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電子カルテ(日常診療)
私の診療所は紙カルテを用いている。
実は25年以上も前、病院でさえまだ紙カルテを用いていた頃、新しい物好きの私は電子カルテの導入を計画し、業者にデモをお願いしたのであるが、その価格 800万円と言われたとたんに電子カルテへの熱意は消え失せてしまった。
ああ、あれから25年(綾小路きみまろ口調でお願いします)、時代は私を遙か彼方に置き去りにし、周囲の医療機関を見渡せば電子カルテが当たり前。
時々、診療所に来る若いドクター達は私の前ではあからさまには言わないが「え?まだ紙カルテなんですか?」みたいな雰囲気がありあり。
もう私の医師としての残された時間はそれほど長くはないので最後まで紙カルテでもいいやと思ってはいたが、最近の国の制度変更は電子カルテありきで進んでいる。腹立つわ~(ここだけの話、行政と IT業者が結託すると、大抵ろくでもないものが出来上がる)
従業員達の「簡単に辞められたら私達が困ります」というもっともな訴えも後押しとなり、ついに思い切って電子カルテのデモを行ってもらった。
その結果、皮肉なことに紙カルテの良さを再認識してしまうことになり、やはり紙カルテのままで行こうと決心した矢先にやってきたのが2年に一度のカルテ更新。
紙カルテは通院期間が長くなると必然的に分厚くなってくるので、私の診療所では2年に一度、新しいカルテに内容を転記して更新することになっている。
もともと患者のデータは自分で作ったデータベースに保管しており、この2年分の内容だけを継ぎ足せばいいのであるが、年齢と共にこの作業が半端なくきつくなってきている。
毎朝6時半に出勤し、日曜日や祝日さえも朝早くから夕方までひたすらカルテの転記をやり続けても、わずか2~3日で私の部屋はカルテが山積み。
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古いカルテの保管場所も足りなくなり、私の部屋はカルテ保管庫と化しつつある。
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電子カルテはいくら書き込んでも厚みが増すことはないし、保管する場所も必要ない。
何よりカルテを更新する必要がない。
不毛とも思えるカルテ転記の作業に屈し、ついに我が診療所も遅ればせながら電子カルテに移行することにした。
初期費用が120万円くらいと聞かされたが、かつての800万円に比べれば安いし。
ところが話を進めて行くに従って、
ここ場所には 新たにLANケーブルが必要ですね。
検査会社と接続するには別途費用が必要になります。
往診先で使うのであればセルラータイプのタブレットは必須です。
レセプトチェッカーというソフトも入れた方がいいと思います。
看護師もすっかりその気になって、ついでにこの場所に電源も必要だから、コンセントも付けてもらおうかな~・・費用はどんどんと膨らんでいく。
まるで「今なら1時間、3000円ポッキリですよ~」と言われて入った店で、女の子が10人ついて、トンペリで 10段のシャンペンタワーが始まったみたいな・・
そんなことを思いながらカルテを書いていた時、前に座っていた患者のおばちゃん。
「先生、万年筆を使うんですね。素敵だわ~」
やっぱり、紙カルテのまま頑張ろうかな・・