雨宿り中に食べたせんべい汁 #文脈メシ妄想選手権
毎年、宮城県で行われている音楽フェス。
そこで、雨宿り中に冷えた身体を温めて
くれたせんべい汁。
辺りはたいぶ暗くなってきた。気が付けば、雨も降っている。
吐く息が白くなるほど、寒い。
4月といっても、東北の春は寒かった。
何か温まるもの食べたいなぁと思いながら、屋台のほうを見ると、「せんべい汁」という文字を発見する。
食べたことないけど、あれにしよう。
初めて食べるせんべい汁には、野菜ときのこ、わずかな鶏肉、そして南部せんべいが入っていた。
屋根がある場所に移動して、雨をしのぐ。
ズズっと汁をすする。
「うまっ」、思わず声が出そうになった。
冷えた身体に塩気のある汁が染みわたる。
はぁ。
と、ポケットにしまっていた携帯がブルっと鳴った。
「今、どこにいるの?」
「○○エリアの飲食ブース前だよ」
「今からそっちに向かうよ」
数分後、メールを送ってきた背の高い友達が私の横に並んだ。
「寒いねー」
「せんべい汁、食べる?」
「おー、食べる食べる」
「これからどうするの?」
「こっちのステージに行くか迷うところだけど、
こっちかな」
「そっか、私はこっちに行くよ」
友達数人でフェスに参加したものの、みんな自由に歩き回っているので、なかなか出会わなかった。
みんなどこにいるんだろう。
「最後は清志郎でしょ。一緒に見よう、連絡する。」
いつのまにか最後の汁まで飲み干した、背の高い友達が言った。
最後は一緒に見たいなと思っていたから、気持ちが伝わったみたい。
ついでに、その先の気持ちまで伝わればいいのに。
「うんうん、見よう!」
温かいせんべい汁を食べたおかげか、自分の頬が紅潮しているのがわかった。
(おしまい)
***
今回は、こちらの企画に参加させてもらいました。
マリナさん、あきらとさんありがとうございます。
当時のことを思い出したのは、たけのこさんの記事を読んだからでした。
フェス飯でいうと、散々歩いたあとに食べたマンゴーフラペチーノ。
キンキンに冷えた浅漬けきゅうり一本。
会場で初めて会えた友達と乾杯した生ビール、など思い出しました。
たけのこさん、ありがとうございました。