【Lost Liner Notes】 V.S.O.P. / ライヴ・イン・USA (1977年)
V.S.O.P. / The Quintet
これは1989年にリリースされたCDのために執筆したライナーノーツを加筆・訂正したものです。
V.S.O.P.は、言わずと知れたハービー・ハンコック(p)、ウェイン・ショーター(ts、ss)、フレディ・ハバード(tp、flh)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)の5人によるグループだ。“新主流派の同窓会”ともいうべきこのクインテットが結成されたのは1976年6月29日、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのステージでだった。そのいきさつやその後の活躍などについてはすでに語り尽くされているのでここでは省くが、とにかく衝撃的なグループだった。例えばウィントン・マルサリスあたりの世代のミュージシャンたちはV.S.O.P.にリアル・タイムで影響を受け、その後マイルス・デイヴィス・グループや彼等のブルーノート盤などに遡っていった可能性が強い。ウィントン・マルサリスはV.S.O.P.デビュー時まだ14歳だったのである。ウィントン少年にとってV.S.O.P.はそれはそれは衝撃的だったに違いない。そしてその音楽は彼らの世代に継承されていくことになる。
このアルバムはそんなV.S.O.P.の1977年のアメリカ・ツアーでのライヴ・アルバムだ。『ライヴ・アンダー・ザ・スカイ』とともに、彼等のベスト作といわれている作品である。V.S.O.P.の素晴らしさを知るためにも、全8曲をじっくりと聴いていくことにしよう。
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