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【Lost Liner Notes】 チック・コリア / フレンズ (1978年)

Chick Corea / Friends

これは1991年にリリースされたCDのために執筆したライナーノーツを加筆・訂正したものです。

この『フレンズ』は、数あるチック・コリアのアルバムの中でも、最も人気のあるものの1枚だ。このアルバムのようなリラックスした、そしてハートウォーミングなチックの作品というのも、実はけっこう珍しい。そういう意味でも、とてもレアな作品だといえるかも知れない。
1978年1月、チックは気心の知れた友人=Friendsたちとスタジオに入った。その友人たちとはジョー・ファレル、エディ・ゴメス、スティーヴ・ガッド。この4人が初めて顔を合わせたのはチックの1975年のソロ・アルバム『妖精』の「妖精の夢」という曲のセッションだった。ジョー・ファレルはご存じの通りリターン・トゥ・フォーエヴァーのオリジナル・メンバーであり、スティーヴ・ガッドは、実はレニー・ホワイトが加入する直前に短期間だがリターン・トゥ・フォーエヴァーに在籍していたことがある。エディ・ゴメスは1960年代前半にモンテゴ・ジョーのグループなどで共演していたという仲だ。その後“ステップス”や“ガッド・ギャング”などで名コンビぶりを発揮するゴメスとガッドの2人だが、出会ったのはこのセッションの時が初めてだったという。そしてこの4人は1978年に『マッド・ハッター』の「ハンプティ・ダンプティ」のセッションで再会する。そしておそらくそのレコーディングと同じ時にレコーディングされたのがこの『フレンズ』であり、そのタイトル通りとてもフレンドリーでリラックスした演奏が人気を呼んだ。さらに1981年にはチック、ゴメス、ガッドのトリオにマイケル・ブレッカーを加えたクァルテットで名作『スリー・クァルテッツ』を制作することになる。
実はチックがこういったフランクなセッションのアルバムを作るということはとても珍しいことだった。よほどこの3人とのセッションが気に入ったのだろう。誰よりもチック自身がこのセッションを楽しんでいるということがサウンドから伝わってくる。そこがこのアルバムの人気の秘密なのかもしれない。その後のアコースティック系のバンドとはまたひと味違った、自由気ままにジャズしているチックの姿がここにある。
このアルバムはチックのオリジナルが8曲収められている。いずれもチックらしい、愛ら:しいメロディを持った親しみやすい曲ばかりだ。

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