麺類頂上決戦
「今日はラーメン食べよう」
彼が嬉しそうにそう言った。私は少しムッとして、ラーメンは嫌だな。と思った。
私は麺類の中で、素麺が1番好きだ。
とにかく早くできるし、何にでも合うし、冷たいのも温かいのもできるし、なんだかスルッと食べられる。
風邪の時にお母さんが作ってくれるにゅうめんも最高だし、飲み屋さんの〆で鶏白湯のにゅうめんが出てきた時は、そう来たか、と唸った。最高だった。
でも彼氏は、麺の中だとラーメンが1番好きだ。
しかも、具がたっぷりで、油コテコテで、食べた後に後悔する様なやつ。彼は大学生の時週五でラーメンを食べていたらしい。控えめに言って、頭がおかしい。
別に私だってラーメンが嫌いな訳じゃない。コテコテのラーメンを食べて後悔するのも好きだし、あっさりラーメンを食べてもう無くなっちゃったのか…と悲しむのも好きだ。
そう、私たちは水と油のように真逆なのである。
アウトドア派で友人の多い彼、インドア派で本が友人の私。
どうやったって交われない。不可能である。
付き合って3ヶ月だが、別れそうな喧嘩を数え切れないほどした。その度、やっぱり無理だ、と思う。
だけど、同じ人間だから似てる部分もある。
根っこの部分は、少し似ている。好奇心旺盛で何でも手を出したくなってしまうところとか、意地っ張りなのに楽観的とか。
素麺もラーメンも、そんな感じなのかな、と思う。素麺は小麦粉を練って油を塗る、ラーメンは小麦粉を練ってかん水を入れる。
具もスープも違うけれど、ずっとずっと根っこの部分は同じだ。
だから、元気な時は2人でコテコテのラーメンを食べたいし、風邪をひいたらにゅうめんを作ってあげたい。
交わらなくても、絡まるくらいでちょうどいい。
「この辺に美味しい二郎系があるんだけど」
笑顔で言う彼を見て、私は肩を竦める。
ポッキリと折れてしまう素麺の事を、想う。私の意志と同じように、簡単に折れてしまう、それを。中華麺の柔らかいのに、簡単にちぎれない、それを。
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