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往復書簡:ひびをおくる

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写真家・鳥野みるめが撮影した写真から、書肆 海と夕焼 店主・柳沼雄太が物語を紡いでゆく往復書簡。東京と鎌倉、互いに離れた場所でおくる日々。見るものも感じることも違う日々の中で、写…
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往復書簡:ひびをおくるとは

往復書簡:ひびをおくるとは

本記事では写真家・鳥野みるめさんと、私、書肆 海と夕焼 店主の柳沼雄太がnoteのマガジンにて連載している「往復書簡:ひびをおくる」についての概要をお伝えします。初めてお読みいただける方も、途中からお読みいただいた方も改めて楽しんでいただきたいという思いのもと、筆を執りました。

1.往復書簡:ひびをおくる とは
 「往復書簡:ひびをおくる」は、写真家・鳥野みるめと書肆 海と夕焼 店主・柳沼雄太の

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太003

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太003



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人影と足取り

 どれほど歩いただろうか。果てなく続くような街並みの中で、いまだに歩みを続けていた。民家や居酒屋から漏れる光もいつしか消え、街は人々の生活とともに眠りについたようだった。生温かい風は吹くことを止め、茫とした空気だけがそこに残っていた。

 何も聞こえなかった。通り過ぎる人の足音や、吹き抜ける海風や、街に眠る人々の息づかい。そのいずれも

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太002

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太002



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ある夜の明かり

 降りるつもりもない駅で降りてしまった。残業の後、電車の座席に体を預けると、いつの間にか眠りに落ちていた。最寄りの駅を過ぎたことはなぜか分かった。そう思った瞬間、この駅に降り立っていた。

 上りの電車までは、相当な時間があった。澱んだ眼差しで、改札を抜けた街並みに目を遣った。街灯だけが朧げに浮かぶ風景にたぐり寄せられるように、改札

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【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太001

【往復書簡:ひびをおくる】柳沼雄太001



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朝露と海鳴り

 海鳴りを聞いた気がする。空が鮮やかに白みはじめるころ、僕はふと目を覚ました。フロントガラスに流れる雨の滴を目で追いながら、つい数時間前のことを思い出した。

 昨日は彼女と付き合い始めて2ヶ月の記念日、そして彼女の誕生日だった。僕は花束を届けるつもりだった。彼女の誕生花であるクロタネソウを使ったささやかな花束を、近所の花屋に注文して

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