のりたま物語 かごんまのやま 第六話
この物語は、フィクションです。
1984年ごろのある日
おいおい
おいおい
三輪車を乗り回している のりたま を見ている。
ゆうちゃん 4歳だ。
暴走族のごとく三輪車を乗り回している のりたま を見て、ドン引きしている。
この日は、天気のいい日だった。
桜島は、今日も煙を上げていた。
場所は、かごんま(鹿児島)の桜ヶ丘というところで、 ゆうちゃん の家の前の小道。
T字路になっていて、T字路の先に大きめの通りがある、そんなところだった。
しばらくの間、のりたま は、三輪車で暴走していた。
ゆうちゃん「おーい。危ないよー。こっちの庭で遊んだ方がいいよー。」
ゆうちゃん(よし、聞いてないな。あいつはダメだ。アホだ。アホを辞書で引いたら のりたま の顔写真出てくるわ。あ、双子だから、同じ顔やないかーい!言うてる場合かー!)
どのくらい遊んだか覚えていないが、何処からか声が聞こえてきた。
「のりたまー。のりたまー。」
ゆうちゃん(ん?のりたまを呼ぶ声が聞こえる。)
のりたま が呼ばれた方向を見た。
そこは、大きな通りの向こう側。
向こう側に、同い年くらいの女の子と、その女の子のお母さんが立っていた。
その子の名前は、南さんだ。
下の名前は、聞いてない。
南さん「のりたまー。ボール取ってー。」
よく見ると、大きな通りにボールが転がっていた。
のりたま「いいよー!」
三輪車から降りて大きな通りに向かった。
ゆうちゃん(珍しく、親切に拾ってあげるのか。偉いじゃないか。)
のりたま は、車がいないのを確認して道路に入っていった。
のりたま は、ボールを拾った。
のりたま は、南さんに向かって…
ゆうちゃん(ふむふむ。偉いぞ。ちゃんとボールを返し
た)
ドンッ!
ゆうちゃん「は?」
のりたま は、飛んだ。
綺麗な弧を描いて、飛んだ。
ゆうちゃん「綺麗だなー。」
そう言う競技があったら、日本代表だなってくらい綺麗に飛んだ。
ゆうちゃん「メダル取れるぅー。」
そんな競技は無い。
のりたま は、地面に叩きつけられた。
ゆうちゃん「着地が大事だろ!」
そこに、のりたま を轢(ひ)いた8トントラックが更に追い打ちをかけた。
グシャ!
ゆうちゃん「え?」
8トントラックのタイヤが、のりたま の左足の甲を轢(ひ)いたのだ。
足のスネの骨がトラックの重さに耐えられずに2本とも折れて、皮膚を突き破って外に飛び出ている。
左足がグシャグシャだ。
ゆうちゃん(あ…ああ…南さん、助けて…のりたまが…)
ゆうちゃん は、ショックで声が出ない。
南さんと、南さんのお母さんは呆然としている。
ゆうちゃん(おい!南さん!早く!なんとかして!)
南さんは、のりたま が返したボールをゆっくりと拾った。
ゆうちゃん(南さん!南さん!)
南さんと南さんのお母さんは、ゆっくりと振り返って家に帰って行った。
ゆうちゃん(おい!おい!なんでだよ!くっそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
エンディングテーマ
KeepWalking
かごんまのやま(2024 Remastering)
作詞 のりたま
作曲 のりたま