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かつて天才だった私たちへ

タイトルを見て何かを思い出した方は多いのではないかと思います。

そうです。Creepy Nutsさんの「かつて天才だった俺たちへ」です。

今回は彼らの言葉を借りながら‘かつて天才だった私たち’や、そんな私たちと同じ道を歩むことになりそうな、天才からの変換期を迎えているような子たち人たちへの言葉を、私なりにお届けできればと思います。

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誰もがみんな天才だった

天才の定義は、人それぞれあると思います。
辞書で調べてもその定義に当てはまらない「うわ、この人天才だ…」と思わせる天才はこの世界に山ほどいます。

ちなみに、私がこれまでに天才だなと思わされてきた人は、平手友梨奈、藤井風、Lionel Messiの3人です。
この3人の共通点は「表現者である」こと、そして「表現に枠組みを一切感じさせない」こと。
恐らくこれは、自分自身のことも‘表現者である’と捉えていることや、その表現者としての‘力のなさ’や‘魅力のなさ’を感じているからこそ、彼ら3人を「天才」と崇めているのだと思います。

皆さんが思う天才はどんな人たちでしょうか?


それに続き、天才の話になると「天才は才能を生まれつき持っていたから努力しなくてもできるんでしょ」と多くの人は言うと思います。

私は2つの理由でこれは間違っていると考えています。

1つめ。どんな天才でも努力しています。そして誰よりも努力をしています。‘努力なしの天才はいない’というのが私の考えです。

そして2つめ。今回はここを掘っていきたいと思います。


皆さんは小さい頃「自分は何でもできる」と思っていた経験はありませんか?

私は幼稚園でサッカーをして遊んでいた頃、自分のことを「誰よりも上手い」と思っていました。そこから小学校に上がったとき、「男の子にだって上級生にだって勝てる」と思っていました。また、「サッカー以外のスポーツでも、誰よりも上手くできる」と思っていました。
今振り返るととんだ自惚れやさんですが、小さい頃は自分のことを‘なんでもできる天才’だと思い込んでいたのです。

しかし大人になるにつれて色々な情報に触れたり、色々な固定概念やルールや枠組み、同調圧力の空気などを読み取れるようになってくると、自分は天才ではないと気付かされるようになります。というか、自分の全能感、天才だと思っている心は持たない方が良いと気付かされます。

私の場合、「女は男みたいなサッカーができない」という否定的な意見であったり、日本女子サッカー界の現実を知ったり、他にも数え切れないほどの情報や現実を知ることで、天才であることを‘自分の能力に根拠を持つこと’で諦めました。

つまり、私が天才だと思っている3人はそのような固定概念、枠組み、現実に気付きながらも、それを自分の才能に紐付けることをせず、ただ才能を磨いていくことに没頭することができたからこそ才能が突き抜け、天才と言われるようになるのだと思います。

ここで話しを戻し、「天才は才能を生まれつき持っていたから努力しなくてもできるんでしょ」に反対する2つめの理由を明確にしておきます。

誰しもが何かしらの才能を持っていたのです。ただその才能をなぜか諦めていたり、才能に気付く前にその道が潰されていたりしたのだと思います。だから、‘天才と呼ばれる人だけが元々才能を持っていた’は間違っていると思うのです。

では次に、天才を諦めた私がどんな道を歩んできたか、これからその道をどういう形で歩んでいきたいかをお話していきたいと思います。


天才を諦めて凡才になった

天才から凡才への変換期、(私の場合)中学生の時には、まず天才と凡才を自分の中で定義付けすることでこの道をスタートさせていたような気がします。
(ここからはサッカーベースでの話になっていきます)

天才とは、考えてサッカーをしていなくても結果を残す人、そして凡才はたくさん考えて結果を出そうとする人、と考えるようになっていました。
もちろん全く考えないでサッカーをしている人はいないので、天才も少なからず考えてはいるのですが、凡才に比べると思考の幅、深さ、量に差があるので上記の様に定義します。
(ここから天才と凡才の定義が皆さんとは違うことで読みにくいことがあるかしれませんが、ご了承を)

簡単に言うと「フィジカル能力に恵まれているか/いないか」です。
中学1年生になった途端、一緒に練習をするチームメイトには高校3年生が、相手には大学生、大人がいるという環境だったので、フィジカルを軸に自分の才能と向きあわなければいけませんでした。

でも、フィジカルに才能があるかないかなんて、ランドセル背負い終わったばっかの子なんだから身体的成長を考えたらその時点では決められるはずはない!と思うのですが、その時に‘線で物事を考えて自分の成長にゆっくり向き合うこと’ができたのであれば、今このようなnoteを書くに至っていません…

なので、フィジカルで劣っている凡才集団で天才集団を倒しに行く、頭を使ってプレーをすること、そしてそれを体現する技術で勝とうとすることをとにかく積み上げてきました。

その結果、凡才のスキルは凄く上がったと思っています。
それと同時に、自分のプレーヤーとしての立ち位置も、「天才を光らせる凡才」として強く確立されるようになりました。


しかし世間は天才を評価しがちです。
それは天才の残す結果の方がダイナミックであり、数値として残る結果が多いからだと思っています。

それと反対に、凡才の良さは数値にならないものが多いです。

例えば、

‘前からプレスをガツガツかけていきたい’という戦術があったとき、‘とにかく全速力で相手にプレスをかけにいく’と思われることが多くあります。
しかし凡才の自分はただプレスをかけにいくのではなく、背中の状況を確認しながらプレスをかけます。なので自分の次にボールが移動するだろうところに間に合っていない仲間がいると判断したときには、あえてスピードを緩めてプレスをかけます。
そうするとその0.何秒かの間に仲間が間に合っていて、そこでボールが奪えるとなるのですが、この時‘ボールを奪う’という項目で評価をされデータに残るのが遅れていた仲間であり、自分の思考は一切数値化されません。

もちろん、凡才のスキルの全てが数値化されないわけではないのですが、凡才の良さ、特徴である‘思考’の部分は数値化されにくかったり、万人に気付いてもらえるものではなかったりします。

なので、凡才には光が当たりにくいんですよね。地味なんです。
そして思考の幅や深さに気付いてもらうには、同じだけの思考を持っている人でないと中々気付いてもらえないので、具体的に褒められることはほぼないです。


ここでサッカーから少し世界を変えて話しをしてみようと思いますが、例えば、皆さんがオードリーさんやハライチさんの漫才を見て「面白い!」と思うのはどのタイミングでしょうか?
恐らく、春日さん、澤部さんのタイミングだと思います。

そしてさらにそれが膨らみ、お笑いを深くまで知ろうとしない人はきっと「若林、岩井は春日、澤部がいるから成り立っている」みたいなことを言ったりします。

もちろん、凡才が思考をして0から1を作り出そうとするのは天才の才能があってこそのものなので、おんぶに抱っこだと思っているのですが、世間の評価や、見られ方にはギャップがあります。

(ここの話での天才の定義は、出来上がった漫才を受け取る受け取り師。凡才の定義は、0から漫才を作り上げる漫才師。)


天才の陰に凡才がいるわけではない

凡才は天才に光が当たるように、漫才師は受け取り師が受け取りやすいような漫才を0から作り上げるし、凡才の自分は天才の力が思いっ切り出せるような状況を作り出したり、そういったパスを出したりします。

かつて天才だと思っていた小さい頃の自分はMessiのようなスター選手に憧れてボールを蹴っていたので、この光の当たり具合のギャップに納得がいかないというか、天才への嫉妬なのか、褒めてもらいたいという欲求なのか、何とも言えない気持ちになることがあります。

きっと、私のようにフィジカルに恵まれずとも思考をすることで自分の存在価値を示していきたい、とか、天才たちを打ち負かしてやりたい、と考えている選手は、多くはないかもしれないけど、どこかで虎視眈々と頑張っていながら私と同じような葛藤を持っているのではないかと推測します。
しかし、このnoteを読んで「結局自分たちに光は当たりにくいのか」とさらに落胆させてしまうのではないかと、この文章を書いている身でありながら心配しています。


大丈夫。この凡才の道も悪くはないんです。


「太陽に当たっている時間なのに、何も見えないという瞬間が怖い。光をいくら当てても反射するものがなかったら真っ暗。行った光が帰ってこないというのは漆黒の闇と表現されるが、闇すらない。生も死もなくなる。」

野口聡一さん

オードリーのANNでの宇宙飛行士の野口聡一さんの言葉です。

先ほど‘凡才は天才に光が当たるように’という表現をしましたが、光が当たっている人がいるということは同時に‘陰ができること’になるのではなく、その前に、‘光が届くように反射するものになっている人がいる’ということなんです。


自分に光が当たらないからと諦めるのは勿体ない。
だって、光が当たっている人はあなたがいないと光は当たらないんだから。

そしていつか、あなたに光が当たるように誰かが反射するものになってくれるときが来ます。それはチームメイトかもしれないし、スタッフかもしれないし、ファン、サポーターかもしれないし、もしかしたら自分自身かもしれない。

時が来たら、かましてやろうぜ。


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