自己紹介
「今日からお世話になります。○○です。よろしくお願いします。」
2018年3月25日、日曜日、午前9時。
新宿のとあるカフェで僕はこう自己紹介した。
長かった浪人生活が終わり、初めてのアルバイト先で先輩社員の方を前に緊張しながらも前日に練習したフレーズを口にした。
タウンワークで適当にスクロールし、適当に応募し、適当に面接をして、その場で採用を頂いたカフェだった。
「まあ、めんどくさかったらやめればいいや。どうせバイトだし。」
こう考えていた僕の考えは、良い意味で遥かに裏切られた。
楽しい。とにかく楽しかった。辞めたいなんてまったく考えないくらいに、そのバイト先は楽しかった。
とにかくみんな仲が良かった。
年の近い学生バイトの人が多く、サークルやゼミ、就活の話や、時には男女間のそれはディープで闇の深い恋愛話まで、勤務中でもよく話していた。
23時にお店を閉めてからその日のクローズのメンバーで行った歌舞伎町のつるとんたんのうどんや天下一品のラーメンの味は今でもよく覚えている。
2020年4月。
第一回緊急事態宣言。
これでもかというくらいシフトを削られた。
飲食店はもろに打撃を受け、場所も新宿であることもあってか、僕のシフトはまるまる削られた。
「今日からお世話になります。○○です。よろしくお願いします。」
人生二回目のアルバイトの自己紹介。
仕方ないから僕はダブルワークを始めていた。
地元のコンビニだった。
前回と同じく、タウンワークで適当にスクロールし、適当に応募し、適当に面接をして、流れで採用が決まった。
結局、コンビニは2カ月で辞めた。
元々腰掛け程度のつもりだった。
大好きなカフェのバイトを辞めたくなかったし、緊急事態宣言が明けるまでのつなぎだった。
読み通り、緊急事態宣言が解除されると僕はカフェの方に徐々に復帰できるようになった。
仲の良い同期もまだ何人かいたし、「結局ここが一番だね~」なんて話もした。
2021年2月
第二回緊急事態宣言。
僕の働いてたカフェはチェーン店ということもあり、都内に複数お店を出店していた。
しかしコロナの影響を受け、この一か月で約10店舗のお店が閉店した。
同じ新宿エリアにもそのうちの1店舗があり、そこで店長をしていた人が僕の勤務店舗に店長として異動してきた。
そこで働いていたアルバイトのスタッフを10人くらい連れて。
アホなのか???
ただでさえコロナの影響で新たなスタッフを雇う余裕なんてないのに、10人もバイトを連れてきたらシフトに入れないじゃないか。
ここでは語らないが、色々あってこの店長とは反りがあわなかった。
僕はこの店長のことが嫌いだし、店長も僕のことがきっと嫌いであろう。
コロナ渦とはいえ、僕だけそれはエグいシフトの削られ方をしてるからわかる。
この前久しぶりにお店に行ったら、知らない人ばかりが働いていた。
もう、僕の知っている職場ではなかった。
不思議と、悲しい気持ちはなかった。
2021年3月。
「今日からお世話になります○○と申します。よろしくお願いします。」
相変わらず前日に練習したこのフレーズは今回も問題なく言うことができた。
ただ前回と違う点は、1週間くらいかけてタウンワークだけでなくバイトルやインディードを見て求人に応募したこと。
そして、3年続けたカフェのバイトを辞めたこと。
これから先、僕は何回バイト先で自己紹介をするのだろう。
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