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のりたま物語 ハカセ師匠とのりたまくん 第三話 傘をスッ

この物語は、フィクションです。

登場人物

ハカセ師匠 … 漫才師、のりたまくんの師匠

のりたまくん … ハカセ師匠の弟子になった見習い


のりたま「ハカセ。銭湯の準備。整っております。」

ハカセ「うん。いつもありがとう。」

のりたま「当然のことですよ。それにしても、あれから、ほとんど毎日銭湯に行くために外に出るようになりましたね。」

ハカセ「そうだね。木曜日はあの銭湯はお休みなんだよねぇ…。でも、外に出るようになったよね。」

のりたま「これはこれで良かったですね。なんとなく快方に向かっている感じがするというか…。」

ハカセ「うん。やっぱり外は気持ちいいよね。天気のいい日に散歩して汗をかいて銭湯に行く!健康的じゃありませんか!」

のりたま「ホントにそうですね。まぁ、今日は土砂降りの雨ですけど。ハカセ!風邪ひきますよ!なんで傘を持って来なかったんですか?良い大人でしょ?まったくぅ。」

ハカセ「…のりたまくん、土砂降りの雨の中ですけど、ちょっとそこに正座しなさい。」

のりたま「はい!」

ハカセ「えー。師匠と弟子が土砂降りの雨が降るかもしれない日に散歩に出掛けて銭湯に行きますよ。と。」

のりたま「はい。」

ハカセ「その時に、のりたまくんは傘を持って来たわけだよね?」

のりたま「そりゃそうですよ!天気予報で大雨になるって言ってましたもん!」

ハカセ「おー!っと興奮してますねー!はい!言うぞー!よーし!言うぞー!すぅー。…弟子が師匠の傘を持って来なくてどうすんじゃーい!」

のりたま「あ!そういうことー!?」

ハカセ「うん。そういうこと。あとね。ずっと、自分だけ傘さしてたのも、すっごい傷付いてた。ハカセ…傷付いてた。」

のりたま「申し訳ありませんでした。あ、ハカセ濡れてるなぁー。ハカセ、濡れてるなぁー。って思ってはいたのですが。傘をハカセに渡すとボクが濡れるぞー。って思いまして。」

ハカセ「師匠を相手に迷わないで!あ!ああ!あぁ、なんか涙が出てきた。」

のりたま「ふふ。ハカセ、土砂降りの雨でびしょ濡れだから、涙か雨か分かりませんよ!」

ハカセ「まだ傘さしてくれないの!?もう、怖いわ!」

のりたま「ハカセ。ここじゃなんですし。歩きながら聞きますね。」

ハカセ「わ!斬新!!え?弟子界に革命でも起こそうとしてるの!?こういう時は!『師匠、濡れますよ。』スッ。これでしょ!?こういうのテレビとかで見たことない?」

のりたま「…ちょっと何言ってるか分かんない。」

ハカセ「なんで分かんないんだよ!あぁぁぁぁぉー!昭和の神様ぁー!令和は!大変なことになってますよぉぉぉぉぉー!」

のりたま「師匠、濡れますよ。」
スッ。

ハカセ「え?…なんだ。あるんじゃない。なんでこんなにびしょ濡れになるまで泳がせたのかは謎だけど…ありがとう…って、ごめんなさい。これなに?」

のりたま「ポンチョです。」

ハカセ「ポォ〜ンチョ!?」

のりたま「はい。頭からズボッと…」

ハカセ「分かる!分かりますよ。着る方法については分かるんだけど…。びしょ濡れでポンチョって、めちゃくちゃ…蒸れるわ。」

のりたま「ふふふ。今度は、雨粒か汗か分からなくなりますね!」

ハカセ「うん!それそんなに上手くないからね!なんか腹立つな!こんな蒸れさせるって…わしゃ肉まんか!!!」

のりたま「ハカセは、小さいからシウマイです。」

ハカセ「どぉっちでもいいわ!!!」

のりたま「なんか、アレですよね。すっごい声が通りますよね。舞台とか向いてるんじゃないですか?」

ハカセ「弟子ぃ〜!?弟子で間違いないでしょうか!?ハカセ師匠は、漫才師ですぅー!舞台に立つ人ですよー!」

のりたま「…。あ!!じゃった!」

ハカセ「じゃった!?ここへ来て鹿児島弁には驚きを隠せないぞ!!ドキッとしたわ!」

のりたま「申し訳ありません。師匠。ずっとハカセ。ハカセ。って言ってましたから…なんて言うか…その…本当に博士かと勘違いを…。」

ハカセ「あ、そういうことね。それならまぁ、仕方ないか。知らない人ならともかく、弟子がそれは仕方ないことは無い気がするけど、なんかもう仕方ない気がしてきた。」

のりたま「お許しいただき、ありがとうございます。…本当にもぅ、ややこしい名前付けちゃって…こんちくしょー。」

ハカセ「え?うそ?うそ?うそ?ちょっと、すみません!のりたまくん!?ちょっとすみません!」

のりたま「あ、ハカセ!銭湯に着きました!」

ハカセ「え!?あ!はい!あー、なんかまだドキドキしてる。え?なにこれ?……恋?」

ハカセ師匠とのりたまくん
第四話へ つづく

エンディングテーマソング

アサヤン
KeepWalking
作詞 のりたま
作曲 のりたま

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