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それにもかかわらず

「それにもかかわらず」「それなのに」という接続詞を人々は多用している。言葉に出していなくとも、( )に挿入されているものも含むと膨大である。結論から言おう。

勝手に、接続するな。

行動変容

私は何度も注意してきた。それにもかかわらず、息子は全然宿題をしない。

私が勝手に注意を繰り返しただけだ。息子が宿題をするかどうかは、息子が決めることだろう。宿題をやる人間は言われなくてもやるし、宿題をやらない人間は言われてもやらない。やりたくなったらやるのが人間だ。

同じ遺伝子を持っていると、つい自分と子どもを接続詞でつないで自己都合を押し付けたくなるのかもしれない。

しかし、どこまで行っても注意したのは私の勝手で、宿題をするかしないかは息子の勝手だ。

こんなことを言うと、「あなたは子どもがいないにもかかわらず、よくそんなことが言えるね」と言われてしまいそうだ。「にもかかわらず」を多用しているのである。

愛情

私はあなたを愛してきた。それにもかかわらず、あなたは私を愛してくれない。

私が勝手にあなたを愛しただけだ。私が愛したくて愛している、以上

相手があなたを愛さなければならない義務などどこにもない。どうして勝手に相手と接続するんだろう。私とあなたが別の意思を持った生き物であることなど、ずいぶん若いうちに気づくものではないのか。

愛しい人との距離が縮まらないもどかしさは理解できる。愛する人に近づきたい。しかし、それはそれ、これはこれ。別の生き物なのである。

「私がこれだけのことをしたにもかからず、あなたは…」とマイナスの感情を爆発させている人をよく見かけるが、まったく関係のないものを勝手に接続詞でつないでいることにいいかげん気づいた方がよい

現実とのギャップを自らつくりだして、勝手に悶絶しているのだから、そういう趣味なのかなと思えてくる。もし、趣味でないのであれば、他者との関係性に「にもかかわらず」や「それなのに」という接続詞を一切用いない方がよいだろう

私はあなたを愛した。あなたは私を愛さなかった。

ただ、それだけのことだ。あなたが私を愛してくれないからという理由で愛が冷めてしまうのなら、それはそれでどうなんだろうとは思う

心と身体

ネコが大好きなのに、ネコアレルギー。

これは上の2つの例とは、少々事情が異なる。

先の例では、私の勝手な認識で、つながっていないはずの他者を勝手に接続して不満そうにしているというまったく滑稽な状況であった。

一方、「ネコが大好きなのにネコアレルギー」というのは、私の心と私の身体の矛盾である。これらは確かに接続しているではないか。もふもふしたいのに、もふもふしたらくしゃみや涙が止まらなくなる。これこそ、真の「にもかかわらず」である。

だからといって、「にもかかわらず」に甘んじていてもしょうがない。あれて接続しない。そういうマインドを持つことで、冷静に課題に対応することができる。

・ネコが大好き(心)
・ネコアレルギー(身体)

ネコに対し、身体は遠く心は近くあれば何も問題ない。ネコの動画、VR,グッズで欲求を満たせないだろうか。

いや、もふもふしないと気が済まないのかもしれない。であるなら、他のアレルギーの出ないもふもふできる動物はいないだろうか。

「ネコじゃないとダメなんだ!」ということであれば、その分ハードルは上がる。もっとも分かりやすいのは、アレルギーを無視してネコに突撃する。心のために、身体を犠牲にする。

そうは言っても、ネコにもふもふしながらアレルギーを避けるウルトラCだってないこともないだろう。乗り物酔いの薬のように、ネコアレルギーを防止する薬を開発するとか、もふもふしたネコ型ロボットを開発すればよい。何も自分でプロジェクトを立ち上げないにしても、プロジェクトに参加したり、支援したりすればよい。探せば、どこかにネコベンチャーとかありそうなものだ。

「いや、そこまでして…」というのなら、最初から「ネコが大好き。それにもかかわらずネコアレルギー」などと接続しない方がよい。わざわざ問題のように語り、苦悩する必要はない。

いちいち問題をつくりださないことだ。

ネガティブまたはお花畑

「にもかかわらず」には、2つの問題がある。1つは、多くの使用場面がネガティブまたはお花畑であること。もう1つは、問題が複雑化することだ。

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