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【連載小説】風まかせ 3

この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

絶望

2000年1月、私は1人暮らしをしているアパートの部屋でうなだれていた。

2年生で寮則違反が重なり寮を追い出された。
実家から高専までは電車やバスの乗換えが多く、実家から通学することは現実的に不可能だったため3年生からはアパートで1人暮らしをしていた。

「やってしもうた…」

3年生になってからの前期中間、期末、後期中間の過去3回の成績表を机に広げていた。
最後の学年末テストで各教科で何点取る必要があるのか計算していたのだ。

「機構学で120点取らんばやん。無理やん。留年やん。」

両親の顔が思い浮かぶ。

なぜこんなことになったのか。
3年生のこれまでの1年を振り返ってみる。

高専3年生は楽しすぎたのだ。
寮から出て1人暮らしを始め、原付免許を取得し、バイトにはスクーターで向かう。
高専を1、2年生でやめた友達や同じように寮を出された高専同級生たちとバイト終わりに明け方まで遊ぶ。

同じ高専内に彼女もできた。
出席日数と点数が基準を満たしさえすれば進学できるので、学校へも必要最低限しか行かない。

この時点で、高専でははまってはならない負のスパイラルに完全にはまっている。

「勉強しとらんしね。しゃーなかな」
「お父さんとお母さんには早めに言わんば。怒られるなら、さっさと怒られたかし。」

次の日、学校終わりに彼女を少し離れたバス停に送る途中で相談してみた。
バイト前のほんの少しの時間、とても貴重な時間だ。

「最後の結果が出るまでは黙っとったら?今言ったらお父さんとお母さんずっと心配なままじゃない?」

期待していた答えが返ってこなかったせいか、私はテンション低めで言った。

「そうね、そうかもしれんね。」

彼女のアドバイスに共感ができなかった。
わかっていることを黙っていると言うのが、親に隠し事をしているような後ろめたさを感じたのだ。

少し間を置いて私は言った。

「やっぱり親に言うわ」

「はい、意味なーし」

即座に彼女のツッコミが入る。
繋いだ手にはギュッと力が入る。

「ごめんて」

なんだかんだ、彼女のおかげで親に状況を伝える決心ができた。

週末、実家に帰ることを決意した。

第4話へ


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