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BuenCamino 『Day6: Padronへ』


2023.4.19-30 のCamino ポルトガルルート(Vigo起点)についての記事をまとめています。
スペイン語が話せない私の、気ままな一人珍道中。Camino Familyとの出会いと経験で、人生を見つめ直すお話です。



ここまでの旅 Buen Camino!レッツトランジション
決意
Day1: ポルトへ
Day2: スタートポイントVigoへ
Day3 Redondelaへ
Day4: Pontevedraへ
Day5: Caldas de Reisへ



絶対に必要なものだけにする朝

荷物をまとめる。
ここでは荷物にタグをつけて部屋に置いたままで良いとのこと。午後に次の宿に運んでくれるとのことだった。
フロントに荷物を整えたことを伝えてから朝食会場へ。
朝食開始時間は8:00。またもや一番乗り。

カルダスデレイスのホテルはこれまでのホテルとはちょっと違い、レベルの高いホテルだとわかる。

パンもコーヒーもフルーツもなんだかちょっと並べ方や盛り付け方にセンスあり、一層美味しそうに見えた。

相変わらず野菜は無いが、フレッシュトマトを潰したペースト?ソース?があり、パンにつけていただく。食物繊維は果物で補給。

美味しく朝食をいただいて満足し、部屋を片付けて、出発。

毎回心配で色々詰めてしまうので、荷物を最小限にした。
【使うかも】はいらない。
【絶対に必要なもの】だけを持ち歩くことにした。
そうすると、とても軽く歩きやすい。

私はホテル間の荷物の運搬サービスを利用しているから荷物が小さいが、ほとんどの人が全ての荷物を背負っている。私のリュックのサイズとそう変わらないから驚く。彼らは自分に絶対に必要なものだけを持ち歩いている。もし不要なものがあれば捨てるのだ。だからカミーノは『捨てる旅』とも言われている。

私の場合は『捨てる』はしなかったが、【必要なものを選ぶ】ことができるようになったかもと思う。

振り返ると、結局荷物は【不安】で増えていた。必要なものは考えなくても実はわかっている。見極めの目が曇るのは、【不安】が要らないものも必要なものに見せていただけなのだ。

目の曇りが晴れると、本当に必要なものが見えてくる。

土砂降り雨との対峙

ホテルを出発し、可愛い街並みを抜けて、歩く。今日も雨。もはや雨は全く怖く無い。そして嫌でもない。むしろ「晴れたら暑すぎるかも…」なんて想像が浮かび、「雨でよかった。まだこれくらいの暑さなら歩ける」と前向きになってくる。

前向きな私に挑戦するように、どんどん土砂降りになって来た。新たな試練【もっとハードなやつ】の中、黙々と歩く。大雨に加え風まで激しくなってきた。Rio Ulla川を渡るところで、猛烈に激しい風と雨にやられる。横なぶりの風と雨。ポンチョは捲れ上がって中までびっしょり。中世の油絵の絵画に描かれているようなような、大荒れの中歩く。ゆっくりゆっくり歩き進む。「あーなんて激しい嵐なのだろう」とそのままをそのままに肯定しながらただただ、ひたすらに歩く。

土砂降り雨の中、パドロンの街に到着。
まだホテルはここからしばらく先にある。

日曜日のこの日、マーケットも並び、人々で賑わっていた。イベリコ豚のソーセージ、焼きたてパン、つみたてのいちご、フルーツ、枇杷どれもとても安くて買いたくなったが、荷物を増やせない。食べきれない…と、我慢をして通りすぎる。

でもチュロスの屋台には足が止まってしまった。
油であげて、砂糖を振りかける。手早く作業するお婆さんの姿をみたら無性に食べたくなる。

揚げたてチュロス

チュロスを一袋購入し、雨の中、歩きながら食べてお腹を満たす。

美しいギター演奏のカントの教会

マーケットのテントの終わりに教会があり、カミーノ姿の男性が立っていた。「中に入らないの?」と聞くと、「正面は向こう、ハンコだけ貰いにきたから、ここで礼拝が終わるの待ってるんだ」という。
「そうなの?じゃあ私は礼拝参加してからハンコ貰うね!」と伝え、正面から中に入る。

Iglesia de Santiago Apóstol de Padrón

厳かな礼拝が執り行われていた。
通常オルガンで伴奏するカントは、ギター演奏のものだった。そのギターの音色と男性の美声が教会に響きわたり、素晴らしい物を見せてもらったと感動した。
思わず録音して、父に贈る。

聖餐式、祈りの歌全て素晴らしい。
この音楽が聴けただけでもお導きだったと感謝している間に教会員のおじさんが、こっちにおいでと手招きする。向かったテーブルで、「ハンコを押すよ」と礼拝が終わるか終わらないうちにハンコをくれた。
「どこからきたの?チナ?コリア?」とスペイン語で言われ、「ハポーン(日本)」とこたえる。
をを〜!と言う表情をして、何度もノートに書かれている国名を探す。二度見て三度見て、やっぱり無いと判断し、ノートにハポーンと書いて1と、書き加えた。どうやら今年?今月?初めての日本人らしい。

スペイン語で何か問いかけられるが、わからないと伝える。そうしたらおじさんに連れられて講堂下まで行き、石の柱を指差して「これ有名な遺跡だよ」「ゆっくり見て帰ってね」(たぶん…)と、スペイン語で伝えてくれる。

そこで初めて「をを〜あー!これガイドブックに載ってた!船を繋げた石!だ!」と感動する。

しばし会堂に座り、しずかな時を持つ。

カントとの巡り合わせと、おじさんの優しさと、大雨の中歩き続けたご褒美のようにも感じた。

「では行ってきます!」と、他の巡礼者のスタンプを押しているおじさんに目配せし、手を振って出発をする。

外は少し雨が止んでいた。

パドロンのホテルにて

教会を出て、郊外の道を進む。
ホテルの街は『パドロン』となっていたので、教会からすぐかと思いきや、歩いても歩いても到着しない。
1時間ちょっと歩き続けてようやくホテルに着いた。パドロンの旧市街の街並みとは異なる、国道沿いの修学旅行の宿のような古い大きなホテルだった。

このあとバーで知り合う、ドイツからのカミーノ仲間サンドラ曰く、「シャイニングのホテルみたいなホテル」の表現がぴったりの、少し古いスタイルの巨大なホテル。

部屋に入り、バスタブに湯を満たし、ゆっくりお風呂に浸かりながら、洗濯をする。
こんな天候では乾きそうにも無いが、汗の匂いがつくと大変なのでとにかく洗濯をする。

ゆっくり一息して、プチトマトを摘んでから、今日は雨で食べそびれたお昼ご飯兼夕飯を食べようと下に降りる。

国道沿いでホテル以外には食べるところがなさそうなので、ホテルのカフェandバーで食べることにする。

カウンターで、食事を注文しようとすると、飲み物は出せるけど、食べ物は夜8時からと返答が返ってきた。大袈裟に悲嘆に暮れながらワインを頼むと、無料のおつまみのナッツを山盛りボウルによそって「これで我慢してね」とウインクされる。ありがたい。

ちょうど、雲が薄くなって晴れそうな天気なので、外のテラスで飲むことにする。ふと外でタバコをふかしながらワインを飲む女性と目が合う。

ドイツからきたサンドラは「ここ食べ物ないんだって、信じられない!夜8時ってもうわたしゃ寝る時間だよ!」なんて感じに面白おかしく喋る。

「今日さ、雨でお昼食べてなくてチュロスだけだったからもう死にそう〜。雨でエネルギー無駄に消費しちゃってもうだめー」なんて私も言いつつ。

二人で必ずオチのある半分ギャグの会話を楽しむ。自己紹介やら途中で見た人たちやら。散々ゲラゲラ盛り上がっていると、アメリカからの若い女の子マリーが「一緒にいい?」と仲間に入る。映画「The Way」を見て感化された父親に連れられてやってきたと言う24才の女性。世界の気候やら社会に向けた意識が高く学びも深い。世界中ヨットで回りながら仕事をしていたり、もはや先生と呼びたくなるほどの経験を持つ。
しばらくすると、パパもくるとのことで、お父さんも交えた四人でお酒と山盛りナッツで乾杯する。

ワインとナッツのおかわりをしようと、バーカウンターへ行くと、ちょうど行きつけ客らしいおばあさんが、チーズサンドを受け取っていた。

目ざとく見つけ、「あれと全く同じものでいいから頂戴」と言うと、「あー…」と間のある渋い顔をしつつも、「全く同じチーズだけでいい?」と確認するので、「いいよ、チーズ大盛りにしてね」と付け加える。「全く!なんてこった!」と言うような笑い顔をしながら、パッパとサンドを作ってくれる。

渡されたチーズサンドは大きなサンドイッチ。

戦利品チーズサンド


サンドラに「へっへーん」と見せる。「どうやって作ってもらえたの!」と驚かれ、カクカクシカジカ説明し、「半分しか食べられないから、半分あげるよ」と言うと「あなたは私の命を救った恩人」なんて大袈裟に言いながら美味しそうにほうばる。
「そうね、恩を忘れないでね!」と付け加える。

その後もしばらく話をする。
マリーが「あなたビーゴのホテルにいたわよね!」と私を見かけたと話をする。「他の人と話していたから、みんなおんなじツアーなのかと思ってたわ」と教えてくれた。「道がわからなくてみんなにルートを聞いてたの、ひとりぼっちでめちゃくちゃ不安だったの〜!」と言うと、「うっそー、不安そうには全然見えなかったわ、すっごく笑ってたわよ」なんて初対面なマリーも私にツッコミをし、爆笑が生まれる。

散々四人でガハハと少々品の悪い爆笑をしながらすごす。「なんて最高な夜なの!」とマリーが、毎日欠かさず書き続けるジャーナルに私たちの話と写真を載せるがいいか?と聞いてくる。写真はポラロイドで撮影しすぐに出力したものをノートに毎晩貼り付けて仕上げるとのこと。

爆笑の夜
帽子をプレゼントしていただく

一日どれくらい描くの?と聞くと、ぎっしりみっちり数ページに渡って書いている。「私も毎晩書くわ手書きが一番よね」とサンドラも。
「私も書くけど、スマホでタイプだわ」と言うと、「書いた方がなんだかいいわよねー電脳に侵されないって大事」と言う。確かにこれは真似したい。

カミーノの道のハードさの会話になり、マリーもサンドラも大きな水剥れを披露する。そういえば、毎晩みんな水膨れを見せて痛い痛いと言うのが自己紹介の一つになっているほど、武勇伝的に披露する。

「あなたは?どこ?」とサンドラが聞いてくるので、「nothing! hurray!」(どこにもないよー♪へっへっばんざーい)と両手をあげて自慢すると、すかさず「suffer!!」(痛み苦め!)とサンドラが叫ぶ。もう漫才のようでみんなで大笑い。「あなた、重い荷物を預けて、水膨れもなくて、ちょっとは苦しみなさいよ!ここはカミーノよ!」なんてサンドラが笑いながら私をいじる。
「でもさぁ…そんな私のサンドイッチ半分食べたでしょ、あなたの命を救ったんでしょ」と言い返す。「そうだったそうだった、ごめんごめん」とサンドラ。みんなで大爆笑。

大笑いして、そろそろ長距離の明日に備えようとなる。
3人は明日がサンティアゴに到着。25kmほどある長い道のり。私は明日は手前のTeoに泊まる。ここからはなんと7-8km先のもはや目と鼻の先の宿。

再びサンドラが「Suffer!」と笑いながら言う。
本当に楽しい夜だった。

ひとりぼっちでも、なぜか旧知の中のようなつながりになるのがカミーノ。一人でも一人じゃない。そんな旅の醍醐味を満喫する。

これまで知り合ったほとんどのみんなが、明日サンティアゴデコンポステーラに到着のプラン。

私はTeoで一泊してからのゴール。
毎日なんとなく道を共にする仲間たちと別れると思うと、ちょっと寂しくもある。

Camino ウォーキング: 8:40 - 14:00 (5時間20分)

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