北海道から牛乳を運ぶ船④
前回からのブログからの続きです。
前回は西日本向けの船と航路についてでした。今回は短距離・中距離フェリーを使った北海道から牛乳を運ぶ船について紹介します。北海道から北東北・青森県と秋田県を結ぶ航路があります。なお下記パンフには記載されていません。牛乳輸送だけでなく、生活に欠かせない郵便や宅配便にも関係する内容となっています。
①シルバーフェリー/苫小牧西港・室蘭港(北海道)ー八戸港(青森県)
現在5隻のフェリーで苫小牧西港ー八戸港(以下苫小牧便)を4隻で4往復、室蘭港ー八戸港(同室蘭便)を1隻で1往復しています。最初室蘭便は宮古(岩手県)まで運航していましたが、宮古周辺の道路事情が悪くトラック利用が伸びませんでした。
札幌周辺や道東、道北からの貨物は苫小牧が近くて有利なので、シルバーフェリー(写真はシルバーエイト・ホームページより借用)の主軸は苫小牧便。室蘭は道南や後志地方に近い事を武器に利用促進しています。牛乳輸送も苫小牧便が中心。シルバーフェリーの苫小牧便4往復にはタンクローリーの乗船はわずかですが、パック牛乳は多めです。
シルバーフェリーにパック牛乳を積んだトラックが多いのは、a.途中東北地方で降ろしながら関東や西日本、b.なるべく陸を走る事で速く目的地へ、というニーズがあるから。朝から昼までに出来たパック牛乳だけではなく、夜中に出来る製品もあります。夜中に出来た牛乳を早く消費地へ運ぶ事を望む大型小売店などは多いです。
苫小牧便4往復のうち、車がない旅客なら滅多に乗らないのが現在「べにりあ」が運航するダイヤ。八戸発17:00→苫小牧西港01:30、苫小牧西港05:00→八戸着13:00です。未明1時半に苫小牧着、早朝5時に苫小牧発は車が無ければ利用しにくいけど、実は急ぎの貨物を運航するには最高のダイヤ。べにりあには牛乳のほか、宅配便や郵便のトラックも多く乗船しています。
宅配便や郵便はなるべく遅くまで、また広い範囲の荷物をまとめて発送したい貨物。朝5時なら朝3時までに札幌や苫小牧に集まった急ぎの貨物を出す事が出来ます。朝3時なら稚内や根室を夕方に出発しても大丈夫。実は鮮度が命の一部牛乳も同じです。北海道から本州主要都市に翌々日配達を守るにはこのダイヤは外せません。シルバーフェリーでも難しい場合は次の函館ー青森利用となります。
②津軽海峡フェリー/函館港(北海道)ー青森港&大間港(青森県)
津軽海峡フェリーは北海道南部の都市・函館と本州最北端の県・青森を結ぶ便が24時間体制・4隻で運航。旅客が利用しやすいフェリー(写真はブルールミナス)で航海時間は3時間40分。他に青森県下北半島北部の住民の生活航路として、大函丸というフェリーが函館ー大間で運航されています。下北半島北部の場合、青森や八戸よりもフェリーで函館の方が近いからです。
北海道の酪農は道北や道東が主要ですが、函館に近い道南でも行われています。また函館市内には乳業メーカーが2社。関東や関西へ運ぶのにわざわざ苫小牧、室蘭、小樽へ運ぶのは面倒です。道南のパック牛乳はほとんど函館ー青森のフェリーで運ばれ、青森から各地へ走っています。更に道央・道北・道東からの牛乳をなるべく船に載せず走って急ぎたい場合、利用するしかありません。
③青函フェリー/函館港ー青森港
函館ー青森間は津軽海峡フェリーの他に青函フェリーも運航。就航当初はトラックドライバー向けの客室ばかりでしたが、近年は旅客利用にも力を入れ、一番新しい「はやぶさ」では津軽海峡フェリーの船内を意識した客室も登場しています。青森港の岸壁は津軽海峡フェリーと一部共通ですが、函館港は港の入口より奥にある、函館市中心部に近い岸壁を使用。そのため航海時間は3時間50分と津軽海峡フェリーより10分長くなっています。
青森港の岸壁利用が重ならないダイヤにしていますが、それ以外は津軽海峡フェリーと同じ土俵で競争。つまり同じ牛乳輸送でもトラック会社により、また船の車両スペースの空き具合によっては近い時間帯の船と取り合いになります。津軽海峡に自動車用トンネルが出来ない限り、津軽海峡フェリーと青函フェリーは安定した牛乳輸送を担う会社といえます。
④新日本海フェリー(北海道・苫小牧東港ー秋田港)
苫小牧東ー秋田ー新潟(ー敦賀)で運航(写真はネットより)。苫小牧東ー秋田を10~12時間で結び、苫小牧東発は夕方、秋田発は早朝なので、シルバーフェリーの同じ時間帯の便と競合します。秋田より先の日本海側を経由して関東・甲信越・西日本に運ぶパック牛乳の輸送で多く利用されています。タンクローリーも乗船しますがわずか。トラックドライバーには航海時間が10時間で船内でゆっくり休憩出来るので、シルバーフェリーより好きな人も多いです。
ここまでご覧くださり、ありがとうございました。次回はパック牛乳を運ぶトラックについて取り上げます。