちゃんと検査してくれ」と言って譲らない。
もっとちゃんとって・・別に手を抜いてた訳じゃないけど。
先日お見えになった方も、そんな塊のような方。
「・・が、ああ言った」「・・からこう聞いた」と矢継ぎ早に自分の思いこみを訴え続ける。
投薬内容を見ると安定剤も何種類か・・さもありなんである。
最初は、泌尿器科領域の話をしていたが、それを一通り言い終わると、今度は膝の痛みについてくどくどと訴え始めた。
「膝が痛いのはリウマチかもしれないって聞いた。放っておいて大丈夫だろうか」
「それ、誰が言ったの?」
「近所の○○さん」
「で、整形の先生は何て言ったの?」
「もうちょっと体重を減らせって」
「それで体重は減ったの?」
「・・・・」
こんなことの繰り返しばかりである。
長々と聞いていて、いい加減聞き飽きてきたところにまた別の話題。
「血圧がこれくらいだと、ちゃんと調べた方がいいって言われた」
もう私の我慢も限界に近い。
「それ、誰が言ったの」
「息子が」
やれやれ・・もう今日の診察はおしまいにしよう。
それではと、決めゼリフを。
「で、あなたの息子さんは医者なんですか?」
「はい、○○大学の内科の准教授です」