北海道から牛乳を運ぶ船⑤
前回のブログからの続きです。
①でタンクローリー、②、③、④で実際に運ぶ船について紹介しました。
今回は主にパック牛乳、更に冷蔵が必要な乳製品輸送で使う車両について書きます。
Ⅰトレーラーと単車について
記事①で取り上げた写真です。冷蔵輸送で使用するトラックには、トラクターヘッドが後ろの車両(シャーシなどと言います)をけん引する方式、
運転台と積載スペースが一体のトラック(単車ともいいます・写真はネットより借用)の大きく分けて2種類あります。パック牛乳を運ぶトラックで出発地から目的地まで一人のドライバーが運転するのはほとんどが単車。北海道から道外へ、また逆の場合はドライバーが船に乗ります。
トレーラーはけん引したまま運転手が船に乗って目的地まで運ぶ方式もあります。しかし荷物はシャーシに積まれていますし、途中でトラクターヘッドを切り離したり連結をすれば、交代で運行可能。船の中では写真の様に切り離してドライバーが乗らないやり方が出来ます。これをヘッドレス方式といいます。長距離フェリーやRO-RO船の場合、ヘッドレス方式での輸送が中心です。
つまり、A.北海道の出発地から北海道の港にフェリーに乗せるまでのドライバーとトラクターヘッド、B.本州の港でフェリーから降ろして目的地へ運ぶドライバーとトラクターヘッドを用意出来れば、ドライバーが船に乗らなくてもいいので実は経済的です。
Ⅱ保冷輸送にはトラックにある冷凍機を動かす
単車やトレーラーの床下に上の写真のような機器が付いたものがあります。車両によっては床下でなく、積載スペースの前側に付いている場合も。この機器がいわゆる冷凍機と呼ばれるものです。家庭や工場にある冷凍庫・冷蔵庫の機能に、発電機がセット。つまり発電して積載スペースを冷凍・冷蔵庫に出来る車両なのです。発電のために軽油などのタンクも別の場所にあります。
電源車両付きトラックは陸上の駐車場や道路を走っている最中なら、排気ガスを出しながら保温する事にほとんど問題ありません。ところが船の車両積載スペースの場合、高い波などから車両を守るため覆う必要があります。でも保冷のためにエンジンを回すと、積載スペースが排気ガスで充満してガス室になってしまいます。排気ガスを出さない方法で保冷して運ぶ必要があります。
トラックが積める船の壁や柱(ピラーといいます)には、写真のような電源BOXが設置されています。保冷に電気が必要ですが、船から電気を供給すれば可能。実はトラックの冷凍機にも電源コードを差し込めるコンセントが付いています。船の電源BOXとトラックの電源を接続し、安全に通電すれば船に載せている間でも保冷が可能です。
Ⅲ2015年の商船三井フェリーさんふらわあだいせつの火災事故について
2015年夏、北海道・苫小牧沖で商船三井フェリー「さんふらわあだいせつ」が火災事故(写真・ネットより借用)を起こして全国で報道されました。船員(二等航海士)1人が亡くなり、残りの乗客と船員は周辺の船や海上保安庁に救助。火災は車両積載スペースにあったトラックの冷凍機から火が出た事が原因です。
冷凍機は自分で発電し、保冷するので、機器をちゃんと整備していないとこのような恐ろしい事故の原因になります。人的被害は船員1人死亡だけですが、フェリーに積んでいた荷物や車両は当然パーになりました。火災後室蘭港へえい航され、積まれていた車両を降ろしているところを私は見に行きましたが、一部は焼け焦げ、言葉になりませんでした。
当時は海運会社にいましたが、会社の命令でなく休みを利用して見に行きました。実はさんふらわあだいせつを救助した周辺の船に、私の家族が乗船。当時本州にいた姪や甥でした。ところが救助したため、到着は予定より遅れてリズムが崩れ、姪が風邪をこじらせます。私は休みに姪や甥と遊ぶ事を楽しみにしていたのですが、姪を病院に連れて看病するだけで休みが終わりました。そんな目に遭ったら他の社員より事故を忘れる訳ないでしょう。
ここまでご覧くださり、ありがとうございました。