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DMM CTO就任から1年、未来にむけて

2018年10月にDMM.com CTOに就任し、今月でちょうど1年となりました。自身の振り返りも兼ねて、当初どのように考えており、この1年どんなことに取り組んできたか、1年が経った今振り返ってどう感じるのか、そもそもなぜDMMで戦うのか、DMMの仲間たちや将来仲間になるかもしれない方向けに書いてみようと思います。

ちなみに前回まではmediumを使っていたのですが、今回からnoteになります。強い理由があるわけではないですがしばらく使って比較してみます。

就任当初のアクション

昨年10月に就任してから初期のアクションはこちらの記事を読むのが一番良いかなと思っています。

記事からの引用ですが、

ヒアリング:組織改革にあたってはまず現状把握のため、一つの課題に対して複数視点からの意見を取り入れるべくヒアリングを徹底する。
パッケージング:取り組む施策は一つのパッケージとして誰もが理解しやすい形で全体に展開する。
透明性:自分と組織、組織間などの情報流通を円滑にするため、自分から積極的な透明化に向けて取り組みの公開やその意義の解説、自分をHubとした各チームの取り組みのブロードキャストを徹底する。

この3点に対する意識は今も変わっておらず、この方針に沿った形で打ち出したのがDMM Tech Visionとなります。

DMM Tech Vision

とにかく何を伝える・議論するにしても必ずこれをベースにするくらい徹底して意識し、今の戦略の根幹となっているDMM Tech Visionですが、特に意識しているのがValueと戦略・戦術・兵站の考え方を乖離させないことになります。

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Agility・Scientific・Attractive・Motivativeという4キーワードは社内の会話でもだいぶ浸透し、Slackでも頻繁にスタンプを見かけるようになりました。Mission / Vision / Valueの浸透においては、例えば評価制度や表彰制度などの仕組み面の取り組みも大事なのですが、日常の会話でどこまで使ってもらえるかが一番大切だと思っています。(ちなみにSlackのスタンプ化するのはおすすめな施策です。)

実際の1年間

初手のヒアリングから1ヶ月後に社内向けへ上記のDMM Tech Visionの発表を実施、それを皮切りに多くの施策を社内でスタートしてきました。

Agility面の大きな施策としては、下記記事にまとまっていますが売上100億を超える電子書籍事業のインフラ環境をAWS移行したことが最も大きい施策だと思います。メンバーが主体的に動き、Well-Architectedによるレビューなどを活用しながらチャレンジしリリースにつなげています。DevとOpsを一つにすることがAgilityの改善に大きく貢献することは言うまでもありません。

上記以外にも、オンプレ環境下でのKubernetes運用基盤の検討を開始し、クラウド・オンプレ双方をAgilityやコストなどの面から最適に運用できる世界を目指しています。

また20年の歴史の中で大きな技術的負債が今も一部事業に残っていますが、こちらの改善を経営課題と認識して一歩一歩各事業連携しながら推進しています。重要なことは、モノリスを現実的な方向で分離しシステムのリスクを各事業が自身で管理できる状況を目指すことです。こちらについては今期内に大きな一歩が踏み出せるところまできました。内容については今後様々な場所でこうした技術的負債に対する現実的な取り組みとして発信していければと考えています。

Scientificの観点では、現在非常に多くの機械学習ベースな事業改善がスタートするところまで来ました。とある施策では既存方式に比べ50%の売上効率改善と言える効果も出せており、今取り組んでいるそれぞれの取り組みが花咲くころには様々な部分でユーザー体験や売上、利益に対する改善ができるのではないかと考えています。特にパーソナライズ技術の活用は体験やLTVの向上に明確に成果を残せるのではないかと思います。それに向けた機械学習関連組織の拡大も急ピッチで進んでいます。

数字を見る、という意味では社内全体も変化してきました。KPIや数値運用に関する考え方に関する社内全体への勉強会やSQL学習コンテンツの整備により、redashのダッシュボード運用が増え数値を見ながら改善する文化が強化されてきました。経営全体の管理会計もSQLベースで行えないか、またより運用しやすいData Lake、DWHはどうあるべきか、などなど改善も進んでいます。

Attractiveという面では、社内外に魅力的な会社たれ、ということでDMM Tech Empowermentという支援パッケージを発表しました。

学びを深める、という点を重視しAWSやGCPの個人開発環境の提供やキーボード等の機器購入制度、国内外のカンファレンス参加支援や、社員が運営や参加する開発者コミュニティに対しての支援予算を整備し会場提供や懇親会支援などを積極的に実施しています。

Motivativeに関しての一番嬉しい成果としては、リファラル採用比率50%を目指したリファラル50を7月で一時的ではありつつも達成できたという点です。リファラル採用の比率というのは自分の会社に魅力を感じている、ということが重要になりますが、評価制度改善、マネジメント研修や勉強会の実施、リファラル採用支援の会食支援制度などが改善に貢献したのではないかと考えています。

事業関連系や自身の取り組みの意義を知る、ということで隔週程度での事業部レポートも始まりました。一部で松本フォーマットと呼ばれる週次レポートのフォーマットがあり、レポートラインの異なる事業部でもそのフォーマットを使って自発的に投稿しSlackのチャンネルに共有する文化が広まってきました。フォーマットの中身には400~1000字程度のサマリを書く欄があり、それを通じて冒頭部分を読むだけでもひとまず重要情報がわかる、というような工夫をしており、そのサマリと一緒にSlackのチャンネルに流れてくるため関わりの浅いチームであってもとりあえず軽く目を通す、ということが可能で透明性の向上に役立っています。

また今年はフレックスタイム制に移行し、働きやすさという意味での改善も進んでいます。下記のような形でPeople Analytics的な取り組みも人事主導で動き出しておりこうしたレポートが上がってきているのも面白い点です。

また新卒研修カリキュラムを今年大幅刷新した結果が大きな成果を上げていると感じています。非常にヘビーな研修なのですが3ヶ月半でインフラからデザイン、データサイエンスに至るまですべての領域のカリキュラムを提供しました。様々な領域に進んでいった19年度新卒のメンバーたちですが、それぞれの場での活躍を耳にすることが日々増えており最高です。

Valueに沿った4軸の戦略がそれぞれ会社内での成長の場作りにもつながっており、改善速度やその確度、議論の仕方など一つ一つで変化を生み出しているところまで来ました。メンバーひとりひとりが自分の意思で判断し、それにより小さな改善の積み上げとなっているのがAgility高い組織であり、その基準が科学されている、数字・事実で会話されているScientificな姿勢をもつ、という点をここから1年更に強めていきます。

反省点

反省点は多々あります。まだまだ事業貢献という意味では個人的に不足です。また、一番の反省点は自分自身の兼務が増えた結果、特に新しく組み立てた組織に対してマネジメントの責任を果たせていない点です。この点はメンバーにも非常に迷惑をかけてしまいました。やはり良い仲間を集め続けるということが経営者としての仕事であり、その不足が招いている失敗だと認識しています。大きな組織やプロジェクトを動かす上で、誰が実行責任者なのか、今誰がボールを持っているのか、といった認識を正しくもつことは心理的安全性高く働くという意味でもより成果を上げるという意味でも重要ですが、このポジションをCTOでもある私が引き受けてしまうと、各チームに対して意思決定のサポートのための時間が減ってしまい、メンバーがどう意思決定すればいいのか迷ってしまう場面がありました。

今後については、社内からの抜擢や採用両面から主にマネジメントを担うリーダーを据え、私自身は意思決定のサポートに回るという形にすべきだなと(当たり前ですが)考えています。エネルギーを持った仲間たちに事業やプロジェクトを任せていき、より多くの事業が動く、器としてのDMMを目指していきます。

なぜDMMを変えていくのか

そもそもなぜDMMをより成長させようとしているのか、その先になにを見ているのか、ですが、少し大きな話として日本の国としての課題の解決があります。国の行く末をみる一番角度高い指標は人口変化と言われますが、明らかに今後の人口減少と高齢化は世界に先駆けた日本の課題であり、これに対する解決策の一つがソフトウェア・エンジニアリングだと信じています。単にAI的な自動化だけでなく、ソフトウェアドリブンな組織設計やシステム設計による事業全体の科学が必要であり、その先に人口減少時代に必要なスケーラビリティが存在するからです。

このスタンスに立ったとき、スタートアップとして戦うべき課題としてのみ捉えるのではなく、エンタープライズな、大きな事業体の変革を内側からサポートする方向性もあり得るのではないか、自分にとってはそちらの方が素早く大きなインパクトを残せる正しい意思決定なのではと感じました。大きな組織の中でその経営資源をテクノロジーで活かすことのインパクトは相当なものになるはずです。DMMはそういう意味で2200億の売上、40を超える事業、創業20年というそれなりの歴史がありつつ、テックカンパニーへ変わりたいという意思をもった、ソフトウェアドリブンな経営に向けた挑戦としては条件が整った組織でした。ここでのテックカンパニー化、ソフトウェア・エンジニアリングの活用がひいては多くの日本の大企業にとってのソフトウェア化(流行りの言葉ではDXでしょうか)を促すことの一助となればと思っています。

未来に向けて

現状、自分の手元でも様々な新規事業の取り組みをスタートしました。ここまでで強くなったDMMの仲間たちに様々な挑戦をしてもらう、という意味でも新規事業や新規プロジェクトの創出は重要です。また自分のやりたい事業も非常に多いので、同時並行でひたすら立ち上げを目指しています。DMMは新しい種を常に探し続けることでこの20年生き残ってきました。0→1が得意な方にも手応えを感じていただける環境かと思います。

主に見ている市場とその思いとしては、

VR / AR... これからのディスプレイが如何に変化するのか、Oculus Rift DK2から追い続けている夢を実現したい。ここは張り続ける。
SaaS... 4000人というグループの最適化をソフトウェアベースでやる、それを社外にも展開したい。xOpsや機械学習活用など。
Fintech... Blockchainの研究過程で見つけた市場課題に向き合いたい。
EduTech ... DMM Webcampなどプログラマとなる機会を増やし、日本の競争力につなげていきたい。

とにかくたくさんの事業を今提案しながら、実現を模索しています。長く残る会社には良いメンバーとそこで形成される文化が重要です。そして人が成長するためには沢山の挑戦の場が必要です。失敗を恐れず本気の失敗を肯定する会社として10年で300事業立ち上がる組織にしていくことが今の目標となります。

最後に

振り返りということで長めな内容となってしまいましたが、Agility・Scientific・Attractive・Motivativeな組織に向けて確実に前に進めた1年であったと思います。どの一つをとっても施策が多く動き出し、実際に改善されてきていますが、特にここから1年はAgilityとScientificなチーム力の向上に向けて動きを強化していき、事業面での貢献を目指したいところです。2200億の売上を誇るDMMグループ全体に技術でレバレッジを掛ける事ができれば相当なインパクトを残せる仕事になると確信しています。

また、これから多くの新規事業が立ち上がります。アプリ、教育、農業など多くの事業領域で新規事業が検討されています。それを作りたい人、新規事業を率いていきたいという方が必要です。ここまでDMMで積み上げてきたノウハウや事業体力、キャッシュフローを生かして大きな事業を一緒に作りましょう。様々なポジションで人を募集しています、ぜひご検討ください。


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