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竹宮ゆゆこの分解
映画が絶賛公開中の、“砕け散るところを見せてあげる”や大人気シリーズ“とらドラ!”で有名な竹宮ゆゆこ。(執筆当時。)
竹宮ゆゆこはラノベ出身であり、その筆致に魅了される読者は後を絶たない。何故、竹宮ゆゆこはそこまでに人を惹き付けるのか?
いち竹宮ゆゆこファンとして、更に多くの方に“竹宮ゆゆこ沼”にハマって貰うため、今回は私の文章力、語彙力を惜しむことなく使い、その魅力を伝えたいと思っている。
というのも、新潮nexから先月出版された新作、“心が折れた夜のプレイリスト”を読んだことにより、私の心はさながら暴風の中の桜なのである。
本作は、大失恋をした主人公“萬代”が「窓が閉められない」という悩みを抱えるところから始まる。閉められない?開けられないじゃなくて?と訝しみながらも、失恋したての萬代のブレイキングハートや、“閉まらない窓”というミステリちっくな謎、そして登場する謎の顔だけは整ったキャラの掴めない先輩(※彼は清々しい程のドマゾ、ド変態である)。二転三転四転五転するストーリーに、私は引き摺り回されるように1章を読み終えた。
そして2章に登場するのは1日何杯もラーメンを食べる他称“ラヲタ”の女の子。とち狂ってやがる!(褒め言葉)彼女に誘われるがままにラーメンを食べ歩く萬代、狂いに狂い倒す女。それに傾く萬代。恋愛…?と思いきやド狂い。ここに常人など存在しなかった。
と、ここまで読んで分かっていただけただろうか。
そう、設定は変だけれど、思いもよらない展開!!!いわゆる、どんでん返し!!(昨今有名な屍人荘の殺人等)的なものでは無いのである。
それなのに何故ページを捲る手が止まらないのか?飽きないのか?そして、どうしてここまで私を惹き付けたのか?
それはひとえに、唯一無二の“スピード感”だと私は考える。
とんでも設定も、頭がおかしいのに何故か共感してしまう登場人物達も、何もかもを圧倒するその“スピード感”なんと言ったらいいのだろうか。めちゃくちゃ早口で喋られている感覚なのだ。でも、不快でもなければ、意味不明ということも無い。言っていることは分かる、ストーリーは理解できる。ただ、文章がとにかく、早い。新幹線も絶対に追い付けない。
よく、物語を褒める言葉で続きが気になって読むスピードが早くなった、と言う。
それとは全く別である。
流れ込んでくる文章のスピードが、早いのだ。
魅力しかないタイトル、独特の世界観、当然のような超常現象、一切の無駄がない文章、脳に直接伝わってくる五感のままの言葉、理解しやすい単語、狂い散らかした人物たち、毎行変わり続ける方向性。
全てが“スピード感”のためのものとしか思えないほどに、速い。
例えるならば減速ゼロのジェットコースターである。乗った瞬間からトップギア、グルングルン回されて、いつの間にかてっぺんに居て、それに気がつく前に下に落とされて、そして、地面に叩き付けられる。
終わった後は、放心しかない。
そして思うのである、“これは一体、何なのだ?”と。
竹宮ゆゆこにしかさせられない、とんでも読書体験である。いや、最早これを読書体験と呼んで良いのだろうか?私たちは竹宮ゆゆこに弄ばれ、突き落とされているのを愉むだけのマゾヒストでは無いのだろうか?
という、意味のわからない悩みを毎作させられる。ハッキリ言って、化け物だ。
竹宮ゆゆこ、私はあなたにこれからも振り回されたい。あなたの世界をトップスピードで駆け抜けたいのだ。できることならば、一生。どうか、そのまま走り抜けて欲しい。私がどれだけ掛けても指先1本触れられないまま、加速し続けて、走り去って欲しい。
……まるでド変態の文章だが、これほどの魅力が竹宮ゆゆこにはある。
あなたも、その脳を竹宮ゆゆこに振り回されて見てください。帰ってこられるかの保証は、致しかねます。
心が折れた夜のプレイリスト(新潮文庫)
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