毅然とした態度で
ほぼ毎晩のようにClubhouseで自分のルーム「サイコパスの部屋」を開いている。
この部屋はいわゆる雑談部屋で、そこにいる人で話題がいかにようにも変わる。特徴としては、話題の幅が広く、かつ1つのテーマを割りとしっかり話し込む深さもあるところかなと思っている。
昨晩もサイコパスの部屋を開いていた。ハラスメントについてとか、外資系企業の実際とか、転職市場についてとか、愛知県のカルチャーとか、ビジネスアイデアの検討とか、友人とビジネスがこじれた悩み相談とか…振り幅のあるテーマで楽しいひとときを過ごしていた。
夜も更け、そろそろルームを閉じようとしたとき、それは起こった。
3人の刺客
新しくルームに入ってきた女性が挙手をした。別にめずらしいことではない。すぐにスピーカーに迎え入れた。
「はじめまして」
自己紹介を終える頃、今度は男性が挙手した。迎え入れてみる。
先に入った女性とこの男性は知り合いで、(話が本当ならば)マッチングアプリで知り合ったがまだ会ったことのない関係らしい。
ルームにいたみんなは、マッチングアプリで知り合った馴れ初めに興味を示し、話を聞かせてほしいと話を振った。
そのタイミングで、さらに別の男性が挙手をした。スピーカーに迎え入れる。プロフィールを見るに先の2人のフォロー、フォロワーであることが分かった。
すると最後に入ってきたその男性は「ぼくは彼らの知り合いです。ぼくが馴れ初めをお話します」と言った。
「ぜひお願いします」ということで、みんな耳を傾けた。
「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。ある日、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。すると川の上の方から、大きな桃が流れて来ました。おばあさんは喜んでその桃を拾い上げると、家に持ち帰りました。そしておじいさんが帰ると二人で桃を切って食べようとしました。すると自然に桃が割れ、中から小さな男の子が飛び出してきました。」
面白いと思ったのか、ギャグのつもりなのかその男性は桃太郎の物語を話し始めた。
もちろん、面白くない。スベっている。話を聞いてくれている人々の寿命を安易に奪っている。
音声だけとはいえ、みんながつまらなく感じているのがよく分かった。このルームで、他者と対話する気のない人間に用はないので私は即座に彼をリムーブした(強制退出させた)。
「話がまわりくどかったのでリムーブしました」
そう報告すると、先の2人も逃げるように退出した。
毅然とした態度で
誰かを部屋から追い出すことは、賛否あるだろう。
「荒らしや迷惑行為なら仕方ない」と誰もが思うかもしれないが、何をもって荒らしとするかに共通認識はない。
リムーブの基準やタイミングなど、リムーブにはセンスが問われる。
10人の人がいるとして、1人を追い出すとする。残りの9人はそれぞれ感想を抱く。「何もリムーブしなくても…」とか「よくやった」とか、そこに答えはない。個人が思いたいように思う。
リムーブせずに我慢するという手もあるが、間もなく場が機能しなくなる。何より、場にいるみんなに我慢を強いることになる。強権的にふるまうのはどうなのかという見方もあるし、責任者として迅速に対処すべきという見方もある。やはり考え方が分かれるところなので、「みんなに嫌われないように」なんてことは不可能なのだろう。
私のスタンスとしては、部屋の主として毅然とした態度で臨むことを大切にしている。雑談は水ものなので、スタンスとして一本筋を通しておかないとすぐに空気が崩壊してしまうのだ。
もしかすると桃太郎の向こう側に何かがあったのかもしれないし、本人たちに荒らす気などなかったかもしれない。
また、あまりにも判断が早すぎたという見方もできる。それぐらい食い気味で判断し、リムーブした。
正味1分程度の出来事だった。
免罪符
私の強権的なスタイルに、嫌がる人もいるかなと思ったが…案外そうでもなさそうだった。
よく考えると、サイコパスが開いているサイコパスの部屋でサイコパスがサイコパスを発揮したに過ぎない。看板に沿った、至って自然な行為だった。
冷静に人を切る。
それまでの対話において「どこがサイコパスなんですか。優しいじゃないですか」みたいな言われ方をしていたが、リムーブ事件によってむしろサイコパスの本領を発揮した。
「やっぱりサイコパスなんですね!」
何となくサイコパスと言っているだけのイロモノではく、本物のサイコパスが開いているサイコパスの部屋として認知された瞬間だった。
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