やわらかいからだ

帰りの電車が大きく遅れていた。数分で次発も走るがみんな帰りを急いでいる。暖房の効いた車内は窓も曇りガラスで窮屈だった。音漏れに気を遣い聴いたロックンロールは物足りなかった。みんな金曜の夜だのに顔つき暗いね。なんとなくチェットベイカーを選んだ。やわらかい音は漏れにくいから少しボリュームをあげて。むしろみんなにもらしちゃえばいいかな。まもなくすべてがまろやかでかろやかな揺れにかわった。のしのしとホームの階段を上がる重い足取りさえもスローモーションのように見えた。思わず笑っちゃった。毎日朝晩電車の中ではジャズを流せばいい。小さい音でいい。どうせみんなイヤホンつっこんでるんだし。朝は眠いし夜は疲れてる。だからってそれに翻弄されて肩こりのひどい中年にはなりたくない。いかにハッピーにやるかを考えよう。体が硬いとダンスも踊れないよ。帰り道に買ったバランタインファイネスト。安酒だけどトリスと比べたら贅沢だな。帰ってなにしながら飲もうって考えたら700ミリの瓶に口をつけてこっそりひとくち飲んじゃった。外していいとこではどんどん羽目を外してこう。うまくいきそうにないことはスリルがあっていいじゃない。

きょう兄に女の子が産まれた。父さん母さんもじいちゃんばあちゃんもみんなお待ちかねの女の子だ。

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