知のセンス
自分のことを、または他者のことを「バカだな」と思うことがある。何をもってバカだと思っているのか。私にとってバカとは何なのか。
バカとは
これまで自分の中で定義されないまま、バカという言葉を運用してきた。説明のつかない「バカ」は、ただの悪口に聞こえてしまうだろう。何らかの評価であることには違いないが、私は決して悪態をつきたいのではない。
しかし、自分の中にある感覚としてだけの「バカ」では無責任というものだ。一般的に考えて、侮辱するような言葉であると考えるのが妥当だろうから。
相手が「バカにされている」と不機嫌になってしまったときに丁寧なフォローを加えることができない。それに、できれば「バカ」以外の言葉で表現することで、あからじめトラブルを回避したい。
さて、私が思うバカを考える前に、まずは国語辞典を引いてみる。
ばか 【馬鹿・▼莫▼迦】〔梵 moha(愚の意)の転か。もと僧侶の隠語。「馬鹿」は当て字〕
[一](名・形動)[文]ナリ
①知能の働きがにぶい・こと(さま)。そのような人をもいう。⇔利口。
②道理・常識からはずれていること。常軌を逸していること。また、そのさま。
③程度が並はずれているさま。度はずれているさま。
④役に立たないさま。機能を果たさないさま。
⑤特定の物事に熱中するあまり、社会常識などに欠けること。
⑥名詞・形容動詞・形容詞の上に付いて、接頭語的に用い、度はずれているさまの意を表す。
[二](感)
相手をののしったり、制止したりするとき発する言葉。(出典:大辞林)
こうして見ると、バカという言葉にはずいぶん意味の広がりがある。そりゃ誤解を招きやすいはずだ。
私が、自分や他者に対して「バカだな」と思うときの99%は【[一]①知能の働きがにぶいこと】の意味である(仕事などであれば、結果として【④役に立たないさま。機能を果たさないさま。】の意味が含まれることはあるが、あくまでそれは知能の働きがにぶいことに起因する)。
一方で、相手が不快感を露わにするときは【[二]相手をののしったり、制止したりするとき発する言葉。】として、捉えられてしまったときである。
私としては、本当にののしるつもりなど微塵もないのだが…。
知能の働きがにぶい
私の視点から見ると「知能の働きがにぶい」と言うより「バカ」と言ったほうが短く言いやすくキャッチーだから使っている。相手の視点から見ると「バカにされている」と思う。その上で、さらに私の視点から見ると、知能の働きがにぶいくせに「バカにされている」などと逆上しているあたりがまさにバカだなと思ってしまう。
すれ違い続ける悪循環。あらためて、知能の働きがにぶいことを「バカ」以外の言葉で表現することの必要性を感じる。
では、「バカ」から「知能の働きがにぶいこと」と言い換えたところで解決するのだろうか。知能の働きがにぶいと言われところで、結局は上から目線の嫌なヤツだと思う人は多いのではないか。
物事を的確に理解・判断できない
知能の働きがにぶいというのを、もう少し掘り下げてみたい。「知能」を辞書で引いてみる。
ち のう 【知能・▼智能】
①知識と才能。物事を的確に理解し判断する頭のはたらき。
②〘心〙学習し、抽象的な思考をし、環境に適応する知的機能のもとになっている能力。(出典:大辞林)
物事を的確に理解できず的確に判断できないことを、私は「知能の働きがにぶい」と感じている。そして、それを「バカ」と表現している。
物事を的確に理解できず的確に判断できないシーンなんて、誰にでもザラにあることではないか。別に上から目線でも何でもないだろう。「的確に理解し、判断するような頭の働きがにぶいよね」と言うより「バカ」と言ったほうが手っ取り早いから、つい「バカだな」と言ってしまうだけのことである。
では、それでよいのかといえば、もちろんそんなことはないだろう。「バカ」の意味の広がりからみても誤解が生じやすいことは辞書を引いて十分理解した。今後は用法容量を守って正しく運用する必要がある。
知のセンスがない
知能の働きがにぶいことを、「バカ」以外に私なりの言葉で言い換えるならば「知のセンスがないこと」と表現する。知がないのではなく、知の「センス」がないという感覚である。
「的確に理解し、判断するような頭の働きがにぶいこと(的確に理解できておらず、的確に判断できていないこと)」と「知能の働きがにぶいこと」と「知のセンスがないこと」と「バカ」は、私の中ですべて限りなくイコールに近いのであるが、どこまで行ってもふわふわしてしまう。ここに、どうしても言葉の限界を感じる。
であるならば、的確に理解・判断できていないことをどのように表現すればよいのか。それは言葉以外の何かなのか。そもそも何も表現するべきではないのか。第三者はそれとどう向き合えばよいのか。それとも、コミュニケーション可能な他者とみなさないことで手を打つべきか。
最近は「バカ」と言う代わりに、なるべく角が立たないような間を意識しながら「おや、頭がおかしいのかな」と表現するように心がけている。
別に、何の解決にもなっていない。
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