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のりたま物語 ハカセ師匠とのりたまくん 第九話 本番

この物語は、フィクションです。

登場人物

ハカセ師匠 … 藝人、漫才師、玉さんの相棒、のりたまくんの師匠

玉さん … 藝人、漫才師、ハカセの相棒

のりたま … ハカセ師匠の弟子かどうか、怪しくなってきた男


チュチュチュチュチュン
チュンチュン

ハカセ「ん?ふわぁ〜!…朝か。何か爽やかな朝だな…。いよいよ本番か…」

チュンチュン
チュチュチュチュチュン

ハカセ師匠は、窓を開けて外の新鮮な空気を入れることにした。
カラカラカラ

のりたま「チュンチュン!チュチュチュチュチュン!」

ハカセ「………。」

カラカラカラ、ピシャ!
窓を閉めた。

のりたまくんが、窓の外からハカセ師匠に話しかけてくる。

のりたま「おはようございますぅー!いよいよ本番ですねー!」

ハカセ「うーん。そうなんだけど。なんか…なんかこう…朝から変なもん見たっていうかー。」

のりたま「え?そうなんですか?体調がお悪いんで?」

ハカセ「いや、体調というか、原因はハッキリしてるんだよ。だから、大丈夫だから。」

のりたま「心配なんで、今そっちに行きますね!」

ハカセ「来るな!外におれ!!」

のりたま「そうですか?分かりましたー。」

ハカセ師匠は、一人で準備を進めた。

ハカセ「よし!準備万端!あ、そうそう。衣装はこれだった!よし!完璧!」

ハカセ師匠は、扉を開けて外に出た。

ハカセ「のりたまくん、お待たせ。ごめんね。待たせちゃって。」

のりたまくんは、仁王立ちして腕を組んでいた。

のりたま「全然、気にして無いですよ!」

ハカセ「仁王立ちするんじゃないよ。」

二人は、電車で浅草フランス座へ向かった。

のりたま「いよいよ本番の日ですね!なんだかボク緊張してますよー!」

ハカセ「ハハハ。なんで、のりたまくんが緊張するのよ。」

のりたま「なにを言ってるんですか!ハカセ師匠と玉さんの漫才をお客さんが観られるんですよ!みんなの笑顔が楽しみです!」

ハカセ「お?カッコいいこと言うね〜!」

のりたま「そうですかぁ?てへへ。千円であげますよ。」

ハカセ「要らんわ!そんなセコい藝人になるんじゃないよ!まったくぅ!」

のりたま「すみません!二千円でした!」

ハカセ「値段じゃないだよ!売るな!それに、もはやカッコよく無くなったわ!」

のりたま「そうですかぁ?分かりましたぁ。」

浅草橋ぃ〜 浅草橋ぃ〜

のりたま「ささっ!ハカセ!着きましたよ!みなさ〜ん!ハカセ師匠のお通りですよ〜!道を開けて下さ〜い!」

ハカセ「やめて!やめて!やめて!」

のりたま「ハカセ師匠!どうなされぇ〜い?ましたかぁ〜?」

ハカセ「どうした!?のりたまくん!?どうした!?テンションがおかしくなると、歌舞伎っぽくなるのか!?今までやったことないだろ?」

のりたま「今日は特別な日ですので、お殿様気分でフランス座まで向かっていただこうかと思いまして…」

ハカセ「恥ずかしいだろ!特別感は出さなくていい!普通にして!」

のりたま「はい!分かりました!」

スタスタ ピタ

のりたま「いよいよ着きましたね。」

見上げると、フランス座がそびえ立っている。

ハカセ「…そうだね。よし!行こう!」

二人はフランス座の中に入って行った。

早速、楽屋へ向かう。

コンコン ガチャ

のりたま「失礼します!」

玉さん「おーう!待ってたよ!なんか早く来ちゃったよー!」

ハカセ「ホント、早いね。ごめんね。待たせちゃって。」

玉さん「いいの!いいの!俺が早く来ただけなんだからぁ〜!…飲る?」

ハカセ「飲るか!本番前だぞ!ホントにダメだからね!」

玉さん「分かってる!分かってるって!冗談だよ!」

ハカセ「そうなの?それならいいけど。ちょっとネタ合わせしようよ!」

玉さん「おうおう!いいねー!やろう!やろう!」

ハカセ「どうもー。いやー、みなさんお久しぶりですねー。懐かしい顔がたくさんで嬉しいなぁー!ねー!玉ちゃん!?」

玉さん「……。」

ハカセ「え?どうしたの?…ネタ、忘れちゃった?」

玉さん「いや…覚えてるよ。」

ハカセ「え?だったら、続き言ってよ!ほら。ネタ合わせなんだから!」

玉さん「だってよ…。」

ハカセ「なに?」

玉さん「のりたまくんが…見てるじゃん…。」

ハカセ「…は?」

玉さん「ネタ合わせ、のりたまくんに見られんの恥ずかし…」

ハカセ「玉ちゃん、正気かぁぁぁぁぁ!!!!」

のりたま「なにこれ?」

玉さん「のりたまくん、ごめんだけど…ちょっと外で…あの…廊下の角を曲がったところまで離れて!声を聞かれるのも、ちょっと恥ずかしいのでぇぇぇ!」

ハカセ「おい!お前、後半はちょっと楽しくなってるよな!?遊びが入ってたよな!?」

のりたま「分かりました!分かりました!行きますよ!」

玉さん「本番の10分前に呼びに来て!」

のりたま「はい!はい!分かりましたよ!」

玉さん「『はい』は1回な!」

のりたま「はい!………くそ!」

玉さん「あ、ハカセ、弟子があんなこと言ってるよ。」

ハカセ「うーん。今のは、そんなに責められないかなぁ〜。ま、後で言っとく!」

玉さん「そう?…じゃ、ネタ合わせ、やろうか!!!!!」

ハカセ「お、おう。」

のりたまくんは、言われた通りに廊下を歩き、角を曲がった。

のりたま(ふぅ。この辺で、座って待ってようかな。ボクは出演するわけじゃないのに、緊張するなぁ。ふぅー。)

のりたま(ふぅー。…。)


 ………。


のりたま(はっ!!!)

なんと、のりたまくんは、ウトウトと居眠りをしてしまった。
急いで時計を見るのりたまくん。
出番の5分前!!!
ハカセ師匠と玉さんを呼びに行く時間を過ぎている!
のりたまくんは焦った!

のりたま(や、やばい!とにかく急いで呼びに行こう!)

走る のりたまくん!
 注:廊下を走ってはいけません
こんな一行を入れなければいけないんじゃないか?と考えてしまう世の中に幻滅している作者!
そして、廊下の角を曲がる!
ドンッ!
角を曲がったところで、スーツを着た大男、二人組にぶつかってしまった!

のりたま「申し訳ありません!急いでいたもので!」

大男二人組も急いでいる様子で通り過ぎながら、

大男の一人「ごめんよ。こっちも急いでたもんでよ。じゃ。」

と、顔も見れずに遠くに行ってしまった。

のりたま(こんなことしてる場合じゃない!楽屋に急がないと!)

大急ぎで楽屋の扉を開けた!
コンコン!

のりたま「失礼します!遅れて申し訳ありません!出番の時間です!!!!!」

楽屋はガラんとしている。
ふ……二人がいない!!!

のりたま(これは、どういうことだ?トイレかな。いや、二人ともってことは無いか。ま、まさか、久しぶりの舞台だし、ボクの緊張がうつってしまって、に、逃げたとか!?ま、まさかー!ボクのせいだー!えらいこっちゃー!ん?)

のりたまくんは、机の上に置いてあった自分のリュックを開けっぱなしにしていたことに気づいた。
よく見ると、リュックの中の のりたまくんのノートがいつもと違う向きで入っていた。

のりたま(!!やばい!!!もしかして見られたのか!?それで帰ってしまったのか!?)

バァーン!

どこかで爆発が起きた。

ビクゥッ!

のりたま(え?なに?なに?なに?師匠とその相棒が逃げて大変な時に爆発ですか?なんだよこれ。どうなってんの?テロかな。ハカセ達、昔、舞台で襲われたことがあるって言ってたけど、こういうことかぁ〜。)

のりたまくんは、とにかく音の方へ向かって走った。

たしか…こっちの方で………ココってまさか…

…もしかして…

そこに広がっていたのは、フランス座の舞台。

舞台に立っているのは、スーツを着たハカセ師匠と玉さんだった。

のりたま(あれ!?さっきのスーツの二人!?)

のりたまくんは、舞台衣装のスーツを着た二人の本番直前の迫力に圧倒されて、大男だと勘違いしたのだった。

その時、

バァーン!

ビクゥッ!

のりたま(これ!?爆発じゃない!笑いか!!お客さんの笑いが爆発に聞こえたんだ!)

バァーン!

のりたま(……こんなに凄い師匠だったのか……怖いなぁ。圧倒的で、怖いなぁ。)

のりたま「…ハハハ!!…アハハハハハ!!!」

のりたまくんは、ポロポロと涙を流しながら舞台袖で二人の漫才を見て笑った。

のりたま(漫才って、おもしろいなぁ。藝人って凄いなぁ。)

どのネタも、おもしろくておもしろくて、涙で目がほとんど見えなくなっても、声だけでもおもしろかった。

のりたま(これが藝人のチカラなのか…。)

舞台も終盤に差し迫った時…

のりたま「…よし。ボクの役目は終わったかな…。」

のりたまくんは舞台袖で漫才を見ていたが、漫才をしているハカセ師匠と玉さん深々と礼をした後…背を向けて歩き出した。

そして、楽屋に戻り、ハカセ師匠へ手紙を書き残し、フランス座を後にした。

のりたまくんは、フランス座の外に出た。

のりたまくんは、フランス座から少し歩いたところで うずくまった。

のりたまくんは、フランス座から少し歩いたところで倒れた。


ハカセ師匠とのりたまくん
第十話へ つづく


エンディングテーマソング

アサヤン
KeepWalking
作詞 のりたま
作曲 のりたま

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