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映画『P2』感想|サイコパス警備員によって地下駐車場に監禁されてしまう“アジャ印”の快作ホラー
以前のnoteでジェームズ・ワン監督のことを、ジャンル映画において“最高に信頼できる男”と書いたが、彼のほかにも“最高に信頼できる男”はいる。
『ハイテンション』(2003)で血まみれフレンチホラーの存在を世界に知らしめ、その後しばらくはリメイク番長として活躍したのち、『ホーンズ 容疑者と告白の角』(2015)でオリジナル作に回帰して以降は『ルイの9番目の人生』(2016)、『クロール-凶暴領域-』(2019)とハズレなしの作品を手堅く監督してきたアレクサンドラ・アジャだ。
アジャ監督に対する熱い思いは、『ホーンズ 容疑者と告白の角』公開時に個人ブログへ書いているので、興味がある人はぜひチェックしてほしいが、たぶん興味はないと思うのでこのまま話を進めさせてもらう。
アジャ監督は脚本や製作としても数多くの作品に関わっている。今回はそんなアジャの非監督作の中から、脚本・製作で参加した『P2』を紹介しようと思う。
ストーリーはシンプルで、遅くまで残業していた女性が何者かによって地下駐車場に監禁されてしまう、というもの。“何者”なんてもったいぶった書き方をしたが、その正体は早々に地下駐車場の警備員であることが明らかになる。そう、この作品、とにかくテンポがいいのだ。
「果たして犯人は!?」なんて具合にミステリーを気取るようなことはしない。映画が始まって15分くらいで「ハイみなさん、こいつが犯人です。さあ、どうやって脱出しましょう!」と高らかに宣言し、そこからエンディングまで、一瞬たりとも退屈させることはない。
警備員と女性が追いかけっこする映画と言えば、日本にも『地獄の警備員』(黒沢清監督/1992年)という名作があるが、おおよその設定は同じと考えていい。つまり、警備員が一方的に女性に好意を寄せていて、結ばれるためなら手段は選ばない――ってやつだ。
『地獄の警備員』と『P2』、どちらの警備員も“まったく話が通じない”ところも共通している。ただ、後者が寡黙ゆえに話が通じなかったのに対して、後者は基本的に感じよく会話はするのだがその内容がすべてズレているせいで話が通じない。これが恐ろしくもありおもしろくもあるところで、とくに終盤のとあるシーン(つまり、ほとんどの残虐行為をやり尽くしたあと)で口にする「さては、僕をクビにするつもりだな!」というセリフには、「いや、それどころじゃないだろ」というツッコミを禁じ得なかった。
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この絶妙に不謹慎で笑うに笑えないユーモアの感覚は、『ホーンズ 容疑者と告白の角』にもあって、まさに“アジャ印”と言えるもの。だがなによりもアジャ印と言えば“ゴア表現”。もちろんそこも抜かりはない。
本作は基本的に主人公 vs. 警備員で話が展開するため、必然登場人物は少なくボディーカウントはそれほど増えない。だが、少ないが故にやり方が非常にエグい。ボロンとナニが飛び出し、ヴァキャンとアレがナニするシーンはそういうのに見慣れている僕としても、ウッとなる生々しさだ。
とは言え、あくまでアジャは脚本・製作なので、もっとも印象に残るのは“アジャ印”ではないところ。最初にも言ったとおりテンポの良さがだ。伏線やドンデン返しのような仕掛けは行わず、ド直球のエンタメを監督のフランク・カルフンはぶん投げてくる。
オロオロと逃げ続ける主人公が、どん底の状況から逆襲に打って出る展開はもう1,000回は観たものだが、そういった展開は10,000回だろうが100万回だろうが観たくなるイイものだ。