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炊飯の常識を疑う

Youtubeでお米の研ぎ方をアップしました。

今回は3本目の動画で「お米のとぎ方」は、私のYoutube動画を見る人には多少食傷気味だと思いますが、しかし、お米の美味しさを伝える上での大前提なのでしつこく取り組んでいます。

今回伝えたかったこと。

・実はとぎ方はさほど重要なことではなく、最後のゆすぎだけきちんとすればお米は美味しく炊けること。

・最初のゆすぎ水は水道水で十分だ、ということ。

いろいろな人が、お米をゆすぐときの動作として、始めにお米を水に漬けるときは(始めのゆすぎ)、お米が急激に水を吸収するので浄水器の水やミネラルウォーターなどを使うべき、と言っています。始めの水がお米の味を決めるんだ、とそのように言っている人もいます。

これがずっと疑問でした。

そこで今回のYoutubeではそれを確かめる多少の実験・・・というにはおこがましいですが、試しごとを行っています。

・食紅で色をつけた水にお米を浸すと紅くなるのか?

・水が染みこみにくい構造になっている玄米と、比べて染みこみやすい精白米のとぎ始めと終わりを比べて差はあるのか、ということを試しています。

結論からいうと、始めの水はそれほど重要ではありません。ミネラルウォーターがもったいないだけです。

目崎らは浸漬に伴う精白米水分の変化を計測し(下記引用*1)

実測による水分増加曲線では、浸漬15秒後に水分は急上昇したが、その後45秒まで一定値を示した。このことは、浸漬直後の水分測定が付着水を計測していることを示している。これより、浸漬300秒の実測値は(中略)、原料からの水分増加はそれぞれ(コシヒカリ)2.3%、(きらら397)2.6%を示し〜(引用 *1)

としています。

スクリーンショット 2020-06-12 10.28.40

また、300秒間浸漬の顕微鏡写真では、

スクリーンショット 2020-06-12 10.33.48

上記、図写真ともに参考文献(*1)を参照

たしかに水がお米に染みこんでいる=吸水しているのは顕微鏡写真で確認できますが、300秒後(5分後)に至ってまだお米の表層部分です。

また、動画の中で、洗米した後に水切りをしてお米の重量を測っていますが、玄米も精白米もともに1割程度の増加です。これはお米表面に付着している水を測っているだけと考えられます。もし、精白米が水を急激に吸収するのなら、精白米>玄米、精白米の方が重量は重たくなるはずです。

試してみました。

ゆめぴりか玄米 300g⇒330g

ななつぼし精白米 300g⇒324g

ゆめぴりか精白米 300g⇒328g

つや姫精白米 300g⇒326g

(上記全て洗米直後、ザルで水切り15秒後、洗米時間約120秒)

また、米に付着した水分が2合(300g)を2.3倍の水加減で炊飯したときの影響。

300g×2.3倍=690g(=米+水)

(仮に)付着水30gとすると、30g÷690g=4.35%

付着水の影響はごはん重量の4%~5%程度です。

この水分量がごはんの食味に重大な影響を及ぼすのでしょうか?

つまり、いろいろな人が洗米方法で語る「とぎ始めの水はとても重要」というのは、いまの段階では少し違うと思わざるを得ません。

私の反省を含めて米屋や料理家の方たちは、炊飯方法を厳しく伝えすぎだと思います。こうやっちゃいけない、ああやっちゃダメだと。

本当はすごくシンプルで簡単で、私の経験で、我が家の子どもたちが5〜6歳のときにおうちの手伝いでお米とぎをさせていました。そのときの子どもの方が肩に力が入らず(入りようもない)、軽い手回しにも関わらずピカピカの美味しいごはんが炊けました。このときに、洗米はそんなに難しいことではないと感じ、今に至ります。

今回のYoutubeではそれを伝えたくて動画を作成しています。

ただし、もしこれをご覧の研究者、専門家の方から、それは違うよ、ということがあればぜひご指導ください。一論文で全てを語るつもりはありませんが、明日、上記見解を覆すような論文が発表されれば、またそれを反証するような論文、事実と検証があれば、それはすぐに訂正いたします。私は米屋で研究者ではないですが、科学とはそういうものだ、と聞いております。

最後までお読み頂きありがとうございます。

参考文献

(*1)目崎・佐竹・福森・池田 , 米粒への水の吸収と移動に関する基礎的研究(第2報), 農業機械学会誌 68(3) : 35~45, 2006



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