星輝子ラップHassaleh全歌詞解説、構成こだわりまとめ❷後編
★まず初めに
このnoteは星輝子ラップ「Hassaleh」のセルフ歌詞解説第三弾となります。なお前回解説したhook1のあまりのリリック密度に文字数が増えすぎた為、❷は前編後編と分けさせてもらいました。今回はその❷後編、verse2の解説となっております。
このverse2に関しては、2022年に一部完成した際にある程度の歌詞解説をTwitterに公開しているので、大まかには内容を知っている方もいらっしゃるかもしれません(解説文字数気にして韻踏んでるとこばっか解説してたやつです)。知っている方もそうですが、知らない方でも解説を❶から読んでいただいていれば、点と点が線で繋がっていくようにそれぞれの言葉の意味するところが少しずつ見えてきているんじゃないかなと勝手に思っています。使用する位置によってメッセージ性がより深くなるように言葉を選び抜き丁寧に構成されたそんなverse2の解説となります。星輝子に狂った思考の片鱗を是非お楽しみください。
★詳細な所まで含めた歌詞解説Verse2
verse1からhook1で素人から好きになって星輝子ファンへ、そしてこのverse2でファンから星輝子のプロデューサーになる様子を描いています。自分の好きが溢れてしまい、そう感じた存在を他人に教え広めることで自分のような人を増やしていくそれを「危ないキノコの美味しさを広めていく」「薬物の中毒者が周りにも勧めていく」「病気に感染して気が狂ってしまいバイオハザード状態になる」と並列的に喩えながら全ての歌詞が構成されている。また、かなりの遊び心が入っているので全てのネタを最初から分かっていた人は本当に凄い読解力発想力の持ち主だと誇っていいと思います。
verse1製作時から結構な期間が経っており、このverse2を製作する時にはかなり歌詞作りのコツが分かってきていたのを覚えています。それでもなお、様々な意味を多重に通しながら星輝子で韻を踏んでいく等という無茶苦茶な条件が歌詞作りの難易度を跳ね上げていました。この解説を読み終わったらこんなのよく完成したね…って慰めてください。
①『同志今日の調子どうよ?
勿論こちらコンディション最高潮』
verse1でど素人と言われていた奴がverse2では同志になっている。毒に侵されているが最高潮と答えているがこれはhook1の4⃣で言っていた下から上がっていく気持ちなどと繋がっている。
verse1の開幕「ここに登場~ ど素人~」とverse2の開幕「同志今日の~ 勿論こちら~」はそれぞれ小節の始まり方が同じ母音の構成となるようにしており、音は同じだけど言ってる内容は真逆というギャップを感じられるように意図して作っている。
星輝子(oiouo)で韻を踏んでいる所→同志今日の(o-iouo)、調子どうよ(o-iouo)、勿論こ(oiouo)で完踏みしている。
コンディション(o io)でも一部星輝子と踏んでいる。
*最高潮(aiouo)は星輝子と語感踏みという完全ではない韻の踏み方をしている。*←このマークが付いたaiouoでの踏み方はこのverse2を構成する音の中でも頻出する踏み方になっています。意図して入れている理由は最後に出てきます。
「同志、今日の、調子、どうよ、勿論、こちら、コンディション」と言葉の一文字目の頭で母音をoで統一し、頭韻という踏み方をしている。発音のアクセントが揃うように、最後の最高潮でaiOuO-と強調しているのでより気持ちよく聴こえるようにしている。
②『細菌感染し広がる陽性の輪
唾飛ばし手を伸ばし食らい続ける』
こんな短い文章なのにダブルミーニングだらけでやばいクオリティーのリリックになっています。
まず「細菌感染し広がる陽性の輪」は「キノコを食べてしまい毒や病気に侵された人が少しずつ増えてその仲間の輪が大きくなっていく」という文脈通りの意味があります。もう一つは「細菌感染→最近観戦」「陽性の輪→妖精の輪」という同音異義語に置き換え、「星輝子のライブを最近観戦し魅了されファンが増えていく」という意味を込めています。ライブにて魅了されていく様子はverse1から描いてきているので連想されやすいかなと思います。
妖精の輪というのはフェアリーリング即ち菌輪のことで、芝の病気によるキノコの発生方法の一つとしてその呼び名が使われています。キノコが手を繋いているかのように輪っかになって生えてくるフェアリーリングと菌による陽性者が増えていく様を重ね合わせている。
また輪という言葉においても、星輝子を中心に仲間の輪が広がり規模が大きくなることと増え広がる菌輪で意味がかかっていることから非常に高度な言葉の選び方をしていると分かってもらえるかと思います。
もう一つこのフェアリーリングという言葉を選んだ大切な意味がある。昔から菌輪ができるのは魔女の足跡などの仕業だと言われていたり、魔法のようなもので作られた別世界への扉じゃないかとの伝説が残っている。星輝子のキノコ要素だけでなくシンデレラガールズという魔法をコンセプトにしている物にこれ以上ないくらいぴったりだと思ったのもあるし、何より魔法をかけられて新しい世界へ足を踏み入れるという文脈から入れざる負えなかった重要な言葉の一つでもあります。
「唾飛ばし手を伸ばし食らい続ける」に関してもこれまでの文脈からそれぞれ二つの意味が込められている。一つ目は「危ないキノコや劇物の味を覚えてしまった人間がなりふり構わず涎まき散らし手を動かし続け食べ続ける様子」と二つ目の「ライブ観戦で星輝子というアイドルに完全に魅入られてしまい唾を飛ばすくらい声を上げ、彼女に賛同するように手を上に掲げ、その存在のヤバさに食らい続ける様子(凄さにやられる)」でダブルミーニングが成立している。
この構成上韻はそこまで重視しておらず、韻は「飛ばし(oai)、伸ばし(oai)、食らい(uai)」と尻部分のaiで脚韻(言葉尻の母音を統一する踏み方)を踏んでいるのみとなっている。
③『要らない香辛料と調理両方
生で取り込むともう一生もん』
こちらもダブルミーニングだらけのリリックです。先程の食らい続けるからキノコ繋がりで食べ物に関する言葉のみで構成されています。
「要らない香辛料と調理両方」部分は「⑴キノコその物の素材の味が良いので下手なスパイスも余計な調理も、どちらとも無くても十分いける」という意味とライブの文脈から「⑵共演者(香辛料)も曲のアレンジ(調理)も何もなくていい」という意味が込められている。
「”生”で取り込むともう一生もん」という部分は、「⑴”生のキノコ”を食べてしまうと食中毒により死に至るがそれでも味わいたくなる中毒性がある」と「⑵一度”生のライブ”を浴びると他じゃ満足できなくなり次も現地に行きたくなる」と「⑵”等身大の星輝子”を知ってしまうと一生忘れられなくなる」という意味がかかっている。
ただダブルミーニングとして複数の意味がかかっているだけでなく、韻もガッチガチに踏みつつも⑴⑵それぞれの意味が星輝子に関連しながら同時にストーリーが進行していくように話が成立しているというところがこのリリックの個人的な好きポイントです。
星輝子(oiouo)で韻を踏んでいる所→香辛料と(o-iouo)、調理両方(o-iouo-)、取り込むと(oiouo)、もう一生もん(o-iouo)で完踏みしている。歌いやすさも考えながら作っていたので聴こえを良くするよう小節のケツに連続して二つずつ韻を置いています。
この短い小節で内容詰めつつ4つ踏んでるのはちょっとキモいクオリティーだなと思います。
④『高身長を超える低身長
で肥えた舌 既にステージ四』
「高身長を超える低身長」とは星輝子ちゃんという低身長のアイドルが高身長を凌駕していくというそのままの意味です。身長は身の丈とも言いかえれますが、身の丈に合った評価や分不相応だという上からの圧力を破るそんな常識が通用しない型破りなところが星輝子の魅力だよなとふんわり考えながら身長という言葉を選んでいます。
”肥えた舌”というのは「舌が肥える」と「下が超える」のダブルミーニングになっています。「舌が肥える」は「キノコ繋がりでその強烈な美味しさに慣れてしまった様子(②からの増える食物繋がりで地味が豊かに肥えるという意味もある)」と「自分の中で星輝子が基準になってしまい他じゃ役不足に感じる様子」の二つの意味がかかっている。「下が超える」は文字通り「低身長という下が高身長という上を超えていく様子」を表しています。
「既にステージ四」の”ステージ”という言葉は癌という重い病気の進行度(広がり具合)から引用しています。その進行度は0から4期まであり、中でも一番ステージが進んでしまっている末期状態のことをステージ四と呼びます。今回一番重いステージ四という言葉を使用しているのは既に星輝子という存在が自分の中に寄生増殖され感染した状態になっている様子を分かりやすく喩えるために引用しています。②で「細菌感染し広がる…」と言っていたのもここのステージという病の広がり具合が分かるような言葉と関連するように全て意味がかかっています。
またverse2の文脈からも関連する”ライブでのステージ”という意味もここには込められています。だからここでは「星輝子を好きになったこと」や「毒きのこを食べてしまったこと」に関してもう手遅れだという内容になっています。
星輝子(oiouo)で韻を踏んでいる所→高身長を(o-iouo)で完踏みしている。低身長を(e-iouo)で語感踏みしている。
超える低身長を(oeue-iouo)→既に(uei)→ステージ四(ue io)と口に出してみると分かりやすいが、耳障りが良くなるように細かく韻を踏んでいる。
⑤『殺菌消毒逃避行動どうしようもない
性懲りもなく気になる末期症状』
先程のステージ四という言葉から病的なものが連想されやすいように作っています。内容としてはキノコの毒や重度の病に侵されてもう手遅れな状態なので、文字通り「殺菌消毒しても逃げても何も変わらず、何をしてても心配になる末期症状」というそのままの意味と「他のことを考えようとしても何をしていても星輝子のことが頭から離れない重度のファン」という意味が込められている。
性懲りもなくの”性懲”は”輝子”との同音異義語として使用している。
また”気になる”は”木に生る”という言葉との同音異義語として使用している。木に生るのイメージとしては抜いても抜いてもどこからともなく生えてくるキノコが分かりやすいかと思います。
星輝子(oiouo)で韻を踏んでいる所→逃避行動(o-iouo-)、どうしようも(o-iouo)で完踏みしています。
*殺菌消毒(aiouo u)、*ない性懲(aiouo)、*末期症状(aiouo-)で星輝子と語感踏みしています。
「ない~なく~なる~」の”な〇”は細かく頭韻踏みをしているが、母音だけでなく同音で気持ちよくなるように子音も合わせている。
逆に後半部分のみを見てみると「なく~なる~症状」と”〇u”のように言葉尻の母音だけを合わせる脚韻踏みを使用している。
⑥『もう二度と見つからない治療法
共依存の理想郷にようこそ』
末期症状でもう元に戻れないからこそ、この状態を受け入れて楽しもうぜと同じような奴らが暖かく迎え入れてくれるような内容です。
verse2で使用した数字をここまで順番通り全て振り返ると、「③一生もんの”1”」と「④ステージ四の”4”」と「⑥二度との”2”」の三つだけである。察しの良い方はお気付きかと思いますが、身長142㎝のメンバーのみで構成された星輝子、輿水幸子、白坂小梅の3人組ユニット「カワイイボクと142's(いちよんにーず)」からサンプリングされている。細かいところを言うとこの曲の歌詞全体で使用されている数字は全て1or4or2のみとなっている。
星輝子(oiouo)で韻を踏んでいる所→*ない治療法(aiouo)で語感踏みがされている。もう二度と(o-io o)、共依存の(oio o)、の理想郷(oiouo)、郷にようこ(oiouo)で完踏みしている。
「共依存の理想郷にようこそ」部分で3つ星輝子で韻を踏んでいるが、韻の踏み方をお互いの文字同士が重なり合う鎖のようにあえて踏んでいる。意図としては星輝子とあなたがお互い依存しあうようなイメージを持たせるために踏み方一つにも意味を持たせている。
⑦『Pandemic増やそう少数派
月の下叫び歌おう中毒者
ファンから君もプロデューサーで大親友
さぁ行こう 「輝キノ向コう側へ」』
ここまで2小節ずつ歌詞解説をしてきましたが、ここだけは構成の関係上4小節まとめて解説させていただきます。
このラストバースは、verse1で星輝子を教えられたど素人がその魅力を知って生粋のファンになり、verse2で好きで好きで堪らなくなった結果、自分がそうされたように「自分が好きと感じたその魅力の共有」によって同じような人間を増やすプロデューサー活動に足を踏み入れていく…といった様子を描いています。
まず”Pandemic”とは「PANDEMIC ALONE(パンデミックアローン)」という星輝子ちゃんの2ndソロ曲からサンプリングされています。病気や影響力のある人や物が世界的に大流行していくことを指しているので、「病や毒が伝染していく様子」や「ファンがPになりまたファンが増え続ける様子」のようなこの曲のコンセプトにもぴったりだと思い入れました。
またPandemic増やそう(a ei uuao-)と叫び歌おう(aeiuao-)は、連想されやすくする為にサンプリングしているPANDEMIC ALONE(a ei uao-)で完踏みしている。
”月の下”は星輝子と白坂小梅の二人組ユニット「NiGHT ENCOUNTER(ナイトエンカウンター)」による「Lunatic Show(ルナティックショー)」の一部歌詞からサンプリングしている。歌詞の後半に行くにつれて日が暮れて夜になった様子がなんとなくイメージできるようにこの言葉を置く位置を終盤に持ってくるように意識していました。
一種の言葉遊びではあるが、少数派の”少”→中毒者の”中”→大親友の”大”とPandemicで増えていく様子が分かるように少しずつ言葉の頭文字を大きくしており、それと同時に言葉の意味合いとして星輝子との関係値もだんだん進んでいくようにしている。
また、踏んでいる韻としては少数派(o-u-a)、中毒者(u-oua)、プロデューサー(uou-a-)と音数が増えながら完踏みしている。これはoとuとaのみの母音で構成されているので直前にある増やそう(uao-)、歌おう(uao-)の音とも繋がるようになっている。
「輝キノ向コう側へ」という言葉は2020年のデレマス総選挙で星輝子を応援するためにTwitterで生まれたハッシュタグ「#星輝子を輝キノ向コう側へ」からサンプリングしている。そのハッシュタグの元ネタは「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」というアイマス本家である765プロ作品の劇場版タイトルから引用しており、星輝子の名前から”輝き”と平仮名部分である”きのこ”をカナ変換し強調した非常に秀逸なタグとなっている。実際に星輝子P界隈で使用されている言葉だが、アイマスの原点である765の一つの到達点を描いたものだからこそ、この作品のタイトルを元々ハッシュタグができる前からどうしても入れたいと考えていました。なのでもし歌詞に入れるならラストバースだと構想の段階からほぼほぼ決まっていました。
最後の韻を踏んでいる箇所としては、*ファンから君もプロデューサーで(aaai-o uou-a-e)と*輝キノ向コう側へ(aaaio uoua-e)というかなり長い文字数で完踏みしている。ここで注目していただきたいのが*マークの”aiouo”という星輝子(oiouo)の語感踏みでもあるこの踏み方である。このverse2で①からずっとこの母音で韻を踏んできたからこそ、最後の最後で*ファンから君もプロデューサーで(aaai-o uou-a-e)と*輝キノ向コう側へ(aaaio uoua-e)という頭部分での踏み方がより一層気持ちよく聴こえやすくなっています。地味にさぁ行こう(aaiou)もそれぞれに頭韻踏みされている。
★製作期間含め後書き
ここまでがverse2の歌詞解説16小節分となります。たった16小節作るのに準備期間は除きますが、本格的に完成させようと決意してから作り始めて丸三ヶ月かかりました。完成したタイミングはギリッギリ2022年の6月寸前だったと思います。星輝子ちゃん誕生日記念でverse2お披露目できて良かった…
この三ヶ月という期間はなんとなく時間あるときに製作するというものではなく、本当に起きている間は遊んでいる時や仕事中(だめだろ)でも何をしていても常に脳みそをフル回転させていた期間です。刃牙に登場する本部以蔵というキャラが戦うときだけでなく、日常の中であっても日に数度だけ心から武が離れるだけみたいな感じで本当にずっとこのラップが念頭にありました。他の人の曲を参考にしつつ古い文献を漁ったり論文を読んだり歌詞作りの為に勉強をしながらカフェに10時間籠ったりと…とにかく時間を注ぎ込みまくりようやく形になったという感じです。
当初完成できるなんて思っていなかったので歌詞が綺麗に着地できた時の喜びは凄いなんてものじゃ表せないものでしたね。
タイミング的に書き忘れたのでここで答え合わせのようなものをしますが、❷の前編で少しだけ言っていた「誰しもが推しに抱いたことのある大切な気持ちが鍵」というコメントについて触れておきます。言わなくてももう分かっているかと思いますが本当にそのままで「あなた自身が生み出した好きという気持ち」ただそれだけです。今回の⑦でもある「自分が好きと感じたその魅力の共有」こそがプロデューサーの根源だと自分は考えています。だからこそいろんな人が様々な角度からこの魅力の共有をしてファンを増やしていけるというのがアイドルマスターというコンテンツの良さであり強みだと感じていました。今回それっぽくこういうのを書いてたのは裏テーマとしてこの気持ちを大切にしながら歌詞を考えていたからというのもあります。
verse2が完成したあたりから音源にしたいという想いが強くなり、残りのhook作りと同時にビート選びやデモ録音の繰り返し作業など本格的に動き出したのを覚えています。その中でもビートへのアプローチ、言い換えれば音源に対する歌い方をどうしていくか?というもので大いに悩むのですがそれはまた別のnoteに機会があればまとめていきます。
前編後編に分割したとはいえ本当に長い歌詞解説❷でしたね…
❸では最後のhook2、hook3の歌詞解説をさせていただきます。このhook2とhook3は輝子愛とこだわりがこれまた詰まった個人的に好きな部分多めな内容なので必ず期待を超えてくる完成度だと胸を張って言えます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!
🍄✨<お前たち一人ひとりが、大切な原木だ!胸を張れ!傘を開け!