何を考えているのか分からない怖さ
先日、久しぶりに故郷に帰りました。だだっ広い田んぼ道、50メートル前方でカラスが何かを襲っている光景が目に入る。カラスはとても手こずっている。そして、ついにあきらめた様子で飛び去って行きました。
何だろう?と気になって近寄ってみると、そこにはヘビがいました。カラスに襲われていたヘビは、見事にカラスを追い払ったのです。
野生のヘビをおそらく10年以上ぶりに見ました。ペットショップの水槽にねじ込まれているそれとは違って躍動感がある。命懸けだもの、そりゃそうだ。少なくとも今暮らしている福岡市では、野生のヘビを見かけることはないし、めずらしいのでしばらく観察していました。
どれぐらいの距離感がちょうどよいのか。野生のヘビとじっくり向き合ったことがないので分かりません。できるだけ近くで見たい。そう思って、そろいそろりと近づいて行きました。
すると、ヘビは軽くトグロを巻き、首(どこからどこまでが首?)と顔をこちらに突き出しました。攻撃的な表情をしています。どうやら私を威嚇しているようです。
「カラスの次はニンゲンかよ」と思わせてしまったようで、申し訳ない。単純に観察したかっただけなのですが、そんなことをヘビに説明しても分かってもらえそうにはありません。そのまま観察していました。
ヘビは、トグロの状態からジャンプして飛びかかってきました。ちょっとばかし危ない。幸い、小さなヘビだったのでジャンプ力も大したことなく私にまでは届きませんでした。だいたいの射程範囲が分かったことで、むしろ安全に観察できる距離が明確になりました。
怖いもの見たさの好奇心でヘビを観察していたのですが、私の心の中に変化が起こりました。ヘビに威嚇された途端に、ヘビの感情が手に取るように見えた気がして、かえって怖さがなくなってしまった。私としては、ニョロニョロとどこかへ向かっていくヘビのほうが気味の悪さを感じます。何を考えてるのか分からん感じのほうが怖い、というのが私の思うところです。
何を考えてるのか分からない感じの怖さの代表格は虫でしょう。彼らはほんとうに何を考えるのか分かりません。何でそんな見た目をして、そんな妙な動きをしているのかも分からん。じっとしているかと思ったら、突然飛び出すし。そういう怖さってあると思うんです。
人間に置き換えたときにどうなるのでしょうか。あきらかに威嚇してくる人や感情が爆発している人というのは、やはり感情が透けて見えて怖さがまるで感じられません。怖くないと言っても、物理的な危険はあるのですが…。
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