嫌いになりかけていたイギリスから再び憧れの英国へ。そんな魔法をかけられる場所 GREAT DIXTER HOUSE &GARDENS グレート・デクスター・ハウス&ガーデン
憧れ、それは生きる原動力。
イギリスもうイヤ!となってしまったら
ずっと曇り、もしくは雨。青空ってどんな色だっけ?
1月から12月までスーパーに並び続ける同じ種類の野菜たち。食べ物で季節を感じるという喜びさえないこの国に住むことが嫌になることがあります。たいていそれは冬も終わりの3月頃。
しみじみと春夏秋冬を感じたいと渇望して迎える5月6月のガーデンは、まさに救世主。梅、山吹、桜と時期を追って咲く花で日本の春の移り変わりを楽しめるように、イギリスの季節も花が教えてくれるのです。時間の流れは花と共にあるイギリス。さあ出かけるぞ!
イーストサセックスにある「Great Dixter House & Garden」は、その名の通りガーデンだけでなく、素敵なお家まで見学できるスペシャルな場所。青空の広がる6月の週末に訪れてみました。
Great Dixter House & Gardenとは
ここは有名なガーデナーおよびライターであったクリストファー・ロイドさんのお家でした。2006年に彼が亡くなった後も、Great Dixter Charitable Trust (グレートディクスター・チャリティー協会)がこの場所をしっかりと守っているそうです。
チケットを買って中に入るとこんな可愛らしい花が一面に咲いています。
イギリスの蘭だそう。こんなに群生しているのは初めてみました。
チケット売り場でもらったパンフレットに面白いことが書いてありました。Biodiversity(生物多様性)の項目で、
『2017年にBiodiversity audit (生物多様性監査、つまりどんな植物があるのか情報を集めること)を行なって、この場所には2000以上の植物種があることがわかった。それにより、観賞用(Ornamental)として作られたこのガーデンも正しく手入れをすれば(原文はif managed correctly)、生物多様性に貢献できるのだ』
とあります。
つまり観賞を目的とした装飾的な「庭=人工的な自然」も「自然」と共存できるのだということでしょうか。
イギリスの蘭が揺れる小道はそれを証明しているようでした。
まずは腹ごしらえといきましょう。
ガーデンに到着したの11時過ぎだったので、イギリス人のいう「イレブンジーズ」(11時過ぎくらいのおやつの時間)を取ろうとカフェへ行きました。
木製のベンチとその屋根が、ホビットのお家みたいです。カフェのメニューも「グリルした野菜とフムスを挟んだフォッカッチャ」のような美味しそうなメニューが並んでいます。
注文のために並んでいると、後ろからはフランス語が聞こえてきます。フランス人の方の観光ツアーのようです。イギリスのガーデンは大陸からの観光ツアーのバスをよく見かけます。
食通のフランス人はこんな時どんなものを頼むのかとちょっと気になりますね。
最初はケーキとお茶だけのつもりが、グリル野菜のフォッカッチャが美味しそうで追加したら、一緒に来ていた友人も「それじゃあ私も、キッシュ」「私はクロワッサンサンド」と追加の追加。
イレブンジーズではなくて早めのランチとなってしまいました。
付け合わせのサラダが新鮮でボリュームもたっぷり。2種のパプリカ、玉ねぎ、なす、そしてスイートポテトのグリルを挟んだフォッカッチャも美味しい。
後ろのフランス人さんたちも美味しそうに召し上がっていらっしゃいました。
戦死者の象徴ポピー
お腹が満たされた後、早速庭をめぐります。目に飛び込んできたのは、色鮮やかに風に揺れるポピーたち。
赤いポピーはイギリスでは第一次大戦での戦没者たちの象徴。元々はナポレオン戦争で荒廃した戦場で、戦死者たちの遺体の周りに赤いポピーが咲いたという話から、戦争と赤いポピーは結びつけられるようになったそう。確かにこの赤は戦争で流された血を連想させます。
ハウス見学
少し暑くなったので、ハウスを見学することに。
ここは15世紀半ばに建てられた家が、1910年から改築、増築されてきました。中はここに住んでいたクリストファー・ロイドの両親、ネイサンとデイジーによってインテリアを施されています。
中に入って目につくのは、あちらこちらに置かれた焼き物。
この焼き物はAldermaston Pottery(1960sー2006)のAlan Caiger-Smith (アラン)という作家の作品のようです。2015年にアランは300もの作品をこちらに寄付したそう。
造形自体は素朴なのに、大胆な色使いと構図が目をひきます。ちょっと民芸調ぽくて、懐かしさすら感じます。
器の他に、クロスステッチされた手作りっぽいクッションなども。これはデイジーさんやその家族が刺繍したもの。
窓の外は突き抜ける青空。その明るい窓辺で一心不乱に針仕事。疲れて手を休め、目を上げればポピーが揺れる庭。
ああ、羨ましい。私が本や映画で憧れた英国。
どんなに現実がひどくても、「憧れ」という不思議な魔法は、これからまたここで頑張ろうという、根拠のない、でも力強いエネルギーをくれたりするのです。
私の夢
最後に私の憧れは一つの具体的な「夢」となります。
それはこれ。
私はこんなワークスペースが欲しい。
こんな場所で、庭でとった花をいけ、ドライフラワーを吊るし、針仕事に精を出し、美味しい抹茶をたてて飲む。
私の好きが全部叶うこんな場所が欲しいわあ。
帰り道のドライブは、イギリス夢物語で大盛りしたのでした。
今日もいい花が摘めました。carpe diem.
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