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ミスドにメリーゴーランドがなくなっても
かつてミスタードーナツにはメリーゴーランドがあった。
キラキラ輝く店内にドーナツの甘い香り。
幼い私にとって、特別な場所だった。
よく母が連れて行ってくれた。
汁そば、氷コーヒー、Dポップ。
母は決まって「これ、ママが若いころからあるんだよ」と言って食べさせてくれた。
シンプルな優しい味の汁そば。一口サイズのドーナツが6種類入ったDポップ。小食でひ弱な子どもだった私でも、色々な味が食べられるのが嬉しかった。
そして何より「ママが昔から食べていた味」と思うと、なんだか嬉しくてほっとした。
大学生になった私は、一人暮らしのアパート近くのミスドでアルバイトを始めた。
それまで知らなかった美味しい食べ方を、当時の店長が沢山教えてくれた。
ホイップクリームをのせたハニーディップ。
凍らせたサクサクのチョコファッション。
レンジで15秒温めたフレンチクルーラー。
つるっと光っているポン・デ・リングはできたての証。
どれも口にした瞬間感動した。
寒い冬の日はいつも、ブレンドコーヒーとオールドファッションハニーを持って大学に向かった。
冷たい空気の駅のホームで頬張った甘いドーナツと熱いコーヒー。
今日も頑張ろうと心から思えた。
それから私は社会人になった。
大人しい子どもだった私がまさかの営業マンになった。外回りでへとへとになりながら、無意識のうちに営業先の近くにミスドがないか探しては通った。
大きな契約を取り付けた日。
失敗して落ち込んだ日。
とにかく忙しい日の束の間の休憩。
のんびりしたい日曜日。
私は決まって汁そばと、コーヒーと、ドーナツを食べた。
何年経っても思う。
若い頃のママも、こんな風に通っていたのだろうか。
嬉しい、楽しい、元気になる、ほっとする。
子どもの頃も、大人になった今も。
いつだってミスタードーナツは、私にとって特別な場所だった。
50年、ずっとそばにいてくれてありがとう。
これからもよろしくお願いします。