シン・シャーマンキング論
最近はシンを付ければ何でもいいと思っている。
冗談はさておき、シャーマンキングはこの春から新アニメも開始し、注目されるところだが、原作含めて、シャーマンキングという作品は今、新たな次元にシフトしている。
『SHAMAN KING』はもちろん、『シャーマンキング0-ZERO-』、『シャーマンキングFLOWERS』、『SHAMAN KING THE SUPER STAR』、『SHAMAN KING レッドクリムゾン』、『SHAMAN KING マルコス』など、漫画作品だけでもかなり多くの作品が生まれているのが分かる。
これらを統合する仕組み、そして新たな高次元、それがマルチ・バースだ。
このコンセプトを戦略的に実行している日本の漫画は今のところシャーマンキングくらいではないか。(※デッドプール:SAMURAIを除く)
本稿ではマルチ・バースを取り入れたシャーマンキングの新たな魅力をお伝えすることで、少しでもユニバース発展に貢献ができればと考えている次第である。
マルチ・バースとは
マルチ(Muti)+ユニバース(Universe)のことで、日本語では多元的宇宙と訳せる。
マーベルはマーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe)として、
マルチ・バースを取り入れており、DCもDCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe)として取り入れている。
それらの作品を通してこのコンセプトを理解している方も多いであろう。
シェアード・ワールド(shared world)とも近いが、同一の作品を複数人で描くことよりも同時に存在することが許容される世界を描いているのがマルチ・バースの特徴的な点だ。必ずしも時系列などの辻褄があっている必要性はないのである。
ちなみにシェアード・ワールドで最大のものはスターウォーズであろうが、スターウォーズにおいては「カノン(正史)」と「レジェンズ(非正史)」に分別されることとなっており、多様な作品をまとめる方針を取っている。
起点となったと思しきもの
まず間違いなく『機巧童子ULTIMO』、つまりはスタン・リーからの影響であろう。『機巧童子ULTIMO』は「究極の善と究極の悪のロボットバトル」が発想の原点になっている漫画で、2009年からPJは始まっている。
スタン・リー氏は言わずと知れたアメコミの巨匠であり、『アベンジャーズ』の生みの親でもある。
このULTIMOにおいてもその手腕は遺憾無く発揮されており、過去/現在/未来を行き来しながら、世界が崩壊しちゃったりするはちゃめちゃな展開が行われている。とってもクールな漫画である。
この漫画を描きながら武井宏之氏はシャーマンキング自体をマルチ・バース化するコンセプトを得たのではないか。
元々武井宏之氏が和月伸宏氏の元でアシスタントをしていた経験があることを加味すると、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』と『エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』のように同じ世界での物語を別作品で表現するなどのことも影響があったのかもしれない。
しかし、マルチ・バースはそれよりも高次元のコンセプトである。
マルチ・バースを意識していることが分かる点
『SHAMAN KING THE SUPER STAR』においては分かりやすく表現がなされている。
『デスゼロ FROM FLOWERS』、『三代目ITACOのANNA』、『ダイ仏ゾーン』などの作品名が『SHAMAN KING THE SUPER STAR』内で出てくるのだ。それぞれの作品が絡み合う時などは表紙にデカデカと表現される。
例えば、『SHAMAN KING THE SUPER STAR』の#28は『ダイ仏ゾーン』の第1廻である。
筆者は恥ずかしながらマルチ・バースだと気が付くのが遅くなったため、この構造を理解できず表紙が出るたびに混乱した。
しかし、この構造を理解して各作品と向き合うと全てがピースになっており、それらを結合するのはある意味自分の空想力になってくることを感じる。そして、作品自体に余白が生まれることによって考察が捗り、味わい深く作品を楽しめるようになってくるのである。
この謎や空白による作品外に作品自体に力を与えているのは、正にエヴァンゲリオン的だと思うが、ここではこれまでにしておこう。
そう考えると納得できるもの
・ULTIMO世界との整合性
・仏ゾーン世界との整合性
・アニメとの整合性etc…
逆にいうと説明がつかないものがなくなるのである。
なんということだマルチ・バース!
今後の展開予想
恐らくシャーマンキングを起点として様々な作品を展開していくことになるだろう。現在は過去作品を絡めての展開をメインにしているが、恐らくは今後新規の作品も・・・?
最後に
筆者は小学生の時分にシャーマンキングに熱中しており、その最中一度打ち切りの挫折を読者として味わっている。打ち切られたジャンプを読んだ時のショックは子供ながらに大きく、公園で友達と怒りを発散したものだった。
その経験もあるからか漫画はなるべく早い段階で新品で買うことを心がけている。最近は場所の兼ね合いもあって電子書籍がメインだが、好きな作品は物理本も買うことにしている。
だから、本稿を読んで少しでもシャーマンキングに興味を持った方はなんの形でも良いので、作品にお金を出して欲しい。少しでも長くユニバースが続きますように。