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のりたま物語 ハカセ師匠とのりたまくん 第四話 浅草煮込み

この物語は、フィクションです。

登場人物

ハカセ師匠 …   藝人、漫才師、のりたまくんの師匠

のりたまくん …   ハカセ師匠の弟子


のりたま「師匠。おはようございます。」

ハカセ「ふぃー。おはようございます。のりたまくん。し、師匠は、ちょっと くすばいー から、『ハカセ』でいいですよ。」

のりたま「そうでしたね。失礼しました!あのさぁ、ハカセさぁ…。」

ハカセ「失礼しましたね。はーい!ストーップ!のりたまくん、そこに正座してください。」

のりたま「はい!」

ハカセ「あのね。『ハカセでいいですよ。』は、『タメ口でいいですよ』の、やる気スイッチではありません。」

のりたま「!?マジで!?マジで!?マジで!?」

ハカセ「やめて。やめて。やめて。それをやめてって言ってますよ。今のをタメ口といいます!最初の頃はできてたじゃない?その頃を思い出して!」

のりたま「最初の頃………ん?こんな感じでしょうか?」

ハカセ「ふふ。あぁ。しまった。ちょっとシャクれるんだったぁー!ふふ。ごめんなさい。やっぱり思い出さないでいいです。ふふ。」

のりたま「はぁ。まったくぅ。ハカセったら、どっちつかずなんだから!」

ハカセ「むっず!こんなに難しいのかぁー。よし、切り替えていこう!」

のりたま「はい!ところで、今日は銭湯の前に、どこか別のところに行きませんか?」

ハカセ「え?どこに行くの?」

のりたま「場所はまだ決めていないのですが。  ハカセの思い出の話しなど聞けたら嬉しいなぁって思って。」

ハカセ「なるほどね。そうねぇ…じゃあ…浅草に行こうか。おもしろいところなんだよ。それに……。」

のりたま「…それに?」

ハカセ「藝人の…血と汗と涙が沁み込んだ町…だな。」

のりたま「…そうですか…。ちょっと消臭スプレーとマスク持ってきます。」

ハカセ「おーい!おい!おい!おーい!失礼だぞー!」

のりたま「なんか臭そうなんで。」

ハカセ「違う!違う!例え話よ!よく言うじゃない!思い出が詰まったカセットテープぅーとか。あれ、実際は音楽とかラジオだよね?詰まってんの。思い出じゃないでしょ?」

のりたま「あー。そのパターンでカッコつけてたんですねー!」

ハカセ「おーい!おい!おい!のりたまくん!ちょっとそこに正座しなさい!」

のりたま「はい!」

ハカセ「いいかい?今から人生で最も大事なことを伝える。」

のりたま「ありがとうございます!」

ハカセ「たった今、カッコつけた人に、『カッコつけたんですね』と言ってはいけません!恥ずかしいでしょ!」

のりたま「!!!確かにそうですね!!!」

ハカセ「分かってくれて、嬉しいよ。では、浅草に行こうか。」

のりたま「はい!」

ガタンゴトン ガタンゴトン
浅草橋ぃ〜

ハカセ「着いた。着いた。懐かしいな。」

のりたま「おぉー。歴史を感じますね。」

ハカセ「そうでしょ。色んな藝人さんの写真が街灯に付いていて、藝人の街って感じがするでしょ。」

のりたま「なんだか。緊張しますね。」

ハカセ「まぁまぁ、ちょっと何か食べる?美味しいモツ煮食べようよ。」

のりたま「いいですね。」

ハカセ「ここ、ここ。鯨屋って言ってね。ここでモツ煮を食べよう。大将!モツ煮をお願いします。」

大将「ハカセ、久しぶりだねー。心配してたんだよ〜。少しは元気になったのか?」

ハカセ「はい。だんだんと。元気になってきてます!今日は、こうして鯨屋に来れましたしね!」

大将「そうかい!そりゃよかった!じゃあ、モツ煮のとびきり美味いとこ出してやっからよ!」

ハカセ「お!ありがとうございます!」

大将「よくかき混ぜながら、じっくりと煮込んでっからよ!…あぁ〜、ってことは、どこもおんなじ味だわ!ごめんな!ハカセ!」

ハカセ「どこもとびきり美味いってことですよ!あっはははは!」

大将「あっはははは!」

のりたま「……ハカセ…。今の何ですか?」

ハカセ師匠は小声で言った。

ハカセ「静かにしなさい。確認をするんじゃないよ!」

のりたまくんは小声で言った

のりたま「自分でかき混ぜながら煮込んでるんだから、どこもおんなじ味に決まってるじゃないですか。」

ハカセ師匠は小声で言った

ハカセ「わーかった。分かったから。静かにしなさいよ。聞こえるでしょ!」

大将「はいよ。おまちー。そこの若い子の口にも合うと良いけどな!」

のりたま「いただきます!はふっ!はふっ!これは美味いですね!!!」

大将「はっはっは!ゆっくり食べなよ!」

ハカセ「相変わらず、美味しいなぁ。」

のりたま「…………。」

ハカセ「はふっ。は、あれ?どうしたの?」

のりたま「猫舌で…火傷して…。」

ハカセ「えぇ〜。なに〜。もぅ〜。大将、お水を下さい。」

大将「こいつぁ〜、強者だねー。いや、弱いけど強いよぉ〜。」

ハカセ「大将、他人事だと思って!のりたまくん、お水あるから。ね!大丈夫だから。」

のりたま「ありがとうございます!はふっ!はふっ!」

ハカセ「やめて!猫舌なんでしょ?やめて!」

大将「おい。おい。」

のりたま「美味しくて…。」

大将「お!嬉しいこと言ってくれるね〜。おかわりか?」

ハカセ「やめろ!」

大将「なんだい。面白くなってきたのによ〜。」

のりたま「も〜!」

ハカセ「も〜!じゃない!もう出よう!」

大将「えー。もう帰んのかい?また近いうちに来なよ!」

ハカセ「また必ず!今日はありがとうございました!」

のりたま「ごちそうさまでした!美味しかったです!」

大将「おーう!またなー!……なんだか凄いね。」

てくてく てくてく

ハカセ「のりたまくん、少しだけだったけど浅草はどうだった?」

のりたま「大好きになりました!また来たいですね!」

ハカセ「お!?いいねー。また、近いうちに来ようよ!でも、煮込みは冷まして食べなよ!」

のりたま「はい!もう覚えましたよ!口の中、火傷しちゃいますから!あははは…」

2人は話しに夢中になって歩いていた。
すると、のりたまくんは、誰かにぶつかってしまった。
ドンッ!

のりたま「あ、すみません。よそ見をしてました。……あ…。」

男「おう。ハカセ。近いうちにまた来るってのは、本当の話かい?」

ハカセ「……あぁ、本当だよ。」


ハカセ師匠とのりたまくん
第五話へ つづく


エンディングテーマソング

アサヤン
KeepWalking
作詞 のりたま
作曲 のりたま

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