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愚人はルールを知らず、賢人はルールを熟知し、狂人はルールを作り変える

バンドマン時代は想像もしていなかったが、いただいた機会の中で挑戦していくうちに、今では組織づくりのコンサルティングをさせていただく機会が増えてきた。

私がこれまで読んできた本や、横目で眺めてきた企業、現場でコンサルティングしてきた一次情報から総合するに、100名未満の企業のほとんどが次のような問題を抱えている。

①「理念(何を目指すのか)」と「組織図(責任と権限の明文化)」と「業務(一人ひとりの活動)」の建て付けに整合性がない。 ②それらの溝や歪みを属人的に(多くの場合、気合いで)埋め合わせている。 ③それによって、コミュニケーションや業務が非効率になる。 ④生産性が上がらないため、経営計画との乖離が起こる。⑤焦り、心が乱れ、コミュニケーションや業務がさらに非効率になる。

なぜ、理念から業務まで一貫性がないのか。単に、それらの意味や意義を理解していないからだろう。

ちなみに、理念から業務まで一貫性があったとしても浸透させるのは無茶苦茶難しい。その理由は、いろんな人が集まっているからに他ならない。

ルールと人

組織づくりを考える上で、以下のことを頭に入れておくとよい。

愚人はルールを知らず、賢人はルールを熟知し、狂人はルールを作り変える

ここで読み間違ってはいけないのは「平社員はルールを知らず、管理職はルールを熟知し、経営者はルールを作り変える」と言っているわけではないということだ。つまり、役職は関係ない。

愚人はルールを知らず

愚人はルールをそもそも理解していない。

「給料が低くて」と嘆いている方がいたので、その会社の人事評価制度を見せてもらったら、明確に昇格の基準や給料の金額が書かれていた。ルールを理解していれば、社内的に給料が低いとか出世が遅いということはないわけで。あるとすれば、他社と比較して低いとか遅いということ。不満なら、愚痴ではなくルールを変えるよう働きかけるか、転職するほかないだろう。

高給取りを目指すにせよ、まずはルールありきである。愚人は、自社にいながら、自社の競技ルールを理解していない。サッカー部に所属しているのにオフサイドの意味がよく分かっていないのだ。

また、経営層が愚人の場合、トップマネジメントにありながら自分自身が自社のルールの意味を理解してなかったりする。そうした場合によくあるのが、理念と組織図と現場の建て付けがチグハグだったりすることだ。

そもそもの建て付けがおかしいと、現場はどうしようもない。現場がいかに生産性を高めようとがんばっても組織構造そのものがボトルネックになる。非効率であり続けるほかないのだ。また、がんばった分だけ理念から遠ざかってしまうような企業も中にはあるだろう。そのような組織構造の問題であるような場合にも、愚人は人の問題にしがちである。

手厳しいことばかり書いてしまったが、ルールについてのみ言えば、愚かと言わざるをえない。

ただし、それ以外のことではよいこともある。彼らは情に熱かったり、面倒見がよかったり、とても温かみがある場合が多い。文字(ルール)より感覚!パッション!ヒューマニティ!

賢人はルールを熟知する

賢人は、ルールをよく理解する。通称「ロジックお化け」である。

学校のテストで考えてもらえると分かりやすいだろう。テストで80〜100点ばかり取る人や95〜100点しか取らない人がいるとする。その人たちは、学校の評価基準の中では高く評価されるだろう。

会社でも同じで、社内の評価基準では高く評価される。そこで求められる80〜100点の振る舞いをできる。役割をきちんと認識し、責任を全うする。「組織」にとっては重宝される存在である

そんな賢人も、気をつけなければならないことが2つある。

1つ目は、コミュニケーション。80〜100点の理解を「当たり前」だと思ってコミュニケーションしてしまうことだ。愚人からすればルールすら理解していないのだから、賢人が当たり前に使っている言葉やルールを前提とした会話が理解できない。

「ジャストアイデアで申し訳ないんだけど、明日にリスケしてもらったテレカンあるじゃない?アジェンダに、A社の件追加しといてくれないかな?A社は高いシナジーが得られそうだから、早急にアライアンスを結ぶべきだと私は思ってるんだけど、まずその前に、部長のコンセンサスを得ないと動けないからさ。あ、あとプロジェクトが立ち上がったら君をアサインしようと思っているんだけど、どう思う?」

「…あ、(なんかよく分からないけど)ありがとうございます!」

コミュニケーションが成立しないことに対して、「どうして言っていることが伝わらないんだろう?」と考える。そこで「私の伝え方がよくないからだ」という結論に至り、ビジネス書やセミナーで学んでさらに新しい言葉を獲得し、さらにコミュニケーションしづらくなるというループに突入しがちである。セミナーに行くより、義務教育で習う言葉で伝えるほうが親切だと思うのだがどうだろうか。

2つ目は、既存のフレームで物事を捉えてしまうことだ。

テスト範囲は熟知しているので、100点は目指せる。でも、テスト範囲が無限の案件については、どうだろう。必殺の方程式が使えないかもしれない。フレームワークが役に立たない。自分の頭で、フレームの外側で思考しなければならない

解くべき問題が見つからないとき、急に役に立たなくなるのが賢人だ。賢人が自分で見つけてくる問題は、大体どこかの問題集に書かれてあるものだったりする。たくさんのフレームを持ってはいるが、いざフレームをつくろうと思うとうまくいかないものである。

狂人はルールをつくり変える

狂人は、ルールを理解するとかしないとかそういう次元で物事を捉えていない。

ルールはつくるもの。ルールに現状や理想がそぐわないなら、ルールをつくり変える。

構造そのものを書き換えるため、大きな変化が期待できる。理念、組織図(責任と権限の明文化)、業務がきちんと連動し、組織内に浸透することができれば大きな成果を得られるだろう。

一方で、ドラスティックにやり過ぎて反感を買うことも多いだろう。すぐに理解してくれるのは、ルールを熟知でき、なおかつ変化への耐性があるごく一部の賢人だけである。その他は、ルールを理解しつつ不満を持つ、ルールを理解できず不満を持つ者で溢れかえるだろう。

狂人は、つくり変えるという強いエネルギーは発揮できるが、愚人や賢人へ浸透させるといった地道なエネルギーの使い方が苦手である。

評価が真っ二つに割れやすいのが狂人だ。ひとつになるための施策が、むしろ深刻な分断を生むことも少なくない。

無機質な檻ではなく有機体

会社は「法人」というが、まさに人体のようである。人体の構造は、大変合理的にできている。会社組織もこれに見習うべきだと私は思う。

業務は各細胞の活動内容であり、組織図とは人体の構造であり、理念とは法人がいかように生きていきたいか、である。1つの人体として活動を成立させるために、細胞活動と人体構造と方向性が必要なのである。それがないと、どのような不具合があるのか人体を例に見てみよう。

(業務)「右手が動きません」「まぶたが痙攣します」

(組織図)「左手の指が2本しかありません」「おい、歩きたくないのに、右脚と左脚、勝手に動くな!」

(理念)「なんで、生きてるんだろう」「死にたい」

組織は無機質な檻ではなく、有機体である。法人という人体、その有機体を機能させる細胞たち。つまり、人。つまり、愚人細胞、賢人細胞、狂人細胞である。各細胞の特徴をよく理解し、それらをバランスさせなければ人体は機能しない。

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