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アフターコロナでサラリーマン事業承継は変わるのか 〜1.視点を変えましょう〜

■本質は変わりませんが、視点を変えましょう

 緊急事態宣言が解除され、わずかずつではありますが、日常が戻ろうとしています。しかし、日本中の自粛ムードの影響を受け、倒産件数が増加しており、今後もこのような状況は長期間続くことが予想されます。

 従来の事業承継問題で語られていた、経営者の方の年齢的な要素だけでなく、コロナの対応に疲弊した結果、リタイアする経営者の方も多くなると考えられます。これを機に、事業承継問題も以前より一層クローズアップされ、買い手として名乗りをあげようとする方も増えてくるのではないでしょうか。

■実は以前にも似た話が……

実はこの記事を書いている一年前、すでに「今後は大倒産時代がやってくる」(当時はオリンピック後の景気低迷の影響)と言われており、下記の本のように「小さな会社を買って、オーナーになろう」ということがさかんに言われておりました。


 この記事や他の承継に関する記事をご覧になった方は、これらの本を読んだことがあるのではないでしょうか。そして、転職や起業以外にこういう選択肢があると知った方も少なくないと思います。事業承継を全く知らない方が「事業承継問題を知っておく」という点で読むのはアリです。
 私自身、このような本があったからこそ、事業承継案件に買い手として携わった経験を経て、現在は事業承継士に認定され、こうして記事を書くにいたります。その点では、この著者の方々に大変感謝しているわけですが、残念ながらレビューにあるとおり、これらの本で描かれている「優良な中小企業を承継(買収)し、オーナーになって年収をあげよう」という内容と実際の承継案件は異なることが多いのです。
 勇んで取り組んだものの、現実とのギャップに落胆した人もいらっしゃるかと思います。『中小企業』を『不動産』、『承継』を『購入』と変換すると、少し前に流行った『サラリーマン大家』と謳い文句が酷似します。

 でも、中小企業の後継者不足問題は変わりません。
 不動産と違い、不労所得を得ることは難しいかもしれませんが『自分のビジネスを展開して、地域に貢献したい』という志のある方にチャンスはあります。少し視点を変えて、改めてチャレンジしてみませんか?

■視点① 『買う承継』か『継ぐ承継』か、考えましょう

 前述の本やネットでよく見られるのは「ネットで会社が売り買いされている、眺めているだけでも発見がある」ということ。確かに間違いでないし、私もwebのM&Aサイトは時折見ています。
 しかし、実際に案件に携わると、事業承継問題は『買う承継』と『継ぐ承継』が一緒に語られており、事業承継問題に関わる売り手と買い手の認識違いが発生しやすい、と感じています。これから事業承継を志す方は、その点を踏まえて情報収集しましょう。

 『買う承継』と『継ぐ承継』は、ざっくり分けて下記の特徴があります。

 ◯買う承継
  ・ビジネスの仕組みは揃っているが、売上と利益実績はほとんどない
  ・事業期間が3年未満で、承継出来るノウハウが少ない
  ・譲渡価格が少額(数百万)
  ・売却条件内容が事業継続に影響することが少ない
  ・ネットのM&Aサイトで掲載されている案件が多い

 ◯継ぐ承継
  ・ビジネスの仕組みと売上利益の実績があり、買い手に提示できる
  ・事業期間が5年以上で、ノウハウを持った関係者が存在している
  ・譲渡価格が高額(1000万以上)
  ・売却条件内容が事業継続に影響することが多い
  ・事業承継センターなど、仲介機関の保有案件が多い

いかがでしょうか。詳細は次回以降でお話するとして、何となくイメージ出来れば大丈夫です。

 買うにしても継ぐにしても、サラリーマンの年収や貯蓄を考えれば、安易な副業として出来るものではありません。ましてや不動産投資のように『付加価値をつけて高額で売却』ということを考えてる方は承継よりも別の投資方法を検討されることをオススメします。
 実際にお会いした売り手さんの中には「不動産投資で収入があるので、これはビジネスの勉強みたいなもんです。この案件だけで副業収入と考えているようであれば、オススメしませんよ」と言い切った方もいらっしゃいました。
 また、私がお会いした仲介機関の方は、前述の本をリトマス紙にしているそうです。まず最初のコンタクトで、本を読んで問い合わせたか聞いて、読んでいたら要注意、場合によっては登録を断ることにしているそうです。理由は『売却益を得る目的で承継しようとする人がいるから』ということでした。仲介機関の方には『後継者に引き継いで、上手く地域の活性化につなげてほしい』という願いがあります。
 売り手さんと買い手を引き合わせるために、ご自身の休日返上で調整して遠方まで出張って頂いたり、他の提携している仲介機関を快くご紹介するような熱意のある方たちです。売り手の内情も熟知しています。当然、経営だって甘いものではありませんし、簡単に売却できるものではないことも十分認識しているのです。
 また、売り手の立場で想像すれば、自分で手に塩かけた事業を全くの第三者に譲渡するのですから、書類に出ない(出さない)事情もあるのです。

■次回は『買う承継』を少し踏み込んでお話しますね

 いかがでしょうか。事業承継は関係者の方の想いが詰まった魅力的なことであると同時に、安易な思いで着手するとご自身ばかりでなく、関係者の方にも多大な影響があります。
 ただし、サラリーマン事業承継は始まったばかりで、情報が少ないのもまた事実です。今後の記事では、マガジンには書かれていない案件経験を踏まえて、考えを書いていきます。あなたの人生の選択肢の一助になっていけば幸いです。

記事のお問い合わせ、サラリーマン事業承継のご相談はこちら
jsyokei.y.tukada@gmail.com

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塚田裕介
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