のりたま物語 ハカセ師匠とのりたまくん 第八話 ネタ帳
この物語は、フィクションです。
登場人物
ハカセ師匠 … 藝人、漫才師、のりたまくんの師匠、玉さんの相棒
玉さん … 藝人、漫才師、ハカセ師匠の相棒
のりたまくん … ハカセ師匠の弟子かどうかも怪しくなってきた男
ハカセ師匠は、待ち合わせをしていた。
のりたま「そろそろですかねー。」
ハカセ「そうだね。」
そこに、玉さんがやって来た。
玉さん「よう!お待たせ!」
ハカセ師匠は ちょっとだけ、ムッとして言い始めた。
ハカセ「玉ちゃん!いくら相棒でもね!関東の藝人は、年が上の藝人を敬うという暗黙の了解があるでしょ!」
玉さん「あぁ、あるね。」
ハカセ「それをなんだい!こんなに待たせて!ボクの弟子の のりたまくん にね、ちゃんと学ばせようと思ってたわけよ!それなのにまったく!…ペラペラペラペラ!」
玉さん「すまねぇなハカセ、相棒にお土産買おうと思ってたらよ。迷っちまって。これ、うちの近所の和菓子屋で買った どら焼き なんだけど、ホントに美味いから食ってよ。」
ハカセ「でしょ?そういうところを学ばせたかったのよ〜。あらやだ!ありがとう!玉ちゃん大好き!のりたまくん!こういうところですよ!見た?ボクの相棒!?」
のりたま「…はい。見ました。衝撃映像を。」
ハカセ「ん?何を言ってるのかしら?」
のりたま「…オネエ?」
3人は、玉さんのオススメの町中華に入った。
ハカセ師匠は、席に着いて注文を済ませると話し始めた。
ハカセ「玉ちゃん、早速なんだけどね。…漫才のネタを書いたんだよ。…久しぶりに書いたから、まだそんなに自信がないんだけど、見てもらえないかな?」
玉さんは、1杯目のビールを飲みながら聞いていたので、驚いてこぼしそうになっていた。
玉さん「え!?もう書けたの!?」
ハカセ「うん。書けたの。」
玉さん「かわい子ぶるんじゃないよ。…見てえよ!見てえ!早速、見せてくれるかい?」
ハカセ「もちろん!むしろ頼むよ。たくさんあるから…。」
玉さん「え!?ちょ、ちょっと待て!1本じゃないのか?」
ハカセ「うん。とりあえず、5本。」
玉さん「5本!?嘘だろ!?おい!?」
ハカセ「嘘じゃない。はい。」
玉さん「なんだよ、その返し!凄いな!この前会ってから、まだ1週間くらいだぜ?」
ハカセ「湧き出た。いや、掘り当てた。」
玉さん「温泉みたいに言うんじゃないよ!」
ハカセ「まぁまぁ、とにかく読んでよ。」
玉さん「そうだな!読むよ!」
玉さんは、ネタ帳を黙々と読み続けた。
ハカセ「のりたまくん、じゃあ、ボクたちは食べて待ってようよ。」
のりたま「はい。いやぁー。ここの炒飯は最高ですよねー。」
パクッ
のりたま「うますぎっ!いつもより美味しい気がする!もうたまらん!」
ハカセ「え!?うそうそ!?ホントに!?ボクもいただこうかな!じゃあ、ちょっと失礼して…」
その時、玉さんがビール片手にネタ帳読みながら思いっきり吹き出した!
玉さん「ぶわあっははははははは!!!!なんだよ!これ!おもしろすぎるよ!!」
ビシャビシャ!
ハカセ師匠は炒飯を食べる前に、顔がビールでビショビショになった。
ハカセ「玉ちゃん!なんだよもう!!嬉しいな!!!こんにゃろ!!!」
玉さん「ん?どうかした?なんか良いことあったの?それにしても、ハカセ!これ見てよ!めちゃくちゃおもしれーんだから!あ!これ、ハカセが書いたんだったわ!」
ハカセ「玉ちゃん!こんにゃろ!もう!最高!大好き!!なんかちょっと男前になったね!」
のりたま「ハカセ、ビールで顔ビショビショになりながら何言ってんですか。今、店内で1番アホなのは間違いなく師匠ですよ。早く炒飯を食べてください。」
ハカセ「はーい!そんなこと言っても、玉ちゃんがベタ褒めしてくれてるから、全然腹立ちませーーーん!!!」
のりたま「ふふ!くっそ。笑ってしまった。なんか悔しいな。ハカセ、炒飯が冷めますよ!」
ハカセ「あ、そうだったね。そろそろ食べよう。」
玉さん「ブハハハハハハ!!!!」
ビシャビシャ!
ハカセ師匠は炒飯を食べる前に、顔がビールでビショビショになった。
玉さん「なんだよこれー!すげーな!ハカセー!!!これ、俺が考えたことにしてよーー!!!」
ハカセ「ダメェー!!」
のりたま「顔びしょ濡れで何言ってるんですか?とりあえず、顔拭いてくださいよ!」
ハカセ「全然、腹立ちません!なぜなら…玉ちゃんがベタ褒めしてくれてるからぁー!!!」
のりたま「ふはは!くっそ!また笑ってしまった!このコンビこんなんだったか!?絶対違うぞ!!」
ハカセ「のりたまくん、ボクはね、今、とっても、嬉しい。ネタ作りの苦労が、完全に報われている。」
のりたま「キリッとした顔で普通のことを言わないでください。早く炒飯を食べてください。冷めたら勿体無いですよ!」
ハカセ師匠はキリッとした顔のまま
ハカセ「ああ、そうだったね。いただくとしよう。」
玉さん「ブハハハハハハ!!!」
ビシャビシャ
ハカセ師匠は炒飯を食べる前に、ビールで顔がビショビショになった。
のりたま「よし!一回、読む前に、ビールを口に含むのをやめましょ!そこから頑張っていきましょ!あ、ハカセは顔を拭いてください!」
玉さん「えー?いいじゃねぇかよー。なぁー?」
ハカセ「ねぇー?」
のりたま「ちょっと待って!そんなに仲良かったんですか!?想像を絶する仲の良さで、浅草が震撼してると思いますよ!」
玉さん「えー?そんなことねーよ。なぁー?」
ハカセ「ねぇー?」
のりたま「それやめ!!!おもしろすぎる!!!はっきり言うぞ!!!ツボだ!!!」
玉さん「しょうがねぇなぁ。それにしても、ハカセのネタ、どれもこれも凄いよ!これ、いけるよ!なんだったら、俺がちゃんと面白く出来るか心配だわ!」
ハカセ「何言ってんだよ!玉ちゃん!相棒と一緒じゃないと出来ないよ!いつも、一緒に漫才してる時のことを想像しながら書いてんだから!」
玉さん「相棒…。野暮なこと言っちまったな…。」
ハカセ「相棒…。」
…ガシッ!!!
のりたま「……(うるうる うるうる)オジサンのハグ…」
ハカセ「うるさいよ!余計なこと言うんじゃないよ!なぁ?」
玉さん「そうだぞ!オジサンというよりは、ちょっとお爺さんより…になってきてるぞ!」
ハカセ「いや、そういうことじゃないでしょ!」
のりたま「お爺さん…すみませんでした…。」
ハカセ「失礼だな、おい。のりたまくん、違うんだ。これは、相棒が間違えてだね。」
のりたま「え?…ジジイの方でございますか?」
ハカセ「え?エスカレートする?こういうのって普通マシになっていくでしょ。」
のりたま「き、気をつけます!ジ…師匠!」
ハカセ「今、危なかったね!…それにしても、玉さん、俺たち、このネタで舞台にまた…立てるかな?」
玉さん「何、弱気なこと言ってるんだよ!ハカセ!らしくないよ!立つんだろ?」
ハカセ「おう!そうだったね!」
玉さん「よっしゃ!こうなったら、フランス座でやろうぜ!」
ハカセ「よし!やろう!!!」
のりたま「よかったですね!ハカセ!」
ハカセ「うん!のりたまくん!ありがとう!!!」
ハカセと玉さんは、フランス座(今は東洋館)で漫才をすることになったのだった。
ハカセ師匠とのりたまくん
第九話へ つづく
エンディングテーマソング
アサヤン
KeepWalking
作詞 のりたま
作曲 のりたま