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おばあちゃんが怖い(在宅医療・看取り)
以前にも話をしたことがある対光反射。
対光反射とは、大雑把に言えば瞳に光を当てると瞳孔が小さくなる反射のことで、亡くなるとこの反射が見られなくなる。
かつては看取りに際し「大して意味はないけどなあ」などと思いながらも、儀式のようにやっていた(それどころか、携帯心電図で心拍がないことを確認したりもした)。
予期せぬ突然の死や、経過があまりにも不自然な死に対しては、その判定は慎重にやるべきであるが、癌の末期など、誰が考えても不自然ではない死亡に際しては、今は聴診器を当てる程度で、特別の死亡判定は行わない。
これはまだ対光反射をやっていた頃の話。
ばあちゃんが亡くなった時、運悪くそのあたり一帯が停電の真っ最中。
ちょっと見ただけでは肝心のばあちゃんがどこにいるのか戸惑うほどの暗さだった。
薄暗い中で聴診器を取り出し、例によって対光反射で確認しようとしたが、その日に限ってペンライトを忘れて来てしまったことに気がついた。
「すみません、ライトを貸して頂けませんか?」と家の方に尋ねたところ、出てきたのが洞窟探検にでも使うような巨大なライト。
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対光反射は最初から目に光を入れておく訳ではなく、最初は目の外に光を当てた状態で瞳孔を確認し、ついで光を目の中に入れて瞳孔の変化を観察する。
私はいつも顔の下の方から眼に向かって光を移動させる。
いつものように、その巨大なライトで顔の下から光を当てたところ、暗闇に浮かびあがるばあちゃんの顔!
家中の人が「いや~! 怖い~!!」
こらこら、ばあちゃんが怒るぞ。