【有機半導体】#有機半導体分子の固体構造
2. 有機半導体分子の固体構造
有機半導体分子の並び方や複数分子の混ざり方はどのような要因によって決まるのか?
構造の違いはどのような機能の違いを生むのか?
2.1 有機半導体とは?
・主骨格にπ共役をもつ有機化合物の固体
・電気を(ある程度以上)流す物質
有機半導体の発見
アントラセンの光伝導特性 A. Pochettino (1906)
フタロシアニンの伝導度の温度依存性 D. D. Eley (1948), A. T. Vertanyan (1948)
真性半導体だとすると見積もられるエネルギーギャップは
Eg ~ 2.4 eV (現在知られている値はEg ~ 2 eV)
ペリレンへのドーピングによる伝導度上昇 H. Akamatsu, H. Inokuchi, Y. Matsunaga (1954)
その後の大きな3つの流
・導電性高分子(共有結合)
「2sp2+2pz」分子鎖 「2sp3」分子鎖 「2sp3」結晶 (ポリアセチレン) (ポリエチレン) (ダイヤモンド)
・電荷移動錯体(イオン結合+分子間力)
(ドナー) アクセプター ドナー アクセプター
有機導体(分子間化合物)
・有機半導体(分子間力)
2.2 有機半導体の特質
・多様な形態を示す「分子」が集まってできる固体
・弱い分子間力(van der Waals 結合)で凝集
有機半導体 無機半導体
無機半導体は
原子同士が共有結合で凝集した固体
https://www.meta-synthesis.com/webbook/38_laing/tetrahedra.html(accessed on 2015/1/20)
・離散的な分子軌道 ⇒ 価電子は分子内に局在
・電気伝導は電荷が分子間を飛び移ることで生じる
2.3 高移動度有機半導体
・「一般論」の枠に収まらない有機半導体もある
分子が規則的に整列した結晶では
電荷の非局在化・電子バンドの形成が起こり得る
有機半導体の極性(p型/n型)
・有機半導体は実質的には単極性(unipolar)半導体
(材料によってp型/n型が決まっている)
⇒pn接合は異なる材料のヘテロ接合
・無機半導体は両極性(bipolar)材料である
(ドーパント種によってp型にもn型にもなる)
⇒pn接合は同じ材料でドーパントを変えたホモ接合
・p型有機半導体(=ドナー)
イオン化エネルギー(IP)が小さい(一般には5 eV以下)
・n型有機半導体(=アクセプター)
電子親和力(EA)が大きい(一般には4 eV以上)
p型(ドナー)材料 n型(アクセプター)材料
2.4 有機太陽電池の特徴
・太陽電池の発電時に生じる素過程
①光吸収(電子励起状態=励起子)
②励起状態の移動(励起子の拡散)
③励起子の解離(電子-正孔対の発生)
④荷電キャリアのドリフト
⑤電極からの荷電キャリアの取り出し
・阻害要因 1.励起子の失活(②の過程)
2.電荷の再結合(③,④の過程)
3.内部・接触抵抗(④,⑤の過程)
①光吸収過程
有機半導体の吸光係数はSiの10~100倍程度
Lambert-Beerの法則
同じ量の光を吸収するのに必要な半導体層の厚みが
Siの1/10~1/100で済む( ⇒ 素子を薄くできる)
②励起子拡散課程・➂励起子解離過程
Siの励起子 有機半導体の励起子
電子-正孔対の束縛エネルギーは 電子-正孔対の束縛エネルギーは
0.001 eVのオーダー 0.1 eVのオーダー
↓ ↓
熱エネルギーで解離 何らかのエネルギー利得が必要
(ドナー-アクセプター間の電荷移動反応)
Planar heterojunction (PHJ)
Bulk heterojunction (BHJ)
pn接合の構造を入り組ませると
励起子が失活する前にpn接合まで到達できる確率が向上する
④荷電キャリアのドリフト過程
内部抵抗の低減 ⇐ 高い結晶性が望ましい
再結合の低減 ⇐ パーコレーション
⑤電極からの荷電キャリアの取り出し過程
接触抵抗の低減 ⇐ エネルギー準位接続
電荷移動効率 ⇐ 平行配向が有利
【次回】有機半導体の構造解析手法