Clubhouseは何かに似ていると思ったら、高校時代の昼休みだった
音声SNS「Clubhouse」が話題になっている。
私も招待していただき実際に使ってみた。2日ほど使用した感想を記す。
まぎれもなくSNS
Clubhouseは、リアルタイム音声チャット ✕ SNSだ。結論から言うと、ラジオ的とはあきらかに違う。ラジオやポッドキャストは比較的リスナーとの距離が近いメディアだと思うが、Clubhouseはさらに距離が近い感じがする。というか、まさにSNSだ。双方向性とかフラットさが強い印象を受けた。
基本的には気になるテーマのルームに入って(つくって)、しゃべる、聞く、フォローする、される、以上。って感じなんだが、ニュアンスを言葉で伝えるのはどうにも難しい。ソーシャルネットワーキングできそうな気配がすごいのである。
「音声版Twitter」などと言われたりもするみたいだが、言い得て妙である。Twitterに通ずるところはあるが、Twitterのタイムラインよりもはるかに温度感があり、ただ聞いているだけでもそこにいる人たちとの連帯感みたいなのが芽生えてくる(ような気がする)。
必然的に雑談めいてくる
ルームのテーマは、たとえば「深夜の音楽雑談」とか「福岡の人で話しましょう」とか「スマートシティについて考える」とか、重たいのから軽いのでまでさまざまある。ルームに入ってみると、スピーカーとリスナーがいる。スピーカーがしゃべっているのをリスナーが聞くという構図だ。スピーカーはリスナーを任意でスピーカーに変更することもできる。たとえば、3人で話していて、10人が聞いている。10人のうちの1人をスピーカーにすると、4人で話して9人が聞いているみたいな感じになる。これによって、たまたまルームに入った人がスピーカーになって会話が広がりを持つ。
企画ものの安定したトークよりも、必然的に雑談めいてくる。この有機的な感じがリアルで面白い。
工場か店頭か
ルームによっては全員でしゃべっていたりするものもあれば、3〜4人が喋っているのを1000人が聞いているようなものもある。前者は交流会で、後者はパネルディスカッションとかラジオを聞いているイメージ。
巷では、著名人のオフレコ風のナチュラルな会話が飛び交っていることを有難がっている人たちの声をよく見かけるが、そういう権威主義的な接し方に私は懐疑的である。
これはチョコレート工場に行くか、店でチョコレートを買うかの違いである。チョコレート工場には体験価値がある。チョコレートができる過程を見るワクワクや学びがそこにはある。
著名人のチョコレート工場を楽しめるのはチョコレートが好きな人である。チョコレートにそんなに興味がない人にとってはどうでもよい。店頭に並んだチョコレートのほうが価値が高いかもしれない。それこそ著名人の「役に立つ」話が聞きたいなら、ある程度企画された「番組」を見たほうがよい気もする。
著名人のルームに入って、遠目から聞いていても面白さが分からなかった。雑談めいて回りくどいので、時間がものすごくかかる。お客さん気分で時間を費やすなら、プロがつくった「番組」のほうが内容もまとまっているし聞きやすい。
YouTubeやポッドキャストなら倍速で聞けるし、一方向的なメディアとしてならYouTubeやPodcastに軍配が上がると私は思っている。
高校の昼休み
私が楽しさや可能性を見出したのは、知り合いがいるルームだった。知り合い何人かと名前だけ知っている人と名前も知らない人がルームにいて、会話が繰り広げられる。いろいろ話すうちに、お互いのことが知れる。それはTwitterでリプライを飛ばし合うような威力とは比較にならないほどの破壊力だ。
たとえるなら、高校時代の昼休みのような感じなのだ。
昼休み、いつもの友人と食堂に向かう途中、後輩の女子から「先輩!」と友人が声をかけられる。ちょっとみんなで雑談を交わし、後輩と顔見知りになる。
ひと段落して、外のベンチで休んでいると、部活のメンバーが話しかけてくる。そいつを友人に紹介する。何かみんな友だちみたいな空気になる。
こんな高校時代の昼休みの一コマのような軽快さ、離脱自由の爽やかさが現時点のClubhouseにはある。カジュアルに人と人が交わる感じ。
嫌いじゃない。いや、好きだ。
私はチョコレート工場より、高校の昼休み的に利用したいと思った。チョコレートは店頭で買う(番組を見る)ほうがよい。
これからどうなる
今はまだ初期のTwitterのような、感度の高い人たちであふれている。安心してチャレンジできる空気が全体に漂っている。誰もが、誰かれ構わずフォローし合いたいテンションでもある。しばらくはユートピアのような楽しい時間が続くだろう。
しかし、そう長くは続かない気もしている。
ここ最近は時代の流れが速い。1〜3年のうちにビジネス的に考えすぎる人たちとリテラシー低めのカモたちによって荒れていくのだろうなと思ったりする。
ビジネス的に考えることは悪いことではないが、ビジネス的に考えすぎるのはよくないことだろう。Clubhouseも例に漏れず、キャズムを越え、儲かり始めたところで、場としてはつまらなくなりそうな予感がする。遊び場から金のなる木になった頃だ。
遊び場が遊び場として機能しなくなるのは、いつだって邪な気持ちの大人たちのせいだ。運営側はまだしも、利用者は「マネタイズが〜」とかしょうもないことを考えてないで、純粋にソーシャルネットワーキングを楽しめばいいのに、と思う。
新しい遊び場ができて楽しみな一方、これから数年かけて荒んでいくのだろうなと思うと少し悲観的な自分がいる。
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