
「言葉が好き」なあなたに聴いてほしい。BaseBallBearというバンドについて
本の一節や、曲の歌詞に、ハッとさせられることがよくある。
初めて見る言葉と出会い、その意味を調べ、「こんなにも綺麗な言葉が存在したのか」と感激することも少なくない。
一方で、簡単な言葉の羅列でもって、情景や心境をそのまま切り取ったかのように表現していることに、心底驚かされることもある。
なんと呼べばよいかわからずに「無題」で保存していた気持ちに、名前がついたような感覚になれるから、やっぱり言葉が好きだし、日本語が好きだ。
そして、私がBaseBallBearというバンドに恋して止まない理由もきっと、同じだと思う。
BaseBallBear(ベースボールベアー)は、メンバーが在籍していた高校の文化祭で初ライブを行い、その後バンド名の変更を経て20年以上のキャリアを築き上げてきたバンド。4人組バンドとし2006年にメジャーデビュー。2016年からは、小出祐介(Vo/G)、関根史織(B/Cho)、堀之内大介(Dr/Cho)のスリーピース編成で活動している。略称は「ベボベ」「BBB」。
唯一無二の、詩的な歌詞
「ベボベが好き」と言うと、私と同じアラサ―世代からは「懐かしいね」と言われることが多い。
学生時代に、よくアニメやCMのタイアップで耳にしていたイメージが強いようだ。「昔の曲は何曲か知ってるよ」という人もいるかもしれない。
2007年にリリースされた「ドラマチック」は、TVアニメ「おおきく振りかぶって」の第一期OPテーマとなった楽曲。
2009年にリリースされた「Stairway Generation」は、TVアニメ「銀魂」のOPテーマとなった楽曲。
爽やかなメロディーとキャッチ―なサビのフレーズが、青春時代の一幕と相まって、濃く記憶に残っているのも頷ける。
さて、私が思うBaseBallBearの最大の魅力は、小出祐介氏が生み出す、その歌詞にある。
唯一無二の叙情的な表現で彩られた楽曲は、色や形が様々な宝石のようで、一つ一つ大切に飾っておきたくなるようなものばかりだ。
「言葉が好き」なあなたにこそ、どうか届いてほしい。小説のページをめくるような気持ちで、歌詞を見ながら聴いてみてほしいのだ。
みずみずしい、恋を歌った言葉たち
数多くの楽曲の中でも、「恋」について歌った歌詞は秀逸である。
記憶の奥にしまいこんでいた、キラキラとしてどこか懐かしい感情が、一気に駆け巡る体験をさせてくれる。
景色や季節や見える世界すべてが乱反射して、眩しいけど心地よい。そんな曲をいくつかご紹介したい。
「初恋」
2012年にリリースされた2ndミニアルバム「初恋」に収録されており、アニメ映画「図書館戦争 革命のつばさ」の主題歌にもなったこの曲。
恋をしたことがあるなら誰しも身に覚えがあるような、世界が色づくような感覚をまっすぐ歌っている。
僕の想像力なんて君は
水たまりを避けるように
飛び越えてしまう
「君」の存在が、自分と世界のすべてを簡単に変えてしまうほど、圧倒的であることが伝わってくる。
初恋のようさ
僕が見てる世界は今日も
君色二万色で
夏祭りのような切なさじゃない
明日の君に
憧れ続けていくから
刹那的な高まりではなく、明日もその先もずっと、「君」なしでは考えられないという気持ちが綴られている。そしてその初めての確信こそが、「初恋」のようだと歌っているのである。
「不思議な夜」
2015年にリリースされたシングル。少し大人の気配がしながらも、それでいて甘酸っぱくキュンとする感情が散りばめられている楽曲。
はしゃぎながら
軽く汗ばんでる首筋に
へばりついた君の髪を
初夏の風がはがしたのを見た
風が吹いた一瞬の出来事をスローモーションに描いている、1番サビ前のフレーズ。
明言せずとも「君」のことを綺麗だと感じていることがわかる歌詞。ゴクリと唾を飲みながら「君」に目を奪われている様子が体温ごと伝わってくる。
不思議な夜がもうすぐ明けてくよ
都会と空と海が混ざる
青と紅茶色
終盤の落ちサビ。夜明け前の景色を「紅茶色」と表現している。初めて聞いたのに、どんな色か想像できてしまうし、一度聴いたら「紅茶色」以上にぴったりな表現はないのではないかと思えてくる。
「海になりたいPart3」
バンド結成20周年イヤーであった2022年にリリースした楽曲。永遠の片思いをする男の子と、永遠に音楽を追求する小出氏自身を重ねて書かれた曲。
”間に合ってよかった”
微笑んだその瞳に
光が漉されるみたいな甘い痛みが
10代の頃に感じた、胸がぎゅっとなるような、嬉しいような、もどかしいような、苦しいような感覚を「光が漉されるような甘い痛み」と歌っている。
好きな人を前にした時の、あの胸の痛みを、こんなにも思い起こさせる表現に今まで出会ったことがない。
人生の青春を歌い続けてくれるバンド
もちろん歌詞以外にも、オリジナリティあふれるサウンドや、ベースの関根氏による心地よいコーラスなど、このバンドの魅力は、一要素では語り尽くせない。
そして、私たちが大人になる歩みに比例するように、彼らが扱うテーマも、爽やかさ100%の青春から、広義の青春へと移行し続けている。
直近にリリースされたEP「天使だったじゃないか」では、生きる中で感じるさみしさや、それでもひたむきに生活することで時折触れる、愛について歌っている。
戻りたくても戻れない「あの頃」を思い出したり、ふと当たり前を噛みしめたりする日常。そんな、なんてことない日々の一場面に寄り添ってくれるフレーズが、きっと見つかるはず。
このnoteをきっかけに、少しでもBaseBallBearの楽曲に興味を持ってくれた人がいれば嬉しい。